今週初め、ある大手企業の若手向けの「戦略的意思決定-導入編」の研修に行ってきました。このクライアントへは、これまで数年にわたって課長・係長層向けにディシジョンラボでのお手伝いをしてきたのですが、今回はもう少し若手向けに、意思決定思考の基本を伝える研修を実施することになったものです。 研修の内容としては、まず最初に「意思決定思考-未来を切り開くための6つのキーワード」と題して、「困難な状況でのありたい取り組み姿勢」や「意思決定への攻め込み方」、「不確実要因のとらえ方」など6つの観点から実践的な意思決定のための基本的な考え方を述べ、それを活用する上での具体的方法論として「意思決定思考の基本アプローチ」やそこで有効な「ディシジョンツリー」を解説し、これを使った簡単な事例を紹介します。 次にいよいよグループに分かれて、それぞれのグループで、「ロジカル人生相談」のグループワークに取り組みます。ここでは、受講生の持つビジネスないしプライベート上の悩ましい問題・課題を取り上げ、いま学んだばかりの考え方を適用して問題解決に取り組みます。 今回出てきたテーマは「会社の海外研修制度への応募チャンスにどう対応すべきか」/「家のテレビを地デジ対応に買い替えるかどうか」といったレベルのもので、グループワークの材料として取り上げるという制約上、あまり複雑・深刻でないものを選ぶのですが、「悩むに足る(=考える余地のある)、実際のリアルな(=架空でない)テーマ」であることが肝要です。 ここでいう「意思決定思考の基本アプローチ」とは、悩みがあったり困難な状況において、1)いつ頃どうなったら嬉しいかを想像し、その理想的状況を叙述・リストアップし、2)その実現に対して自ら意思決定できる(=Decisionableな)項目を明らかにし、3)この二つ、すなわち「理想的状況リスト」と「Decisionableな項目のリスト」の間にある様々な要因を洗い出し、それらを「選択肢」と「不確実要因」および「価値判断基準」という3要素に分類して頭を整理し、その上で4)これら3要素をベースとして、ディシジョンツリーなどを活用しつつ論理を組み立てていってBestな選択肢を作り選び取っていく、というものです。 こう書いてしまうと実に簡単なアプローチですが、「意思決定-選択肢」と「不確実要因-シナリオ」の峻別や、価値判断基準の明確化などの概念をきちんと踏まえて適用すると、驚くほど有効なのです。グループワークとその後の質疑応答・助言の中で、受講生たちはそのことを実体験を通じて学び、今回取り上げた4テーマの、悩みを持つ4人の方々は、納得感をもって今後の方針を明らかにすることができました。 このセッションで出てきた「気づき・注意点」を私から受講生にコメントしたのですが、参考までにいくつか紹介してみます。 ***************************************************** ○ついつい混同しがちだが、「意思決定-選択肢」と「不確実要因-シナリオ」の峻別の重要性。。。区別する必要がないのは神様だけ。神ならぬ身の人間は、自分に選べること(「意思決定-選択肢」)と選べないこと(「不確実要因-シナリオ」)を分けて考えることが、実践的に物事に取り組むための第一歩 ○過去の状況と今を比較して悲観するなど、ありえない/もう戻ってこない理想の選択肢との比較でものごとをとらえるのではなく、今現在の自分にとっての未来に向けて選びうる具体的な選択肢を創出し、それらの中から選ぶこと。。。実際それしかできないのだし、またそれでいいんだ、と現実的かつ前向きにとらえることの重要性 ○「ロジック分解の枝別れ」と「意思決定における複数の選択肢」を混同しないこと。。。たとえば、「A子さんと結婚するvsそれ以外」というとらえ方は、考えを進める上での「ロジック分解の枝別れ」としては役立つが、「それ以外」は具体的選択肢にはなりえないので、「A子さんと結婚するvsそれ以外」という意思決定はできない。意思決定するには、「それ以外」をより具体的に、結婚に関する自分の時間その他の経営資源配分を規定できるところまでブレークダウンする。すなわち「B子さん」、「C子さん」、「ものすごくグッとくる人が現れない限り、あと3年は独身でいる」といった選択肢の設定まで、考えを深化させることが重要 ○「思考停止の先送り」でなく、「戦略的延期」を!。。。期待値(=確率重みつき平均)がほぼ同じで、「ハイリスク・ハイリターン的」選択肢と「ローリスク・ローリターン的」選択肢の間での決断は、まさに悩ましく、ともすると「思考停止の先送り」になりがち。基本的には「う~ん」とうなって決めるしかないが、時には「戦略的延期」も可能。今現在手元にある選択肢が価値を失うことがない「一定の期間」だけ意思決定を延期し、その期間を有効に使って、次の時点での意思決定の質を高めるべく、不確実要因に関する情報収集や、選択肢の改善を図るための活動に積極的に取り組む、という考え方***************************************************** もちろん複雑な問題や多くの人の知識・知恵を集めないと解決できない課題に取り組むには、「意思決定思考の基本アプローチ」だけでは力不足です。そのためにディシジョンマネジメントの様々な先進的コンセプトやツールがあるのですが、それらを使いこなすにも、「意思決定思考の基本アプローチ」の思考回路が有効なのです。 数年前の私の研修の卒業生から次のような嬉しい話を聞いたことがあります:「意思決定思考の基本アプローチ」を何回かの実践で身につけたこの方は、ある時この考えを活用して小学校2年のお子さんの悩みの相談に乗ったのですが、お子さんから「お父さん、すごい!」との尊敬と称賛を受けることができ、以来、家族の中での地位が大きく向上したのだそうです。 読者の皆さんも、上記を参考に「意思決定思考の基本アプローチ」を是非試してみてください。その成果をContact Usから送っていただき、他の読者の方々にこのブログを通じて紹介できればと願っていますので!
スパムが非常に多いため、一時的にコメントは受け付けないように設定しました。コメントを頂ける方は、CONTACT USにある当社のメールアドレスまで直接お寄せ下さい。