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ディシジョンラボ最終発表会にて。。。「立場の異なる協働作業者」と「『顧客へのNPV』のWaterfall & Tornado」

カテゴリー: 仕事関連 2009 年 8 月 19 日 コメント(0)

8月上旬に行われた、あるクライアント企業でのディシジョンラボの最終発表会で感じたことを書いてみます。この企業（A社としておきます）は、もう6年以上にわたって、2階層（部長レベルと課長レベル）でのディシジョンラボのお手伝いをしているクライアントで、最近では、課長層のディシジョンラボの最終発表会で、各テーマごとに出てきていただく事業部長/本部長クラスのオーディエンスの多くがディシジョンラボの卒業生となっており、提案内容、質疑応答のレベルともに着実に上がってきています。

今回も、大変建設的かつ真剣な議論がなされましたが、とくに印象に残ったことを、ここにご紹介します。

A社の事業の大半は「B to B」型、すなわち企業顧客向けのビジネスで、今回取り上げた4テーマもすべて「B to B」型の事業だったのですが、うち2テーマは、とくにA社にとって新しいタイプの事業構想だったこともあり、顧客像を鮮明にし、顧客へのValue Proposition（価値訴求ポイント）を定量的に明確にすることが、戦略策定上、非常に重要でした。

そこでこれらのチームでは、顧客がA社の製品・サービスを使う前（Before）と後（After）で何がどう違って、どう嬉しいかを定性的に明らかにするだけでなく、それら定性的嬉しさが、定量的な収益性（キャッシュフローのNPV=Net Present Value）にどう反映されるかまで突っ込んで検討しました。

具体的には、まず、顧客企業がA社の製品・サービスを導入するために、A社に最初に支払う金額、その後の消耗品・メンテナンスなどの支払金額、顧客サイドで発生する追加経費や投資額、など、キャッシュが出て行く各費目を推定・試算します。次に、これらの見返りとして期待される、顧客企業の事業におけるシェア増大、価格プレミアム増など、収入・利益増につながるキャッシュ項目の推定・試算、さらに顧客企業サイドでのコスト削減や投資低減によるキャッシュフローの改善効果の推定・試算を行います。

もちろんこれらを、顧客がA社の製品・サービスを導入し活用するライフサイクル全体にわたって計算し、キャッシュフローのNPV=Net Present Value、すなわち累積の収益額として集計した形で把握します。

その結果を、チャートの一番左側を出発点とし、まず、一項目づつキャッシュフローが悪くなる項目を右斜め下方向に積み下げて行きます。次に今度は、一項目づつキャッシュフローが良くなる項目を、右斜め上方向に積み上げる形で、図示して行きます。最終的には、いちばん右上の積み上がった位置が、左端の出発点からどこまで上がっているかが、顧客にとっての嬉しさの、「キャッシュフローのNPV増加」での表現になるわけです。

この図は、最終的な形が、左上端から中央に右斜め下に向って滝が流れ落ち、一方、右上端から中央に左斜め下に向かって滝が流れ落ちるような形になるので、「滝」すなわち「Waterfall」チャートと呼ばれています。

Waterfallチャートにより、どの項目がどれだけインパクトがあるかの理解が進み、それにより顧客に提供する価値をどのようにさらに改善するかのアイデアを湧かせたり、また関係者間での、この製品・サービスの事業性理解が進み、さらには、A社からの製品・サービスの導入に慎重な顧客への説得力・納得性が増す、といった様々な効用があります。

今回の2チームは、さらにこの「顧客へのNPV」についてのTornado（トルネード）チャート分析（様々な不確実要因の振れ幅が、それぞれNPVにどれだけのインパクトを与えるかについての感度分析）まで行って、顧客サイドの重要リスク要因の明確化とそれらへの対処策の導出、といったところまでやりました。（Tornadoチャート分析については、このホームページのWorksの「使用するツール例」のコーナーをご参照ください。）

こうして「顧客へのNPV」の確認と改善の検討を行った上で、次に自社の戦略につき複数の選択肢を設定し、それらについてのベースケース分析（Waterfallチャートを含む）やTornadoチャート分析を行って最終提案を練り上げる、という作業を行いました。

以上の突っ込んだ検討結果を提示することにより、提言を受けるオーディエンスである事業部長/本部長たちと受講生たちとの間で、極めて知的レベルの高い建設的ディスカッション、まさに「立場の異なる協働作業者」によるディスカッションが繰り広げられました。これには、オーディエンスのほとんどが、かつてこうした検討に自ら手を動かして取り組んだ、ディシジョンラボ卒業生である、ということも大きく寄与していたと思います。

結果として、この2テーマのみならず全4テーマにつき、ディスカッションの中でなされた様々な助言や注文を生かした上で、さらなる検討の深堀り・実現に進むように、というフィードバックがなされ、私としてもとても嬉しい最終発表会となりました。

いささか自慢めいた書き方になってしまったかもしれませんが、嬉しかったことの報告、ということでご容赦下さい。読者の皆さんには、ディシジョンラボへの継続的な取り組みによる「立場の異なる協働作業者」としての建設的ディスカッションの風土・組織スキル構築のメリットに加え、自社のNPVのみならず、顧客へのNPVについてのWaterfallチャート分析やTornadoチャート分析まで含めた、突っ込んだ検討による、具体的かつ知的レベルの高い建設的ディスカッションの有効性を感じ取っていただき、少しづつでもご自身の仕事の中で生かして行って頂ければと願っています。

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