前回の【「思い込み=既に正当性を失った暗黙の前提」による「戦略的勘違い・間違い」】の問題提起の続編として、今回は、これを防ぐための解のアプローチを提言したいと思います。 一言でいえば——皆さん、だいたい予想していたかと思いますが——「ディジョンマネジメントを活用した、衆知の結集」ということになりますが、具体的には以下の4つを提案します。 ①ダイバーシティ——多様性あるチームメンバー構成で検討に取り組む: 個人個人の想像力には限りがあり、なかなか自分のもつ「暗黙の前提」には気づきにくいものですが、検討チームに、異なる経験・バックグラウンドの人たち—部門横断的メンバー構成/人種/国籍/性別etc—が幅広く入っていれば、間違った暗黙の前提sを突き崩すことがやりやすくなります。 私の経験では、メンバー間でお互いの発言や発想に対して、「えっ?!、それってどういう意味?」「え~?!何でそうなるの?」という感じで、かなりクイックに、間違った暗黙の前提sの発見ができます。 (ちなみに、この前後の文章で名詞の後ろにつけた「s」は、複数を表します。。。日本語で複数を明示的に表記しにくいための苦肉の策です。) ②Force-field Diagram(F-fD)を活用してフレームを適正化する: F-fDというのは、想定している戦略構想に関するForces for(=やるべし、という論点s)とForces against(=やらざるべし、という論点s)を徹底的に洗い出すツールですが、とくにAgainstの要因sを多様なバックグラウンドをもつメンバーの議論を通じてリストアップしていく中で、暗黙の前提条件sを浮かび上がらせることができます。 浮かび上がった複数の(暗黙の)前提条件sを検証し、今の事業環境下での正当性を議論した上で、必要に応じて新たな、より的確な前提条件sの設定を行います。これを、トップも含めて「先送りせず」きちっと議論して判断し・決めることが重要です。つまりは「フレームの適正化」を行うわけです。 なお、F-fDで洗い出される多くの論点sは、暗黙の前提条件sを浮かび上がらせるのみならず、具体的な戦略を策定する際に重要となる複数の意思決定項目sの抽出や、重要な不確実要因sの抽出にも役立ちます。前者は③の作業に、後者は④の作業に生かして行きます。 ③思い切った選択肢sを設定: 暗黙の前提sを突き破って設定した適正なフレームのもとで、それまで考えていたのとは質的にand/or量的に大きく異なる思い切った選択肢sも含めて、複数の選択肢sを設定します。 ④定量的リスクリターン分析を通じて自信解・納得解を導き出す: 設定した選択肢sを、②のF-fDから抽出した不確実要因sに照らして定量的リスクリターン分析を行います。そこでの収益ドライバー分析(=何が収益の源泉となっているかを明らかにする分析)とリスクドライバー分析(=何がリスクの源泉となっているかを明らかにする分析)から得られる様々な洞察から、納得解を導き出して行きます。 私の経験では、定量分析を通じて、暗黙の前提に基づく——こんなところかな、という——「落としどころ」が、収益的に全く間尺に合わないことが分かったり、「さすがに、これはないよな」と思っていた「とんがり選択肢」が、意外にも収益的に最も魅力的だと分かったりします。。。もちろんケースによっては、これとは逆のことも起こります。 一般に日本企業は、この定量的リスクリターン分析を軽視するきらいがあります。定性的議論のみに基づく「落としどころ解」—–多くの場合、既に正当性を失ってしまった暗黙の前提に基づいて設定されます——を正当化すべく、その落としどころから逆算して不確実性のシナリオを設定する、というタイプの「似非(えせ)定量分析」が横行しています。 是非とも、最近アップしたブログ記事に書いた「正直ベースのインテリジェントえいや~」の数字を使った、きちんとした定量的リスクリターン分析を行い、それに基づいた自信解・納得解を作って行ってもらいたいと思います。 以上の4施策をステップを踏んできちんと行えば、「あと知恵」でなく、また一挙に青い目のトップを迎えたり、大がかりな企業統合といった派手なやり方でなくとも——決して全面的に否定するわけではありませんが、副作用が激甚になる可能性があり、時には企業や組織が死んでしまう危険もあるため——「思い込み=既に正当性を失った暗黙の前提」による「戦略的勘違い・間違い」を防ぐことは十分可能なのです。是非皆さんもトライして頂きたいと思います。
スパムが非常に多いため、一時的にコメントは受け付けないように設定しました。コメントを頂ける方は、CONTACT USにある当社のメールアドレスまで直接お寄せ下さい。