今回の「若者自立塾」を題材として【4】 では、検討ステップ②について考えていきます。 ②フレーミングと選択肢の設定: 前回お話しした①の「事業構想と論点洗い出し」におけるディシジョンボード・ミーティング(DBM1)で出てきた論点と、そこでのディシジョンボードからの指示を受けて、プロジェクトチームは、②の「フレーミングと選択肢の設定」のたたき台作りに取り組みます。その際、DBM1を視聴した国民からメール等で寄せられた追加の論点も視野に入れて作業を行うことになると思います。 このたたき台作り作業の最初のターゲットは、フォース・フィールド・ダイアグラム(Force-field Diagram)です。これは、DBM1で出てきた「この事業構想を積極的に推進すべき理由・論点(Forces for)」を紙の左側に整理し、一方、右側には 「この事業構想に対する反対理由・懸念の論点( Forces against)」を記したものです。 ちなみに、紙の左側のForces forの論点が左側から右側に向かって攻め、右側のForces againstの論点が左側に向かって攻め、両者が紙の中央で左と右から押し合いせめぎあう格好になることから、「力が戦う場」といった意味で、フォース・フィールド・ダイアグラムというニックネームがつけられています。 できあがったフォース・フィールド・ダイアグラムを眺めることによって、今回これから検討すべき課題に関する重要論点の全貌が確認できることになります。。。しかしもちろん、これだけで結論が出せるはずはありません。その意味では、現在の事業仕分けは、フォース・フィールド・ダイアグラムを作りかけている途中で、まだ抜けも多い中で、いきなり結論を出そうという乱暴なやり方になっていることが実感していただけるかと思います。 フォース・フィールド・ダイアグラムはまだ論点整理をしただけですので、重要なのはここから先の作業です。具体的には、ここに出てきた多くの論点から、意思決定(ないし、そこで取りうる戦略オプションや選択肢)、不確実要因、価値判断尺度、という三つの意味合いを抽出します。それをベースに、〈A. 意思決定項目を整理したディシジョンヒエラルキー(DH)〉、〈B. DHの中の戦略レベルの意思決定項目を構成要素として作成するストラテジー・テーブルとそれに基づく複数の選択肢〉、〈C. 価値判断尺度のリスト〉を作って行きます。。。。なお、フォース・フィールド・ダイアグラムから抽出した不確実要因については、B.で設定した複数の選択肢を、C.で設定した複数の価値判断尺度に照らして測定・評価するときに考慮・活用することになります。 A.、B.、C.のイメージは、この後の回のブログでトライアル版をお見せするつもりの、「若者自立塾」についてのたたき台を見ていただくのが手っ取り早いのですが、その前に、まずは基本的な考え方を簡単にここで説明しておきます。 〈A. 意思決定項目を整理したディシジョンヒエラルキー(DH)〉: これは、意思決定の階層図、という意味のツールで、意思決定項目を(上下方向の)3つの段に分けて記して行きます。まず上段には、「ポリシーレベルの意思決定項目」、すなわち今回の検討における前提条件・与件確認事項をリストアップします。一方下段には「戦術的意思決定項目」、すなわち今回の検討ではまだそこまで細かいレベルの検討はしないでもいいよね、という項目を確認するために記しておきます。 そして真ん中の中段には、今回の検討のフォーカスを置くべき「戦略レベルの意思決定項目」をリストアップします。すなわち、これらの意思決定項目におけるオプションの選び方次第で、当該事業の価値(⇒一言でいうと、国民にとってのNet Pleasure Value(正味嬉しさ総額))が大きく左右されると思われる意思決定項目のリスト、ということです。 〈B. ストラテジー・テーブルとそれに基づく複数の選択肢(戦略テーマ)〉: A.のDHの真ん中の段、すなわち、複数の戦略レベルの意思決定項目を横に並べ、各意思決定項目の下にそれぞれの意思決定項目における複数のオプションを記して行ったものが、「戦略を叙述する表」という意味でストラテジー・テーブル(ST)と呼んでいるツールです。 そしてSTの各意思決定項目から一つづつオプションを選んで横につないでいったものを「戦略テーマ」と呼び、STを使って、複数の戦略テーマを設定するわけです。 〈C. 価値判断尺度のリスト〉: 〈国民にとってのNet Pleasure Value(正味嬉しさ総額)〉に単位を付けることができ、かつ直接測定・評価できるとよいのですが、そうはいかないので、Net Pleasure Valueを構成する複数の価値判断尺度を明確化し、リストアップするわけです。 企業での場合に比べて、お金に帰着できない価値判断尺度がずっと多く出てくるわけですが、かといって、国民の税金というお金を使う以上、お金に関する価値判断尺度も決して無視はできないはずです。。。具体的な設定は、かなり難しいと思いますが、数回後のこの連載記事の中でトライしてみたいと思います。 以上のフォース・フィールド・ダイアグラム、ディシジョンヒエラルキー、ストラテジーテーブルとそれにもとづく複数の戦略テーマ、価値判断尺度のリストなどをたたき台としてDBM2に提示し、それをベースに建設的なディスカッションを行うわけです。この時、DBM1と同様、事前にこれらのたたき台をディシジョンボードに送り、また国民に公開して、そこからのフィードバックを生かして追加準備を行った上で、プロジェクトチームはDBM2に臨むわけです。 ここまでたたき台のレベルが上がっていれば、DBM2の議論のレベルは当然高く、生産性と時間効率の高いディスカッションが期待できます。まさに、プロジェクトチームとディシジョンボードが、たたき台を活用した「立場の異なる協働作業者」として、一緒によりよい案を作り上げていく「ワークショップ」を行うわけです。 こうしたワークショップを通じて、たたき台のさらなるブラッシュアップのポイントが明らかになり、それを踏まえて、ディシジョンボードからプロジェクトチームに向けて、次の③の「分析・評価と結果の共有化」に向けた作業への指示がなされることになります。 では次回は、③の「分析・評価と結果の共有化」以降について考えて行きたいと思います。 P.S. 次回かその次の回あたりから、「若者自立塾」に関する、フォース・フィールド・ダイアグラム、ディシジョンヒエラルキー、ストラテジーテーブル、価値判断尺度のリストなどにつき、たたき台のトライアルをやってみようと思っています。その参考として、読者の方々からもトライアル版をお送り頂けると、それらも活用させて頂くことによって、このブログ記事で私が提示する「たたき台」がより充実したものになります。。。ということで、読者の皆さんからのご連絡を期待していますので、よろしくお願いします!
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