多様性排除バイアス」vs「多様性強制バイアス」…相互の心遣い、想像力と共感、そして寛容さが大事(2) |
〇1つのカテゴリーで少数派で、そこでの多数派のバイアスに憤っている人がここにいるとしましょう。しかしその人は、ほぼ間違いなく、別のカテゴリーでは多数派で、そこでの少数派に対しては心の底にバイアス(Unconcious Bias)を持っていつつも、日ごろはそれに気づいていないだけかもしれません。 〇従って、Unconcious Biasによる不適切な発言や行動があったら、やんわり(時には少し厳し目に)たしなめて、バイアスを是正する動機づけをすることが大事です。そして、それ以上あまり強く糾弾するのは避けた方が良いと思います。 追加で、もう2点あげておきたいと思います。 〇Unconcious Biasに対して、私が今時点で妥当と思う考えを以上に述べました。しかし伝統的社会通念として非常に多様性排除が根強く残っているカテゴリー(人種や性別/ジェンダー等)については、その弊害が極めて大きく、不利益・不当な扱いを受けている人が多いので、クオータ制など、バイアスを強制排除する制度や施策が当面必要だと思います。こうしたバイアスというのは、生まれ育ちの中で知らず知らずのうちに心の底に植えつけられるものなので、ほぼ完全に払拭され、バイアスを強制排除する必要がない時代になるまで、少なくとも2~3世代の時間経過が必要だと考えられるからです。 〇バイアスの厄介なところは、それが自らのアイデンティティや誇り、また〇〇愛(郷土愛とか、愛校心とか愛社精神etc.etc.)の拠りどころとなっていることです。アイデンティティや誇りといった、カテゴリー分類の持つ良い面は、一つ間違えるとある種の選民意識となり、自分の属するグループ・分類以外の人たちに対する差別意識や優越感につながりかねないからです。(このポイントについては、文末のP.S.1もご参照ください。)
***************************************************** P.S.1 「バイアス」と「アイデンティティ・誇り」の関係性・厄介性について考えさせられた例を一つ挙げておきたいと思います。少し前に「鬼滅の刃」という、当時大ヒット中だったアニメ映画を見たのですが、その中で主人公が何度も「俺は男だ。だからこの苦難を必ず克服してみせる!」という主旨のことを言っていました。 映画を見ながら素直に感動し感情移入していたのですが、鬼に立ち向かう同志である剣士達(「鬼殺隊」というのですが)の中には女性もおり、映画を見終わった後、【よく考えると「俺は男だ!」は不適切で、「自分は誇り高き『鬼殺隊』の剣士だ!」と言うべきではないか】と気づきました。 さらに言うと、鬼に直接立ち向かう剣士としての誇りが「エリート意識」として強くなりすぎると、立ち向かえていない「その他大勢の人たち」への蔑みに転ずる危険性もあるのでは? それはまずいのでは?。。。、でもアイデンティティや誇りは、前向きにものごとに取り組むときの活力のもとになっているので、それを否定することも良くないのではないか?。。。と考えて行くと、そもそもアイデンティティとか誇りといったものをどう位置付けるべきか?。。。、となって収拾がつかなくなりそうだと感じたのです。 今時点の私の暫定的結論は、「アイデンティティ・誇り」と「バイアス」は、表と裏の関係というか、そういう側面があり、どこまで行っても何らかのUnconcious Biasは存在し続けるのではないか。従って、そのマイナス面を、「相互の心遣い・思いやり、想像力と共感、そして寛容さ」でもってミニマムにする努力と心構えを持って臨むしかないのではないか、というものです。 P.S.2 ちなみに「ペットの好み」に関しては、私は完全に「犬派」で、もともと猫はあまり好きではありませんでした。ところが2年ほど前から娘夫婦が黒猫を2匹飼いはじめ、時々2匹の写真を送ってくれたり、娘とZOOMで話しているときに猫が映りこんでくるのを見ているうちに「猫もそう悪くないかも、それなりにかわいいかも」と思えるようになってきました。 今でも基本は犬好きで、「犬派」としてのアイデンティティは持っているのですが、以前ほど猫に対する「好きじゃない」感がなくなってきていて、猫好きの人への共感も持てるようになりました。 どんなカテゴリーについても、自分の属する分類・グループへのアイデンティティや誇りを持ちつつも、この「犬派 and 猫派」くらいの相互許容と共存意識が持てるようになるのが理想ではないかと感じた次第です。 ☆様々な深刻な多様性排除バイアスが世の中に存在する中で、「そもそも『ペットの好み』のような気楽な例と同列に論じるんじゃない!」という叱責を受けそうですが、このコラム全体でお伝えしたかった主旨に免じて、何卒ご容赦ください。 |
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