最近の、同じ日の新聞で見かけた以下の二つの記事から発想したことです。 ①1面のコラム記事にあった、韓国全国経済人連合会前会長の言葉:「・・・日本人・・・韓国の『パルリ(速く)精神』に比べて時間がかかり過ぎる・・・ライバル企業より先に意思決定しなければチャンスを逃す。韓国のトップダウン経営は時に誤るが、オーナーが即決できる。日本の根回し型決定は時間がかかり過ぎるため、トップが決断できる仕組みに変えるべきだ」 ②「やさしい経済学」というコラムにあった文章:「・・・経済学者のケネス・アロー米スタンフォード大名誉教授は、複数の人々による集合的な意思決定(社会選択)が典型的な民主的手続きの下では一定の合意へと到達し得ないことを数理的に示した。『アローの不可能性定理』・・・」 皆さん、だいたい私が言いたいことは御察しかと思いますが、私は衆知を集めた意思決定の方が、1.その時点での質も高まるし&2. 実行への関係者全員のコミットメントが高まる分、当初想定外のことが起きた時の臨機応変の組織対応力も高まるので、トップによる独裁的意思決定よりもすぐれていると考えています。 そして、上記の①や②は、優れた衆知の意思決定を行うための思考体系(⇒私の場合、それがディシジョンマネジメントだと思っているのですが)を関係者全体が共有化できていない場合の、あえていうと「稚拙な議論・観察結果」だと思います。。。これはもう、ある種、信念というか好みの部分もあるので、私としては、こうした考え方に共鳴してくださる方々のお手伝いをしたいし、できればそうした方々を増やしていければもっと嬉しいと思っています。 ただ、そうは言いながらも、①の前会長さんの言葉を聞きつつ、実際に見聞き&接する日本企業の意思決定場面を思い浮かべると、時には「独裁的要素」を入れ込むことも必要だと感じます。 どういうことかというと、例えば、二つの案のどちらをとってもそれほど違いがない—嬉しさ総額のNet Pleasure Value でも、キャッシュフローのNet Present Valueでも—場合にも、延々と議論をしていて結論が出ず、という場合は、もう四の五の言わずに誰かが決めてしまった方がよいのです。。。衆議の上での独裁、というか「衆知の決断」です。 私の知るある経営者の方は、どういう選択肢・方向性にするかの議論を始める前に、まず「決めるデッドラインと決め方」を決めるそうです。決め方としては二つあって、一つは「自分」、もうひとつは「多数決」です。そして一度「決め方」を宣言した以上は、たとえ多数決によって、自分がベストだと信じた案が選ばれなくても、その多数決の結論に従うのだそうです。。。「衆知の決断」をするための一つのお奨めの方法だと思います。 時には「戦略的延期」が正解ということもありえますが、多くが「思考停止の先延ばし」になりがちですので、ディシジョンマネジメントを活用した上での「衆知の決断」を実行していただきたいと願っています。 P.S. 蛇足ですが、最近の政党間や派閥間の議論を聞いていると、どの選択肢を選んでも国民全体のNet Pleasure Value(NPV)に大差がなさそうな政策課題についての議論を、えんえんと(多分、党利党略私利私欲的には大いに異なるがゆえに)繰り返し&対立している一方、どの選択肢を採るかによってNPVに大きな違いが生じそうな政策課題については放ったらかし、のように見えます。 そのあたりをきちっと戦略アジェンダ(課題のリスト)として整理し、それぞれの課題ごとの複数の選択肢をわかりやすく提示し、かつ、自らの価値判断尺度や価値観の明示とともに、なぜ自分たちがこの選択肢を国民に薦めたいのか、というあたりをしっかりと示してくれたら、そうした政党に一票を投じたい、と思うのは私だけでしょうか?
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