幸せの人生相談:事例1「小学5年の娘に携帯電話を持たせるべきか?」。。。悩める父、石室欽一氏の場合(1) |
カテゴリー: 幸せの人生相談:より良く生きるための意思決定 2011 年 5 月 19 日 コメント(0) |
いよいよ今回から、「幸せの人生相談」の事例紹介を始めます。第一話であるこの事例1は、中堅メーカーであるスタープラム社の人事部で課長職を勤める石室欽一氏の、悩める父親としての問題に、欽一氏の年長の従兄である多聞氏が、「意思決定思考の基本アプローチ」を使って助言をする、というお話です。。。実際に著者である私がお手伝いしたケースを、相談者ご本人に迷惑がかからないように架空の話に脚色したものですが、読者の方々に共感/実感を持って聴いて頂けると嬉しいです。(以下、文中の登場人物については、基本的に敬称略とします。) この図の中の小さい四角(□)は意思決定項目を示し、そこから出ている分岐の一つ一つは選択肢を示します。図1では選択肢が2つなので2本の分岐になっていますが、3つの選択肢なら3本、4つなら4本、というように書いて行きます。一方、図の中の小さい丸(○)は不確実要因を示し、そこから出ている分岐の一つ一つは不確実性のシナリオを示します。図1では各不確実要因からの分岐が二つですが、3つのシナリオで考える場合は3本の分岐。。。、というのは意思決定項目での分岐と同様の考え方です。ちなみに「ディシジョンツリー」というのは、この図のように、意思決定(ディシジョン)の構造を樹木(ツリー)状に図示することから、「意思決定の樹木」という意味でこの名が付けられています。 さて、ここから多聞の助力のもとに欽一が作った図1のディシジョンツリーを参照しつつ、以下の説明を聞いて下さい。 ○意思決定項目としては、娘の愛美に専用の携帯電話を持たせるか、持たせないか、であり、それぞれの選択肢においてうまくいくか、行かないか、という不確実性のシナリオがあります。 ○具体的には「持たせてうまく行くか否か」とは、きちんとルールを守るか否かであり、「持たせないでうまく行くか否か」とは、必要な時に親の携帯を借りて使うというやり方について納得してそれに沿った行動をするか否か、ということです。 ○さらに各選択肢を、意思決定の定義にのっとって、経営資源配分へのコミットメントにまでブレークダウンし、具体的なアクションに掘り下げて記述して行きました。 ○より具体的には、「持たせる」というのは、「専用携帯を今すぐ持つことの危険性を納得させた上で、それを防ぐためのルールが大事だということを納得させ」、さらに「親子で話し合ってきちんとしたルールを決め、合意した上で、専用の携帯電話を持たせ、使用させる」ということになります。一方、「持たせない」とは、「専用携帯を今すぐ持つことの危険性を納得させて、必要な時は両親の携帯電話を使うことに合意させ」、実際に「娘が携帯電話を使いたい目的と状況を十分聞いたうえで、両親の携帯の受け渡しがスムーズに行なえるよう事前にガイドラインを決めて、実施する」ということです。 ○またそれぞれの不確実性のシナリオごとに、2人の対話の中から明らかになった、欽一のいくつかの価値判断尺度に照らしたときの結果、というかたちでこれまた記述することで、欽一自身のイメージを鮮明にして行きました。。。ここで欽一の価値判断尺度として考えられるのは、「子どもの自己管理能力や自立心がどのくらい育っていくかの度合い/友達との関係の良好度/親子関係の良好度や成熟度」といったことになりますので、これに沿って、「持たせてうまく行く」、「持たせてうまく行かない」、「持たせないでうまく行く」、「持たせないでうまく行かない」の4つのケースを具体的に叙述したわけです。 ○企業の意思決定であれば、通常これら4つのケースの末端でそれぞれどれくらい儲かるかの金額を記入するのですが、個人の意思決定の場合は、前に書いたように「嬉しさ総額(Net Pleasure Value)」で考えるので、金額で示す、という手は使えません。 ○そこで多聞は、図1のように、専用携帯を「持たせてうまく行く(A)、行かない(B)」と「持たせないでうまく行く(C)、行かない(D)」という計4つのケースについて、欽一にとっての嬉しさの順番を聞きました。欽一は少し考えた上で次のように答えました。 ○まず一番嬉しいのは、持たせた上でうまく行って自立心が育ち、親子の信頼関係が一段レベルアップする(A)のケース。これに続いて二番目に嬉しいのは、持たせないで何とか納得してくれる(C)のケース。(C)で落ち着いた場合、ほっとはするが、親離れ/子離れが進まず、子供が学校で若干の疎外感を味わう可能性も残ることから、(A)に比べての嬉しさはだいぶ落ちるが、それでも友達とのいさかいが起きたり、親子関係が決裂する(B)や(D)よりはだいぶまし、という判断です。 ○次に、持たせてうまく行かない(B)のケースと、持たせないでうまく行かない(D)のケースの比較では、「持たせて、たとえ事件やいさかいに巻き込まれたとしても、それによって多くのことを学ぶことで子供の精神的成長が期待出来る」という観点から(そして、そういう学習能力と態度を愛美が本質的に持っている、という信頼のもとに)、決定的に親子関係が悪化してしまう(D)にくらべれば(B)の方がだいぶまし、という順位付けを欽一はしました。 ○以上のやり取りから、4つのケースの嬉しさの順位は、図1に示すように、上から1,3,2,4となりました。もし嬉しさ順番が、上から1,2,3,4となった場合には、迷うことなく「持たせる」の選択肢が選べるのですが、残念ながらそうはならなかったので、ここまでの議論だけからは、まだ結論は出ないことになります。 ○以上の議論を通じて欽一は自分の悩みの全体像と構造が鮮明に認識出来て、その意味ではだいぶすっきりはして来たのですが、これではまだ何の結論も出ないことも明らかで、さてここからどう進めて行くのかと、多聞の顔を少し不安げに見つめています。 ○そこで次に多聞は。。。。。 **************************************************************** ここから先は、次回に書きついで行きますが、今回までを振り返って、少しだけ解説をします。 まず上記の議論では二つの選択肢のそれぞれ二つのシナリオ、計4つのケースの嬉しさ順位番が、上から1,3,2,4となり、結論が出なかったのですが、もしそれが、上から1,2,3,4となった場合には結論が出る訳です。 実際、私の今までの経験では、そのようになるケースがありました。これは、その相談者本人にとっての意思決定項目と選択肢が具体的アクション/経営資源レベルにまでブレークダウンして鮮明に認識され、また自らの複数の価値判断尺度についても明確に認識するとともに、それを反映する形で不確実性とそのシナリオについての理解が進んだことで、納得感/自信をもって嬉しさ順番がつけられたからでした。 残念ながら欽一の場合はそこまでシンプルには行かなかった訳ですが、そういう場合にはまだ手はありますので、次回をご期待ください! P.S. なお、ソフトの関係ないし私のスキルの問題で、インポートした図がうまく表示できないケースがあるようです。その場合は、私まで(このホームページのContact Usのフォーマットを使って、ないしディシジョンマインド社のメールアドレスdecision-m@mvc.biglobe.ne.jp へ直接)リクエストを送っていただければ、パワーポイントの図をお送りします。 |
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