先月はじまった、あるクライアント企業(S社としておきます)のディシジョンラボ・プログラムの冒頭で、S社の社長(I氏としておきます)から、参加メンバーの方々に対し、ご自分の経営観・哲学を語るセッションがありました。 I氏は、数年前の執行役員時代に、私が講師を務めるパブリック・セミナーに参加されて以来、ディシジョンマネジメントの考え方に共鳴して下さり、今回、社長としてこのプログラムに私を招いて下さったのですが、数年前のセミナーの際のQ&Aからも、実務的・実践的に経営に取り組む姿勢が鮮明に感じられた記憶があります。 今回のディシジョンラボ・プログラムの冒頭でのこのセッションでも、ご自身の生々しい経験も踏まえ、実践的・実務的観点から、受講生に役立つ様々な視点・論点を印象深くお話し下さいました。 その中でもとくに印象に残ったのが、表題とした「変革は小さな変化を積み重ねた結果」という言葉です。「変革」というと、とかく、カリスマ的経営者が周囲や関係者の大きな反発をものともせず、スピード感を持ってあらゆるものを一気に変えていく、という英雄的イメージが先行しますが、I氏によれば; 「時代・事業環境変化を見据え5年先を見越して方向性を見定めつつ、自分自身が率先垂範して小さな変化を起こす。それを仲間との密なコミュニケーションを通じて実践の輪を広げて行く。そうした小さな変化の積み重ねこそが変革。その意味で、ミドルアップの変革は企業文化になる。 一方、トップダウンのものは、仮に一時的にうまく行っても、そのトップが去った途端に忘れ去られるので、文化として継続して行くことができず、結局単なる一時的な変化に終わってしまう。」 I氏自身は、ミドル⇒執行役員⇒社長の各時代に、様々な変革を仕掛けてきた実績があり、強いリーダーシップが感じられる方なので、こうした言葉はちょっと意外でもあったのですが、実務的・実践的に地に足をつけて考え・行動する方ならではの言葉なのだな、と思いました。 私も研修やスピーチの中で常々、「企業文化変革へのアプローチは、理念的に『企業文化・企業体質の問題から入る』のではなく、実践的に『戦略アジェンダ(重要戦略課題のリスト)と意思決定についての、その場その場での具体的言動と経営資源配分から変えて行く』。。。企業文化は結果として変わる、と認識すべき」と言っていますので、やはり本質的なところで相通じるところがあるんだな、と僭越ながら感じました。 宅急便の生みの親であるヤマト運輸の故小倉昌男氏がかつて、「経営者が理念ばかり言っても始まらない。社風を育むのは実践の継続だ」と語っていたそうですが、これもやはり通低する言葉だと思います。
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