経営資源配分の価値判断尺度として「第2のNPV: Net Pleasure Value」をどう具体的に使うか?(I)。。。壮大なる(無謀なる?)チャレンジへのFirst Trial |
4月24日のブログの最後で触れた、様々な施策・事業のトータルの「正味嬉しさ総額:Net Pleasure Value」を最大化する上での、施策間/事業間での優先順位付けをどう考えたらよいか、につき初歩的段階の思考ですが、ここに試案を書いてみたいと思います。
なおこのブログ記事で、第一のNPV(Net Present Value:キャッシュフローの正味現在価値)と第二のNPV(Net Pleasure Value:正味嬉しさ総額)が何度も出てきて紛らわしいので、便宜上、前者をNPrV、後者をNPlVと記すことにします。
また、このブログ記事では、基本的に自治体や政府の取り組み事業での意思決定や資源配分を想定することにします。企業の場合は、「製品やサービスという形での顧客への価値の提供に対する、正当なる見返りとしてNPrVが得られると考えると、多くの場合、NPrV≒NPlVと考えて大きな支障がないからです。もちろん企業活動でも、「≒」と「=」の差を考える必要が出てくるケースもあるので、その場合には、下記に展開する考え方を援用して使うことになると思いますが、以下の文章では、わかりやすさのために、基本的には自治体や政府の取り組み施策や事業を想定しつつ、話を展開しようと思います。
NPlVのとらえ方を考える「第一ステップ」として、まずは、一つの事業の複数の選択肢の中でどの選択肢を選ぶか、という意思決定の場面を考えてみます。2月から3月にかけてこのブログにシリーズで書いた、「勝手にディシジョンマネジメント」のカテゴリーの「事業仕分けを仕分けする。。。若者自立塾を題材として」の例を思い出していただけるとわかりやすいのですが、一つの事業の各選択肢の良しあしを測定するのに複数の価値判断尺度が想定されます。
この場合は、まず複数の価値判断尺度に照らした複数の選択肢の測定・評価結果の一覧表(=トレードオフ表)を作り、次にこれをにらんで選択肢間で「うーん」と唸って、各選択肢のトータルの相対的嬉しさに点数をつけるやり方が考えられます。例えば4つの選択肢のうち一番嬉しいと感じられる選択肢の嬉しさを100点とし、逆に一番嬉しくない選択肢を0点として、他の二つの選択肢の相対的嬉しさを、100点と0点の間の点数として表現する、というやり方です。
きわめて単純なやり方ですが、意外に実践的なのではないかと思います。というのは、私はしばしばいろいろなクライアントでの研修の場面で、実際にこの「相対的嬉しさ点数」のやりかたを使って、「ビジネス/ロジカル人生相談」での「意思決定思考の基本アプローチ」のグループワークをやっているのですが、相談者本人の納得感がとても高く、効果的と感じているからです。
もちろんこの時、各価値判断尺度ごとに各選択肢に相対点数をつけ、その上で各価値判断尺度の重要度に重みづけをし、そこからトータルの嬉しさを「重みづけ合計点」として算出する、あるいはもっと高度で複雑な関数形を設定する、というやり方も考えられます。しかし所詮は主観的な価値判断なので、複雑怪奇な関数を作れば作るだけ、結局ブラックボックス化して、直観的な「なるほど」感から離れてしまうと思います。ということで、「重みづけ」の関数をどう作るか、といったところにエネルギーを費やすより、直観的な「うーん」にもとづく「相対的嬉しさ点数」が有効なのではないかと思うのです。
次に「第二ステップ」として、複数の事業のNPlVの相対感、すなわち複数事業間での資源配分(=この場合は、税金の使い方の配分)の問題について考えてみましょう。たとえばイメージ的にいうと、「①ニートの若者一人が、就労できる人材になることに対して、一人の納税者or市民として感じる嬉しさ」と、「②寝たきり老人になる人数が一人減って、そこそこふつうに元気な老人になることに対して、一人の納税者or市民として感じる嬉しさ」を比較して、同じと感じるか、①は②の1.3倍に感じるetcとか、の判断をどう行うかという問題です。これは非常に難しい、ある種、哲学的な価値観そのものが関わってくることになります。
しかし、難しい・難しいとばかり言っていても仕方がないですし、誰も口に出しては言いたがりませんが、実際には毎年毎年、税金の使い方を決めたり配分をするという行為はやっているわけで、それは結局のところ異なるタイプの事業・施策間の交換比率の判断を事実上やっていると考えてよいのだと思います。ということで、あとは、この「交換比率」の問題を如何に透明性と納得性をもって行うか、という問題に帰着することになります。
そこで交換比率の問題にどう取り組むかにつき、一つのアイデアを提示してみます: 統計的有意性を持つだけの人数の市民モニターへのアンケートやインタビューを行い、それを有力参考資料として、政治家や自治体の長がうーんと唸って決める、というやり方はどうでしょうか?。。。ある人から聞いたのですが、韓国の先進的なある市では市長さんの発案で、いろいろな事業の「事業仕分け」的な検討結果を市民にネットで公開し、市民から「税金を使ってでもやって欲しい事業」vs「やって欲しくない事業」、のフィードバックをインターネットを介して受け取り、それをもとに市長が自らの政治理念に基づいて取捨選択を行っているそうです。そしてこれらのプロセスを全てネット上に公開して透明性を確保することで、納得性を高めているそうです。今回の私のアイデアは、この韓国の市長さんの発想を使ってみてはと着想したものです。
若干妄想的かもしれませんが、多くの人がイメージをもちやすい、基準となる事業(のベストな選択肢)を選び出し、それのNPlVをもって「1ハッピ(Happiness)」とか「1ええねん」とかを定義してみたら面白いかもしれません。(ちなみに「ええねん」というのは、NHKの深夜番組に「サラリーマンNEO」というのがあるのですが、その番組の最後に流れる歌の歌詞から拝借しました。蛇足ですが、結構笑えて&身につまされて、NHKの番組とは思えないシュールな面白さのある番組で、かなりお勧めです。なお念のためですが、「ええねん」という言葉自体は、大阪弁で「(これって、すごく)良いんだよ!」というニュアンスの言葉です。)
その上で、基準となる事業(のベストな選択肢)の「1ええねん」に対して、他の事業(のベストな選択肢)のNPlVを、「うーん、この事業のNlPVは、ほぼ0.3ええねんだな」とか「2.5ええねんくらいかな」とやっていくわけです。。。もちろん一人でこの交換比率を決めるわけではなく、統計的有意性を持つだけの人数の、無作為に選んだ市民・国民モニターへのアンケートやインタビューを行い、それを有力参考資料として、政治家や自治体の長がうーんと唸って決める、というやり方です。インターネットを使えば、モニターの数を、ほぼすべての国民や地域住民にまで広げることも可能ではないかと思います。
全ての事業(のベストな選択肢)についての「ええねん」指数が定められたら、次は、税金の使い方としての「事業ポートフォリオ」の資源配分の作業に進むことになります。
。。。例によって、ここまでのところでブログ記事としてはかなり長くなってきたので、続きは次の記事に書き継いで行きたいと思います。
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