幸せの人生相談:事例2「職場の不満/悩みをどう打開するか?」。。。悩めるキャリア女性、Ms.草刈の場合(3) |
カテゴリー: 幸せの人生相談:より良く生きるための意思決定 2011 年 6 月 4 日 コメント(0) |
・・・いま持っている情報・知見から言えば、「社内で異動する」を選ぶのが一番良い、という結論に納得しすっきりした表情をしているMs.草刈に、欽一は、「今すぐ行動に移す前に、二つほど追加の助言があるので聞いてもらえますか」と言って語り出しました。以下、欽一の追加の二つの助言です。: ○まず、「(社内で)異動する」と「(社外に)転職する」の二つの選択肢を比較すると、それぞれの「うまく行く」と「うまく行かない」の確率は、50%/50%で全く同じ確率の分布を持っていることが分かります。 ○そして、それぞれの「うまく行く」のケースの嬉しさ順番を比較すると、「異動する」のそれはNo.1で「転職する」はNo.2となっており、「異動する」の嬉しさ順番の方が高いことが分かります。一方、それぞれの「うまく行かない」のケースを比較すると、これまた「異動する」の方が嬉しさ順番は高いことが分かります。(具体的には、No.4 vs No.5 となっています。) ○つまりこの二つの選択肢の結果のシナリオは、同じ確率分布を持ちつつ、「異動する」の方が「転職する」に比べて、より嬉しい方向に、ある種「平行移動」しているのです。この分野に詳しい私の従兄の多聞によると、厳密には「確率的優位性(Stochasticly Dominant)」というらしいのですが、まあ大雑把に「平行移動分布」と呼んでいるそうです。 ○例えて言えば、こんな感じです。。。ここに二つのクジGとHがあって、何が当たるかは、コインを投げて「表ならこの景品」、「裏ならこの景品」、というようにそれぞれ決まっているとします。(なお、この場合に使うコインは、GでもHでも同じものを使うこととし、表と裏の出る確率は50%/50%という、まっとうなコインを使うものとします。) ○その時、表が出たときのGの景品とHの景品を比較すると、自分にとってGの方が明らかに魅力的。また裏が出たときの景品を比較しても、やはりGの方が明らかに魅力的。つまり、表が出る場合でも、裏が出る場合でも、結果の嬉しさは、常にGの方がHに比べて、より嬉しい方向に(平行)移動分布している、とします。こういう場合、どちらを選びますか?。。。普通、当然Gを選びますよね? 「平行移動分布」の考え方は、つまりはこういうことです。 ○「平行移動分布」の考え方を適用して、「(社内で)異動する」と「(社外に)転職する」の比較では、「異動する」を迷うことなく選ぶべきだ、ということが明らかになったのですが、今度は、この二つの比較で負け残った「転職する」と、3つ目の選択肢である「異動しない」を比較してみましょう。今度もまた「平行移動分布」の考え方を使います。 ○まず「転職する」と「異動しない」のそれぞれの選択肢の「うまく行く」と「うまく行かない」のケースを比較すると、いずれの場合も嬉しさ順番は、「転職する」の方が「異動しない」よりも高いことが分かります。(具体的には、「うまく行く」の場合、No.2 vs No.3. ですし、「うまく行かない」の場合、No.5 vs No.6 となっています。) ○次に確率分布を見てみると、「転職する」の時の「うまく行く」/「うまく行かない」は50%/50%に対して、「異動しない」のそれは20%/80%なので、さっき説明した平行移動分布の考え方が、一見そのままでは当てはまらないように見えます。しかし、ここに仮想的な選択肢を介在させることで、このケースの場合も、平行移動分布の考え方は依然として適用出来ます。どういうことかというと。。。 ○いま、「仮想的選択肢Z」というのを考えてみます。「仮想的選択肢Z」は「うまく行く」/「うまく行かない」の確率分布が50%/50%で、「うまく行く」ときの嬉しさ順番がNo.3、「うまく行かない」ときの嬉しさ順番がNo.6、というものだとします。ちょっとだけややこしいですが、ディシジョンツリーの「転職する」と「異動しない」と見比べながらじっくり話を聞いて下さい。 ○まず「転職する」と「仮想的選択肢Z」を比較すると、この二つの選択肢は、確率分布は50%/50%と全く同じで、「うまく行く」「うまく行かない」のそれぞれのシナリオで嬉しさ順番が、ちょうど一つづつ、「転職する」の方が「仮想的選択肢Z」よりも、より嬉しい方向にずれていることが分かります。(しつこいですが、具体的には、「うまく行く」の場合、No.2 vs No.3. ですし、「うまく行かない」の場合、No.5 vs No.6 となっています。) ○このことから、平行移動分布の考えを使って、「転職する」という選択肢は、「仮想的選択肢Z」よりも、明確に優位だということが分かります。 ○次に、負け残った「仮想的選択肢Z」と、「異動しない」を比較してみます。この二つの選択肢での「うまく行く」「うまく行かない」の嬉しさ順番は、それぞれ No.3 vs No.6 で、全く同じです。 ○一方、両者の確率分布を比較すると、「仮想的選択肢Z」の方の「うまく行く」確率が50%なのに対して、「異動しない」のそれは20%なので、明らかに仮想的選択肢Zの方が、「異動しない」より好ましい、ということです。 ○しつこいですが、再度、クジの例えで説明してみます。今度のクジJとKは、コインの表が出たときの景品と裏が出たときの景品は、表が出たときの景品の方が、裏が出たときの景品より魅力的なのですが、どちらのクジでもそれぞれのシナリオで全く同じものだとします。 ○違うのは、それぞれのクジで別のコインを使うことです。そして、Jのクジでは「表が出る確率」が、Kのクジで「表が出る確率」よりも高いコインを使うことにします。つまり具体的には、Jのクジでは、表が出やすいように細工したコインを使い、Kのクジでは表と裏の出る確率が50%/50%のまともなコインを使う、ということです。 ○こういう二つのクジJとKがあったら、どちらを選びますか? もちろんJですよね。「仮想的選択肢Z」と「異動しない」の比較も、このクジJとKの比較の考え方を使えば、「仮想的選択肢Z」の「異動しない」に対する優位性は明らかですよね。 ○。。。ということで、「転職する」よりも「仮想的選択肢Z」の方が望ましくない、その「仮想的選択肢Z」よりも「異動しない」の方が望ましくない、ということから、「転職する」よりも「異動しない」の方が望ましくない、ということが明確になりましたよね。(ちなみに以上の議論では、嬉しさ順番において、「グー/チョキ/パー」的なことは起こらない、と想定しています。。。実務的には、まずまず妥当な想定だと思います。) ○以上、相当しつこくなりましたが、「平行移動分布」の考え方を使うと、期待値の計算をするまでもなく、明らかに、かなり強い自信を持って「社内で異動する」選択肢を選ぶことが出来るはず、ということです。 ②二つ目のポイントは、一つ目のポイントとは裏腹な話です。今言った「ほぼ絶対の自信を持って『異動する』を選べる!」という結論は、今回の検討が、【いま現在集めうるベストな情報・知見に基づいている場合には】という大前提が成り立ってこその話で、草刈さんの場合は実際にはそうでは無さそうなので、今時点では「留保条件付きの結論」と考えておいた方が良さそうですね、ということです。 ○つまりディスカッションの途中で草刈さんがいみじくも言ったように、社内での異動先の可能性に関する情報や転職先の可能性についての情報の質が、まだあまりにも低すぎるので、もう少し情報収集を行い、情報の質を上げてから最終の意思決定をした方が良い、と思うんです。 ○もし私で役に立つなら、そちらの方の助言もさせてもらいます。。。 *************************************** ここまでの欽一の助言を聞いたMs.草刈は、取りあえずの結論は「社内で異動する」であるものの、これを念頭に置きつつ、社内での異動先の可能性や社外への転職の機会のありどころなどにつき、あと1〜2ヶ月かけて情報収集し、その上で最終決定と実行に踏み出すことにしました。 1〜2ヶ月もあれば、欽一をはじめとする異業種交流の人脈や社内での人脈などを活用しつつ、ある程度納得出来るレベルまで情報の質を高めることは可能だろうと判断したのです。そして、早速、この情報の集め方についても欽一に助言を求め始めました。。。 以上が、悩めるキャリア女性Ms.草刈の事例ですが、如何だったでしょうか?学んだり参考に出来たでしょうか? 蛇足ですが、最後に、この事例から汲み取れるポイント/学ぶべきポイントをまとめておきます。 1. 事例1と違って、嬉しさ順番だけでは決着がつかない場合、「(相対的)嬉しさ点数」の考え方を導入し、それを使った期待値の計算をします。 2. 実際の意思決定は、期待値の大きさのみならず、リスクを考慮して、「期待値と振れ幅のバランス」をトータルにみて行うことになります。 3. 時に「平行移動分布」という考え方を使うことで、より自信/納得感をもって意思決定することが可能です。 《。。。ここで念のため、「平行移動分布=確率的優位性(Stochasticly Dominant)」と「確定的優位性(Deterministicly Dominat)」の違いについて解説しておきます。先ほどのクジGとクジHのケースで、確率的にはGの方が優位だという話をしたのですが、この時留意すべきは、「Hのクジの方がGのクジより良い結果になる」ことはありうる、ということです。つまり、Gのクジで裏が出て、Hのクジで表が出て、かつGクジでの裏の景品が、Hクジの表の景品より嬉しさが劣る場合には、結果的に「GクジよりもHクジの方が結果が良かった!」ということは、起こりうるわけです。これが「確率的優位性」の意味です。 一方、「確定的優位性」というのは、たとえGクジで裏が出て&Hクジで表が出ても、Gクジの裏の景品の方がHクジの表の景品よりも嬉しさが勝っている場合には、「GクジよりもHクジの方が結果が良かった!」ということは起きえない、となっている状況のことです。これが「平行移動分布=確率的優位性(Stochasticly Dominant)」と「確定的優位性(Deterministicly Dominat)」の違い、ということです。 。。。つい、私の昔のエンジニアの血が騒いで、少し、というか、かなりしつこい解説になってしまいました。。。ロジックの議論に興味を持たれる読者の方々には、なるほど感を持っていただけたと思うのですが、それ以外の方にとっては、このあたりのややこしい議論は「ふーん」という感じで、スルーしていただいて結構です!》 4.意思決定は、いま現在持っているベストな情報/知見にもとづいて行う、というのが原則ですが、検討途中で、「あまりにも情報の質が低く、まだまだ質を高める努力は可能。そのための時間的余裕もある」と判断された場合には、その検討で明確になった「どの情報の質を高める必要があるか」の知見を活用して、追加の情報収集にとりかかることが重要です。 (。。。ただし、情報収集とそれに基づく再検討の具体的プランを明確にし、かつ時間を区切らないと、「デッドライン(期限日時)なき、思考停止の先延ばし」になってしまうので、その点は極めて要注意です。) 。。。。。ここまでで、「幸せの人生相談」の二つの事例を紹介してきました。まだいくつか紹介したいところですが、まずは読者の方々の反響/フィードバックをお聞きして、次の進め方を考えたいと思っています。またここまでを聞いて、「ぜひ自分の悩みについて『幸せの人生相談』を受けてみたい」という方は、ぜひ私までご連絡下さい。このブログのコメント欄を使ってでも、ContactUsにあるディシジョンマインド社のメールアドレスに直接でも結構ですので、ふるってご連絡ください。コメント欄を使ったやり取りでも、あるいはface-to-faceのライブ面談形式でも、相談者の方のご希望の形で進めて行きたいと思います。 今後の皆さんとのコラボレーションで「意思決定思考の基本プローチ」/「『前向き/納得/ロジカル』意思決定」の【幸せの人生相談の輪】を広げて行きたい願っていますので、よろしくお願いします! |
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