幸せの人生相談。。。悩み/問題に真剣に取り組む際の基本(2): 6つのキーワード(4〜6/6) |
カテゴリー: 幸せの人生相談:より良く生きるための意思決定 2011 年 4 月 26 日 コメント(0) |
前回の「悩み/問題に真剣に取り組む際の基本(1)」では、6つのキーワードのうち、1〜3までをご紹介しましたが、今回は後半の4〜6を説明します。 キーワード4:不確実要因の捉え方。。。「未来は読めない」とあきらめたり/逆に「必ずこうなる」とやみくもに信じ込む のではなく 「インテリジェントえいやー」で切り込む 悩みや問題に真剣に取り組み、前向きに自分の未来を切り開くための意思決定をしようとする際に、不確実性についての的確な捉え方が必要になります。大前提として、不確実要素の全くない中での意思決定は殆どないわけですし、深い悩みをもたらす問題であればある程、多くの不確実性がからむことが多いのです。 この不確実要因に対して、ともすると勇猛(蛮勇?)果敢に「必ずこうなる!」とやみくもに信じ込んだり、逆に不確実性の前で思考停止に陥り「未来は読めない」とあきらめてしまったり、という両極端に走りがちです。しかし未来は確実には読めないのだから常に複数のシナリオで捉え、かつそうした読みを、完全には分からないものの今現在入手出来るベストな情報に基づいて出来うる限りの知的な読みを確率の形で行うというアプローチは可能なのです。 こうした未来の不確実性に関する確率の読みを「主観的確率」と呼ぶのですが、私はその実態を「インテリジェントえいやー」と読んでいます。今現在ベストな知的(Intelligent)な読みであり、「うーん、じっくり吟味して、まあ、だいたいこんなもんじゃないかな〜」というニュアンスです。 意思決定理論での私の師であるスタンフォード大学のロナルド.ハワード教授も、不確実性の読みについては”Approximately Right rather than Exactly Wrong”(⇒正確な一点読みを目指して結局キッチリ間違うよりも、大体正しければ良い!)で良いんだ、と言っています。 不確実性の読みについては、具体的なシナリオをいくつか、例えば「楽観的シナリオ vs 悲観的シナリオ」の2シナリオとか、「楽観的シナリオ vs 中間シナリオ vs 悲観的シナリオ」の3シナリオとかを、できるだけ明確かつ生き生きと想定し、それぞれのシナリオについて、この「インテリジェントえいやー」を使って主観的確率という形で表現して行く訳です。 以上の説明だけだと、まだ今一つイメージがわかないかもしれませんが、次回以降のブログ記事で事例を紹介して行きますので、その中でご理解頂けると思います。 キーワード5:価値判断尺度。。。「お金になるか/得になるか」のみで判断したり/逆にそれらを全く無視して綺麗ごとのみに走る のではなく 個別の複数の価値判断尺度を明確に認識/共有化した上での、本音の「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」で判断する 最近の経済学の研究では、「人間は、伝統的経済学での想定とは違って、金額的リターンが最大になるような選択肢を必ずしも選択しない」ということが一つのトピックになっているようです。しかし普通の個人の意思決定を振り返ると、「そんなことは今更言われなくても当然」ですし、企業の意思決定ですら、お金の要素だけで意思決定しないことは決して珍しいことではありません。どの企業の企業理念や企業ビジョンを見ても、「収益最大化が我が社の唯一最大の社会的使命です」などというのはお目にかかったことがありませんよね。 本音と建前という言葉がありますが、個人でも企業でも政府/自治体でもNPOでも、必ず、「お金になるかどうか」とか「自分の得になるかどうか」ということ以外の要素も含めた、複数の価値判断尺度に基づいて意思決定しているし、それで良いのだと思います。またそのことを積極的に肯定的に捉えるのが良いのだと思います。そこで重要なことは、本音も建前も含めて、全ての重要と思われる価値判断尺度をリストアップし明確に認識し、組織としての意思決定ならばそのリストを関係者全員で共有することです。 そして、まずは全ての重要な価値判断尺度を最適化するような選択肢を作り出すように検討を行い、めでたくそうした選択肢がつくれれば「めでたし/めでたし」です。残念ながらそれができなければ、どうするか?。。。皆さんがいつもやっている、「様々な価値判断尺度に照らした総合的な判断」ということになります。 このことを私は、「トータル嬉しさ総額」と呼んでいます。正確に言うと、その選択肢の実行に必要な経営資源(人/もの/金/時間といった)を差し引いた「差し引き嬉しさ総額」で、Net Pleasure Value と名付けています。企業の投資案件を比較する際に用いられる「差し引き儲かり総額」としての「キャッシュフローの正味現在価値(Net Present Value:NPV)」をもじったもので、第2のNPVなどと呼んでいます。。。「第2の」とは言いましたが、私としては、このNet Pleasure Valueこそが、より本質的なものだと思っています。 この概念をどう使うかですが、具体的には、まず各選択肢をそれぞれの個別の価値判断尺度にてらして測定した上で、うーんと唸って「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」がどれくらいかを考えます。次にその「値」ないし「大きさの順番」を、各選択肢間で比較し、もっともNet Pleasure Valueの大きい選択肢を選ぶ、という手順です。 この時重要なのは、本音も建前も含めた真の「正直ベースの心の声」に耳を傾けることです。この「正直ベースの心の声」の反映としての「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」に基づくからこそ、納得感と幸せ感の高い意思決定につながるのです。 ちなみに、ここでいう「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」は当然のことながら主観的なものです。また絶対的な値を考えている訳ではなく、あくまでも、各選択肢間で相対的なものとして捉えています。「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」の絶対値を考えだすと、かなり哲学的な議論になってしまって、実践的な問題解決を目指すディシジョンマネジメントの立場から離れてしまいますし、また現実的にも各選択肢間での相対的な「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」さえわかれば意思決定はできますから。 キーワード6:意思決定において過去の投資をどう位置づけるか。。。「後悔とSunk Cost」に基づく後ろ向き指向/思考 ではなく 「反省とGained Asset」に基づく未来指向へ このキーワードは、一言で言えば、「済んでしまったことに引きずられることなく、未来に向けてベストな経営資源の使い方となる選択肢を選びましょう!」ということです。基本は、過去は変えようがないので、それに引きずられることなく、今の我々にできる資源配分の中で、これからの「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」を最大にする選択肢を選ぶしかないし、それで良いんだ、ということです。 。。。と言われると、何を当然なことを!、と思われるかもしれませんが、実は人間は過去の投資や過去にやったことに引きずられやすい、という性質が強いので、わざわざ強調しているのです。たとえば、企業では「もうこのプロジェクトは既に○○年も費やし、○○億円もの資金を投入して来たんだ。当初想定しなかった状況変化があるとは言え、今さら中止などできるか!」といった言葉を良く聞きますし、個人でも「自分はこの仕事をもう○○年もやってるんだ。今さら別の仕事に移るなんて!。。。」とか「付き合いだした当初の『ラブラブ状態』からはほど遠いけど、この人とはもう○○年も付き合ってるんだから今さら別れるなんて!。。。」といった発想は多いのではないでしょうか? しかし後悔しても過去は変えられないのですから、過去については反省をしつつ反省からの学びを次の意思決定の機会に生かすにしても、いま我々に出来る、これからの「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」の最大化を目指すしかないし、それで良いのです。 この話—過去の投資(Sunk Cost: 沈んでしまったコスト=埋没費用)にとらわれないように!—をスタンフォード大学のハワード教授の授業で始めて聞いた時、目からウロコというか、「ああ、なるほど!」と思ったものでした。しかしちょっと落ち着くと、「それは確かにそうなんだけど、だけど過去の投資はもったいないよな〜」という若干の不納得感というか、「腹落ちしない感」がして、いろいろ思案した末に私の頭の中に浮かんで来たのが、”Gained Asset”(獲得資産)という発想です。 つまり、過去の投資であるSunk Costに引きずられた意思決定はしてはならないが、そのSunk Costの結果として得られたもの(設備や技術や個人の中に蓄積された経験や知識etc)が存在するのは事実であり、意思決定をする際には各選択肢の「トータル嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」を考えるときに、そうした”Gained Asset”(獲得資産)の影響を考慮することは可能だし、また考慮すべきだ、という考えです。こう考えることで、「もったいない」感を払拭しつつ、Sunk Costの幻影にも引きずられずに、未来志向の意思決定が可能になる、ということです。 以上、6つのキーワードを説明しましたが、説明を聞いてしまえば、賢明な読者の方々には殆ど「あたりまえ」のことばかりだと思います。しかしこうした当たり前のことが分かっていなかったり見過ごしていたりすることが多いので、一応念のため、ここからの「意思決定思考の基本アプローチ」とその後の事例を聞いて頂く際の前提確認、という意味でお話しして来ましたので、ご了承ください。 次回は「意思決定思考の基本アプローチ」について簡単に説明した後、いよいよ事例に入って行きます。 |
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