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企業の目的は儲けることか？。。。Net Pleasure Value（これから嬉しさ総額）思考の勧め

カテゴリー: エッセイ・論説 2009 年 6 月 17 日 コメント(0)

「企業の目的は利益追求、すなわち儲けること」といわれることが多いのですが、企業が「そもそも社会に誕生し存続し続ける理由」としてのミッションやビジョンといったものの中で、お金儲けの部分は実は最重要なものでない場合の方が多いように思います。ほとんどの企業の設立において、お金儲け自体をミッションとして掲げることはあまりなく、そしてそれは決してきれい事だけでなく、たいていの場合、創業者たちは本気でお金儲け以外のミッションを信じて設立するからではないかと思います。

ですから、企業価値のうち、「キャッシュフローのNPV（Net Present Value：正味現在価値）」で測定できるのはその一部分であって、本来は、「その企業が社会に誕生し存続し続ける理由としてのミッション/ビジョンに照らした、今後得られる“嬉しさの総和”なり、“ミッション達成総額”、すなわち「これから嬉しさ総額」と定義されるべきものなのではないかと考えます。

数年前、大学院で教えた学生たちと懇親会をした時にこの発想を話したのですが、皆、大いに賛同してくれました。そして話が盛り上がった中で、「これから嬉しさ総額=Net Pleasure Value:NPV」と呼んではどうか、と提唱しました。「キャッシュフローのNPV（Net Present Value）」をもじったものですが、私はそれ以来、この「これから嬉しさ総額=Net Pleasure Value:NPV」こそがより本質的なものではないかと考えるようになりました。

ただ多くの場合、とりわけ厳しい競争環境下では、「顧客の満足度を高めることに対する正当なる分け前としてのキャッシュフローの、今後得られるであろう総額としてのNPV（Net Present Value）」をプラスにしさらに大きくすること自体が大変困難なわけです。そのため、便宜的に「NPV（Net Present Value）」で「Net Pleasure Value」を近似ないし代替している、それで問題がないケースが多い、と考えたらよいのではないかと思うのです。。。もちろん、「これからの嬉しさ総額=Net Pleasure Value:NPV」には単位も付けにくく測定しづらい、という事情もありますから。

昨年からベストセラーになっている「日本でいちばん大切にしたい会社」という本に出てくる、伊那食品工業とか日本理化学工業といった会社の経営や企業のありように接すると、持続的に「Net Pleasure Value」を大きくしていく上での一つの必要条件として「Net Present Value」の増大が必要、ということが、具体的な実績として実現されているのではないか、と感じた次第です。（ちなみにこの本は、最初タイトルを見て「どうかな」と思ったのですが、出てくる会社が大変素晴らしく、すなおに感動しました。）

少し飛躍するかもしれませんが、今後の企業は、以上の本質を、株式会社や資本市場の仕組みの中で、もっと積極的に株主に発信していくべきではないかと思います。つまり、自社の信じるミッション/ビジョンをより具体的に語り、それに共鳴する株主を募る。そしてそうした株主に対してリーズナブルな金銭的リターンを継続的に提供しつつ、より重要なこととして、ミッション/ビジョンをよりよく達成し続けていることを実績として示しIRを通じて伝え続けていくのです。これは一種、現実離れした理想主義のように聞こえるかもしれませんが、目指すべき姿としては一考に値するのではないかと思います。

たとえば、株式公開された会社ではありませんが、アメリカの登山/アウトドア用品の小売りでREI（Recreational Equipment Inc.)という売上高1000億円規模の生協組織の会社（Consumer-owned Cooperative)があるのですが、この会社は経営陣も社員もみな登山/アウトドア好き、そしてそういう顧客に生協のメンバーになってもらい、十分な金銭的リターンをメンバーに提供しつつ、皆、山/アウトドア好きの仲間としてやっていこう、という方針を標榜しているのだそうです。

以上はすべて私の、ある種、理想主義的かもしれない思いと仮説ですが、多くの企業がこのように考えて事業や仕事に取組み、それに共鳴する投資家との間でWin/Winの関係、社員や顧客も入れればWIn/Win/Win/Win、すなわちWinの四重奏の関係が成り立つようになることが、世の中の元気・やりがいの増大につながっていくように思われるのです。

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