「マーケットシェア〇〇%とる」の意味は?(II)。。。不確実性への取り組み方 |
前回の(I)での、「マーケットシェア〇〇%とる」といった数字の意味合いについての議論をまとめると、全体の流れとしては、まず「べき・たい」数字を発想起点として戦略構想を練り上げ、それを具体的戦略代替案に展開し、次にそれを「正直ベースのインテリジェントな主観的確率」の数字を使って定量的リスクリターンの検証を行い戦略案をさらに改善していく、という思考・検討プロセスを進める、ということになります。 そのプロセスを通じて、一貫して「この戦略で、どんな顧客がなぜ喜んでくれるか、なぜ競合に勝てるのか」を徹底的に考え、案を練り上げていくのですが、それでも「正直ベースの主観的確率」すなわち「インテリジェントえいやー」の数字では、「べき・たい数字」でかかげたマーケットシェアや収益性が見通せない場合、つまり「達成できそうにもない」という読みになる場合には、どうしたらよいのでしょうか?(たとえば、今回具体的戦略として打ち出したアクションでは、「べき・たい」数字として設定したマーケットシェア30%には、ハイケースで考えてもはるかに及ばなそうだ、といったケースです。) その場合には、「そもそもこの事業に取り組む意義や必要が本当にあるのか?」、場合によっては「『選択と集中』を進めるなかで、この事業については撤退を考えた方が良いのではないか」、あるいは「最初に設定した『べき・たい数字』を、もっと現実に沿ったものに置き換えた方が良いのではないか」と考えるべきだと思います。。。 何度も言いますが、決して「テキトーに数字をいじくる」ことだけは避けなければなりません。 ちなみに、少し話が横道にそれるかもしれませんが、一般論的にいうと、「マーケットシェア3%」とか「5%」などという事業は、そもそもやる価値がないのではないか?と考えるのも一つの見識ではないかと思います。こんな小さなシェアでは、厳しい競合環境の中で、普通、長期的に安定した利益が見込めないから、ということが出発点として勿論あるのですが、それ以上に、より本質的に、マーケットシェア3%とか5%というのは、そもそも市場がちゃんとつかめていない、ということの証拠ではないかと思うからです。 自社の製品やサービスが、どんな顧客にどのように価値訴求できているか、しようとしているか、またそれが競合に比べて、どこがどう良いのか、がしっかり分かっていれば、たとえば「市場全体の中で、わが社がアプローチしようとしているのは、こういう顧客セグメントであり、それは市場全体の中では10%のニッチなセグメントだが、その市場セグメントの中では、我々のシェアは今現在30%で2位であり、今回の戦略によりそれが50%になることが、これこれこういった理由で見通せる」といった議論が可能なはずだからです。 実は、GEの前のCEOのウェルチさんがかつて打ち出した「#1、#2戦略」というのも、そうした面があり、まずは小さく限定した市場の中でしっかり顧客ニーズをつかみ、そこで#1の地位と利益を確保した上で、次に市場の定義を広げた中での#1を確保する方策を考える、という取り組みを繰り返していく中で、高収益体質を保持しつつ事業拡大をしていく、という側面がありました。 以上、「マーケットシェア〇〇%とる」にちなんでのブログエントリーを展開してきましたが、ぜひ、【戦略構想づくりフェーズでのドライビングフォースとしての「べき・たい数字」】と【戦略構想の具体化作業&定量的リスクリターン分析のフェースでの、経営資源配分をともなう戦略策定と意思決定における「インテリジェントえいやーの正直ベースの数字の読み」】を峻別し、それぞれうまく使い分け活用していって頂ければと願っています。 |
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