まずは、最近の日経ビジネスに載った、ローソン社長の新浪さんとソフトブレイン創業者の宋文洲さんの対談記事からの抜粋です。曰く: ********************************************* ・・・ 宋:・・・日本の技術が優れているので日本企業が作ったものは中国でそのまま売れる、というのなら、1970年代にそうしたように日本で作ってどんどん「輸出」すればいい。でも今の中国のマーケットでは、現地で消費者のニーズをくみ取ったうえで、技術を使って開発しないと受け入れられません。 例えばドイツのメーカーは、中国市場で「小さなエンジンをつけた大きな車」を作っちゃうんです。なぜなら、中国人はでかい車が好きなんですね。エンジンは安いものを積んでいるので、車体が大きくても安く買える。一方、日本メーカーはまじめだから、小さな車体には小さなエンジンを載せ、大きな車体には大きなエンジンを積む。中国人の好きな大きな車を買おうとすると、性能はよくても高くついてしまうんですね。 新浪:ローカルに合わせなきゃいかんということだね。 宋:・・・日本メーカーは、技術は一流かもしれないけれど、マーケティングの力で韓国とかドイツに負けています。・・・ 新浪:その通りですね。ただここでまた「時間軸」を考えたい。例えば、海外メーカーが大きな車体に安いエンジンをつけて売ったと。「短期」的にはよく売れるかもしれない。けれども、道路事情がよくない中国の農村部でそんな車を走らせていたら、しばらくして車が傷みます。修理のコストがかかってくる。日本メーカーは、売れるかもしれないが、そういう壊れやすい車は作りたくないと考えるでしょう。 一度でも売れば、故障したユーザーに「さらにいい車があります」と薦められる。そうやって顧客の満足度を上げていくというのも1つの経営方針です。一方で日本企業のように「うちの車は壊れません」というのを実直にやって行くのもまた経営方針です。確かに今は、前者の方が受け入れられている。でもずっとそうなのか。僕はいずれ中国市場でも後者の価値を認めてくれる層が増えると思っています。 なぜこういう話をしたかと言うと、僕は先日モンゴルに行ったんです。そこで非常に感銘を受けた。モンゴルの方が言うには、日本の道路を作るのはえらく高かったと。中国や韓国の業者に頼めばもっと安い。ところが10年経って、日本の道路はほとんど直す必要はなかった。中韓企業が作った道路はメンテナンスが必要だったそうです。結局(初期コストは)5割くらい高かったんですが、メンテナンスの費用も含めて考えると「日本のを買います」とおっしゃる。 宋:なるほど。これは難しいな。 新浪:もうこれは経営判断ですよ。経営者は「短期」的な収益を求めるマーケットから常に攻められている。しかもどんどん短期的になっている。そんな中で、資本市場から「よくやった」と言われるのがいいのか。それとも、今は歯を食いしばって「自分たちのやり方でやるんだ」と企業文化を残していくのか。経営者として決めなきゃいけない問題ですね。恐らく「長期」と「短期」で、どちらが正しい、誤っているというものではない。中間点があるんだと思うんだけど。・・・ ********************************************* 如何ですか?。。。最近の幾つかの私のブログ記事にも関連していて、かなり本質的かつ深い議論・洞察だと思います。くみ取れるポイントを列挙してみましょう。 〇現地の顧客ニーズをしっかりつかむことの重要性 〇ただし、顧客のニーズのどのあたりに自社の価値訴求ポイントを置くか。。。狙う顧客セグメントを決めると同時に、。。。場合によっては、「狙わない」顧客セグメントを決める 〇短期の収益性と長期の収益性のバランスやトレードオフを考える 〇最終的なトレードオフは、企業文化を踏まえた経営判断になる 結論的にいうと、ブログの表題に記したように、【「戦略」と「価値判断尺度」と「喜んで欲しい顧客へのコミュニケーション」と「株主へのメッセージ発信」の一貫・同期を!】ということになります。 より具体的には—–ディシジョンマネジメント的にいうと。。。 1.顧客ニーズをしっかり現地現物で理解 2.どのセグメントを狙ってどんな攻め方がありうるか、の選択肢sを設定 3.自社の持っているスキル・アセットに照らして、どの選択肢が最も勝ち目が大きいかを、不確実性の影響も含めて検討・検証 4.複数の価値判断尺度(時間軸的な短期&長期も含めて)に照らして、Value Trade-off表で整理 5.自社のミッション・ビジョンに照らして、トレードオフの経営判断を行う。。。最後のValue Trade-off判断は、ミッション・ビジョンに照らした「Net Pleasure Vaslue」での「うーんと唸っての決断」ということになります。 6.実行において、しっかりと、狙う顧客へのアピール/コミュニケーションを行う。。。つまり、「喜んで欲しい顧客へのコミュニケーション」をしっかりやるということです。ここが日本企業は一般的にへた、というか重要性を忘れている気がします。 「いいことを黙って地道にやっていれば必ず相手は/世間はわかってくれる」という教育のせいかもしれません。しかしこれは、美しいけれど、グローバルには難しいと思います。 なぜなら、そういう前提で物事をとらえない文化的背景の人たちの方が、世界的にはずっと多いからです。のみならず、日本国内においてすら、既にわかってくれない人の方が多くなっている気がします。 一つの理由は、「いつかは分かってくれる」という前提は、ずっと同じ土地で濃密に付き合い続ける人たちの間でしか成り立たない想定であるからで、日本社会においても、この前提は崩れてきているからです。 7.さらに、顧客のみならず、株主へもしっかりメッセージ発信をし、自社の信じるミッション・ビジョンと一体のものとして説明をすることです。理想的には、そうした自社のミッション・ビジョンに共鳴する株主構成に、中期的には誘導していくのが望ましいと思います。 以上のステップを踏むことで、企業それぞれによって、「高品質・高機能にこだわり続け、それに価値を見出してくれる顧客にターゲットを絞り、そうした顧客を増やすべくコミュニケーションを行う企業」が出てくる一方、「そこそこ品質とそこそこ機能だが、対象顧客にとってはそれがJust fitで、そうした製品・サービスを魅力的な低価格で提供することで市場拡大を目指す企業」も出てきて、それぞれがそれぞれの信じるところに従って、各々が栄える、ということが可能になるのではないかと考えます。 それにより、それぞれの企業がそれぞれの「棲み場所」でそれぞれの顧客とwin/winの関係を構築し、したがって「横並びの消耗戦」や“winner takes all!”といった殺伐とした世界から脱却できるのではないかと考えます。。。「理想主義的すぎる」感は認識していますが。。。 まとめです: ぜひディシジョンマネジメントを活用して 【「戦略」と「価値判断尺度」と「喜んで欲しい顧客へのコミュニケーション」と「株主へのメッセージ発信」の一貫・同期を!】
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