戦略構想倒れにならないための「定量的リスクリターン分析」の重要性につき、(その1)、(その2)と書き継いできましたが、この(その3)で一応の完結です。 (その1)、(その2)を書いている中で、話が、そもそも「戦略構想倒れにならないために」の発端であった「沖縄グリーンニューディール」構想から離れて、私の持論展開に終始してしまった感があるので、最後に、「定量的リスクリターン分析」の、「沖縄グリーンニューディール」構想における意味合いについて少し考えてみたいと思います。とくに定量的リスクリターン分析を行うことによって期待できる利点に焦点をあてて考えてみることにします。 たとえばもし、レンタカー会社の収益性の定量的リスクリターン分析において、長期的なNPV(すなわち儲かり総額)の観点からは十分にペイする見通しがあり魅力的なものの、短期のキャッシュフロー的にはかなり苦しいために、一私企業としてはなかなか取り組みづらい、といった分析結果が出れば、一定期間、国なり自治体なりがキャッシュフローを補てんし、レンタカー会社のキャッシュフローが十分プラスになってからそれを返済してもらう、といった打ち手を考えることが可能になります。それによって、国や自治体にとってのサービス提供先である、住民・国民の長期的幸福(=Net Pleasure Value)の増大を実現できる、という社会正義にかなうからです。 また不確実性の観点から、たとえばもし、ガソリン自動車から電気自動車に変えることによりレンタカーを利用する観光客がどれくらい増えるかがNPV上とてもインパクトが大きく、その増加率が悲観値になった場合には多額の初期投資が回収できなくなる、といったことが分析から明らかになれば、あらかじめこの不確実性についての知見を増やしたり、増加率を大きくする打ち手を実地に工夫するための小規模な運用実験を行ってみる、といったリスク回避策のアイデアが導かれることもあると思います。 こうしたアイデアなり思いつき自体は、そこそこ賢い人たちが集まってある程度よく考えれば、定性的な思考から導くことはできますが、実際にやってみると、定性的には同じくらい魅力的に思える数多くのアイデアが出てくるため、今度はそれらのアイデアのうち、今回のケースではどれが重要でどれは的外れか、といったことを、定量的リスクリターン分析を通じて明らかにすることが必要になるのです。 さもないと、思いつきの定性的アイデアにもとづいて、必要もないのに(=つまり、一私企業の経営判断で十分にまかなえる範囲の投資に対して)助成金を出してみたり、逆に「焼け石に水」程度の助成金しか出さず、私企業にとってはありがたみがなく、住民・国民にとっては税金の無駄遣い、といった施策が実施されかねないのです。 以上、「沖縄グリーンニューディール構想」のTV番組をきっかけとして、全部で4回のブログ連載を通じて【戦略構想倒れにならないための「戦略構想の具体化作業」と「定量的リスクリターン分析」の重要性・有効性】についてお話をしてきました。「沖縄グリーンニューディール」構想にとっては「余計な御世話」だったかもしれませんが、関係者の方々にとって少しでも参考になればと願っています。 また、このブログのビジネスマンの読者の方々が、今後、自社の戦略課題に取り組む際、「戦略構想倒れ」にならないためのヒントとして活用していただけると嬉しいです。
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