大阪府特別参与の活動を4月から始めています。。。2010年6月時点までで感じたこと |
私のマッキンキンゼー時代からの友人である上山信一さん(現 慶応義塾大学教授/大阪府特別顧問)からの声掛けで、4月から大阪府特別参与の活動を始めました。エデュサルティングの仕事の合間を縫って、月に2~3回くらいのペースで大阪に行っています。
今、主としてお手伝いしているのは、様々な人たちの意見や利害が対立・錯綜する、あるホットなイシューにつき、衆知の結集で最も望ましい戦略・意思決定を見出すための作業たたき台を、大阪府の担当チームの人たちをサポートしつつ進める、という活動です。「あるホットなイッシュー」などと言わず、はっきり言いたいところなのですが、ここは慎重を期して、少し形が見えてくるまで、この言い方でご容赦ください。
橋下知事には4月初めにお目にかかり、「私を始め様々な人たちがいろいろと政治的発言をすると思いますが、籠屋さんには、それらにとらわれず、ぜひ『本来こうあるべき論』の検討をし、きちっとした議論のベースとなるものを作って頂くことを期待しています。」という言葉をもらいました。
これに意を強くし、政治的発言や発想には全く疎い私ですが、「(自分が提唱するディシジョンマネジメントのアプローチを活用して)衆知を結集した建設的議論・検討を行えば、民間企業の戦略課題のみならず、自治体や政治の戦略課題も、もっともっと良い議論と意思決定ができるようになるはず」という持論に基づき、このHotな課題の議論が、より良い方向に導かれることに貢献できることを願いつつ、活動を行っています。
これまでに感じた雑感的なものを、少し紹介してみたいと思います。:
○役所の方々と一緒に作業したりお手伝いをするのは今回が初めてで、当初は「一緒に仲間として真剣に検討に取り組んでもらえるのだろうか」という不安もありました。普段お付き合いしている民間企業のスタッフと違って、巷間言われる、お役人の「面従腹背」とか「隠れたサボタージュ」などの可能性を懸念したのですが、知事と上山さんからの事前の動機付けのおかげもあってか、今のところ全く問題は感じていません。
○民間企業のお手伝いをする場合でも、この種の話は実は付きまといますし、結局は状況と人次第、というところは、民間も役所もそう変わらないのではないか、という感触を持っています。
○今回の検討では、複数の定量&定性的価値判断尺度に照らして、いくつかの戦略代替案を検討するのですが、とくに定量分析モデルを作ったり、そのための不確実性の読みを行うところで、担当チームと私の意識合わせがなかなかスムーズに行かず、そこが苦労といえば苦労をしています。
○具体的には、そもそも定量的価値判断基準として何を持ってくるのか、どのような評価の仕方をするのかという点につき、意外にも、行政や政治課題に取り組む時の、「どこでもどんな場合でも、まあ、これが普通に標準的とされているやり方だよね」という、定型的・テンプレート的なものが、どうやらないようで—このこと自体、門外漢の私にとっては驚きだったのですが—、そのため今回この担当チームが手作りで考え組み上げる必要があり、このことがまず、担当チームの人たちに強いHesitation(躊躇)をもたらします。
○さらに、その計算モデルで使う不確実性の読みの数字についても、私からは「『インテリジェントえいやー』でいいんですよ。結局未来の不確実性の読みについて、それ以上のものはないのですから。」とお伝えするのですが、これについてのHesitationもやはり相当強いのです。
○担当チームの方々からは、「数字にしろ計算結果にしろ、『本当にそれで大丈夫か。結果が本当に読み通りに行くのか。行かなかった場合、誰が責任をとるのか』といったことが、あらゆる立場の人たちから役所には問われます。また、自分たち自身絶対的に強い自信のない、モデル構造と数字の読みに基づく検討結果により、政策判断がミスリードされるのは、自分たちの良心として、避けたいのです」とのことをお聞きしました。
○私の持論でいえば、「不確実性の読みについては、それに関して、それ以上優れた知見を持つ人たちはまずそうそうはいないだろう、と衆目が一致する人たちによる『インテリジェントえいやー』の読みで十分であり、逆にそれしかできないのであり、したがって、結果にだれが責任をとるのか、という質問自体、愚問!」ということなのですが、そのことも含めて、チームの方々と、色々と胸襟を開いたディスカッションを行いました。
○結果として今時点では、次の方針・認識で行こう、ということで合意し、つい先日橋下知事にお目にかかった時にも、このことにつき了解を得ました。
●「不確実性の読み」が難しいものが多いが、「数字の読みが難しいから定性的議論のみで決着させる」という考え方はとらない。巨額な経営資源投入を伴い、極めて影響の大きな意思決定を行うのだから、少なくとも桁レベルの議論、数値を使った検討を試みる必要がある。
●本検討では、限られた情報の中、多数の前提からなる定量化モデルを手作りする必要がある。したがって、定量化モデルそのものが持つ限界を認識し、そこから得られる洞察抽出に当たっては慎重な取り扱いが求められる、ことをしっかり認識しておく。
○今後の検討が、必ずしもスムーズにばかり進むとは思っていませんが、大きくは楽観視しています。物事に真剣に取り組み、本質的に社会正義に沿った活動をしようとする良心がある限り、うまくいくはず、と考えるためであり、今一緒に作業を進めている担当チームの方々に、その真剣さと良心を確かに感じるからです。
。。。ということで、まだ具体的なことが書けず残念ですが、進捗に応じて、また続編のブログ記事をアップして行きますので、ご期待下さい!
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