緊急告知:【「浅田真央選手のフリー演技当日の意思決定」をディシジョンメネジメントする】というタイトルの記事がウェブに掲載されました。 |
超久しぶりのブログにもかかわらず、いきなりで恐縮ですが、今日(2月12日)から、DIAMONDハーバード・ビジネスのウェブページに、 【「浅田真央選手のフリー演技当日の意思決定」をディシジョンマネジメントする】というタイトルで、私の書いた記事が掲載されています。 少し背景を説明させていただくと。。。。。
ソチ・オリンピックが開幕しましたね。
注目の女子フィギュアの浅田選手のトリプルアクセルへの挑戦について、1月初旬の記事で、佐藤コーチが「基本的に浅田選手がこだわりをもつ超難度技トリプルアクセルにトライさせてやりたいが、最終的には、当日の体調と直前練習でのトリプルアクセルの出来を見て決めたい」と語っているのを知りました。
浅田選手のファンであり、意思決定とくれば血が騒ぐ私としては。。。、ということで、まったく余計なお世話ながら、勝手にフリー演技当日の意思決定を検討してみました。
そうしたら、取り掛かった時には予想もしなかった興味深い洞察が湧いてきたので、ダイヤモンド社に連絡し、結果としてこの記事になった次第です。
ぜひご覧いただき、感想などお寄せいただけると嬉しいです!
また、面白いと思って頂けたら、お知り合いの方への紹介や関係ありそうなウェブページへのリンクなどして頂ければ幸いです。。。多分に妄想的かもしれませんが、facebookのバックグラウンドとなったという「全世界の誰にでも、5人—だったような気がします—を介すればリーチできる」という理論にもとづけば、読者の方々のつてをたどって行って、ひょっとして浅田選手の師事する佐藤コーチに、この内容を伝えられるかもしれませんので!
なお、このウェブ記事中に以下の記述があります:
【。。。なお、少し複雑な検討が必要になるので本稿では割愛しますが、NPlVの「累積確率分布」の分析をしてみると、「TA挑戦」は「TA回避」に対して「確率的優位」――どんなNPlVの値においても、その値以下になる確率が「TA回避」のほうが「TA挑戦」より常に高い(逆にいうと、その値以上になる確率が「TA挑戦」のほうが「TA回避」より常に高い)――であることがわかり、浅田選手は、今回設定したような非常に困難な判断の場面であっても、十分な安心感をもって「TA挑戦」を選択すべきであることがわかります。】
上記のウェブ記事では、スペースの関係と内容が少し複雑なため伝えられませんでしたが、ここで割愛した「累積確率分布」や「確率的優位」について、このブログ読者の方々に、ご紹介したいと思います。。。「複雑」といっても、ディシジョンマネジメントの知見を持つ読者の方々にとっては、十分容易に—少しだけ気合を入れて読めば—ご理解いただけますので。
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「累積確率分布」の検討に関する解説ウェブ記事の本編では結論のみ紹介し具体的検討内容を割愛した、相対的NPlVの「累積確率分布」の分析について、少し詳しく説明してみましょう。 まずは、浅田選手のケースでの「累積確率分布」の検討を理解していただく前に、サイコロを振る二つの選択肢を持つケースで、「累積確率分布」の考え方、そして「確定的優位(Deterministically Dominant)」と「確率的優位(Stochastically Dominant)」という概念を紹介してみます。 ◇図3の左側のケースを見て下さい。ここでは二つの選択肢PとQがあり、選択肢Pでは、1か2の目が出ると80万円、3か4の目が出ると60万円、5か6の目が出ると60万円もらえるものとします。一方Qの場合は、もらえる金額がそれぞれ50万円、40万円、30万円です。 ◇この場合、皆さんはPとQ、どちらの選択肢を選びますか? ◇面倒な分析などしなくても、賢明な読者の方々は「当然Pだよね。だって、Pのどんなシナリオでも、Qのすべてのシナリオよりも得られる金額が大きいんだから!」と答えますよね。その通りです!そしてこういう状況を、「PはQに対して『確定的優位』」と呼びます。 ◇一応念のため、このケースでの「累積確率分布」を描いてみます。描き方は次のように行います。
◇さて今度は、図3の右側の「選択肢S 対 選択肢T」のケースを考えてみます。
今度はいよいよ浅田選手のケースで累積確率分布の分析をしてみましょう(図4、5参照) ◇ 浅田選手のケースでは金額のかわりに「相対的NPlV」を測定尺度として考えていきます。 ◇まず図4の左側に、二つの選択肢のそれぞれ6つのシナリオでの「相対的NPlV」と「シナリオ確率」を(図2から)再記します。 ◇その上で、累積確率分布を計算するために、図の右側のように、それぞれの選択肢でのシナリオを、NPlVの小さいものから大きい方へと並びかえ、次いで累積確率を計算します。 ◇この並び替えの作業は、図3の場合には必要なかったのですが、浅田選手のケースでは必要になったわけです。 ◇なお、並びかえ作業を行う際、相対的NPlVとシナリオ確率をセットとして並びかえを行うよう、気を付けて下さい。 ◇図4の右側の(相対的NPlV、累積確率)をプロットして、「TA挑戦」と「TA回避」の二つの選択肢の累積確率分布を描いたものが図5です。 ◇これを見ると、かなり近接した部分はあるものの、「TA挑戦」が「TA回避」に対して、(「確定的優位」ではないものの)「確率的優位」であることが明らかであり、浅田選手は、十分な安心感をもって「TA挑戦」を選択すべきであることがわかります。 以上から、今回の検討結果をまとめてみます。 ◇期待値、さらに累積確率分布の分析結果から、想定した前提条件のもとでは、十分な自信をもって「TAをトライすべき」です。 ◇但し、ウェブ本文で指摘した以下の3点について、十分認識しておくことが重要です。
次のステップについても、念のため再掲します。 ◇今回の検討は、私が勝手に想定した状況と確率ですので、私としては、浅田選手と佐藤コーチが以上の検討を参考に、事前に2人で自らディシジョンツリー分析に取り組むことを願います。 ◇その上で、自ら作成したディシジョンツリーのひな型をベースに、オリンピック当日、その時点での確率の読みを使って検討し、決断。 ◇そしていったん決めたら、それまでの分析や複数シナリオの存在など諸々のことは忘れて、「何がなんでも完璧な演技で金メダルを 獲る!必ずできる!」という強い気持ちでフリーの演技に取り組んで頂きたいものだと思います。 ◇つまりは “Good Decision,” then shift to “Committed Execution!”(いったん良い意思決定をしたら、次は勇気と覚悟をもった実行へ!)の精神と “Good Decision and Willingness to Risk a Bad Outcome!”(質の高い意思決定を、望ましくない結果になるリスクを十分認識しつつ、勇気を持って行う!)精神で、 金メダル獲得を実現することを、切に願うものです。 そしてもちろん、浅田選手がどのような選択をしようと、私は全力で浅田選手を応援します! ***********************************************
P.S. ちなみに、このウェブ記事で取り上げているのは、意思決定の本質をカバーしてはいますが、状況としてはかなりシンプルなケースです。
私の通常の仕事—企業での研修やディシジョンラボなどのEdusulting活動—は、皆さんご存知の通り、より複雑な企業の戦略課題での意思決定を対象としており、最近の仕事内容が今回の記事のようなケースになってしまったわけではありませんので、念のため。 (^_^;)
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