先日アップした標記タイトルのブログについての補足です。結果想定のデフォルトを「不成功」とすることについて、「それだと『何が何でも成功させるぞ!』という強い意志や粘りが弱くなってしまうのではないか?!」あるいは「『結果想定が不成功なら、成功しなくてモトモトなので、そんなに頑張らなくてもいいや!』というモラルハザードが起きる危険性があるのではないか?!」という懸念が生じるのではないか?という問いが頭に浮かびましたそこで、こうした問いに対する私の考えを以下に記してみたいと思います。ポイントは4つです。まず1つ目は、結果想定のデフォルトを「不成功」としたとしても、提案者・実行者の人達は、もちろん「全力で何が何でも成功させるんだ」という強い気迫と粘りをもって取り組むことが大前提です。但し、これまでとは違って、「一生懸命やりさえすれば、成功以外のシナリオはありえない。うまく行かないのは努力と工夫と粘りが足りないからだ!」という悲壮感を持たずに取り組むだけのことです。2つ目のポイントは、「何が何でも成功させるぞ。その為にできるあらゆる努力と工夫をしよう」という強いパッションを持つ一方で、気持の10~20%は常に冷静な部分があって、「一生懸命にやれば必ず成功させるやり方は見つかるはずだ。しかし一方、『時に利あらず』ということがあるのも現実なので、そういうことが明確になったら=不成功だということがはっきり認識できる状況に到ったら、潔く方向転換したり断念しよう。そしてそれまでのプロセスで学んだことを生かして、また新たなイノベーション創出に取り組もう!」という気持のスペースを持ちつつ取り組む、ということです。3つ目のポイントは、従来のイノベーション / スタートアップ成功物語につきものの「根性論」を排し、自らの自律的意思にもとづき、論理的 / 合理的にイノベーションに取り組むことです。スポーツにたとえれば、昔は「選手たるもの、練習の間は水も飲まず、コーチ / 監督の指示に絶対服従して血ヘドを吐きながら頑張る」というスポ根物語が美化されていました。しかし最近のスポーツ選手は、スポーツ医学やトレーニング理論の最新の成果をとり入れた、より合理的かつ効果・効率的なきたえ方をしています。また、コーチや監督のアドバイスは参考情報として活用するものの、決してうのみにせず自ら考え、自らの判断にもとづいてトレーニングに励んでいます。イノベーションへの取り組みにおいても、「絶対成功するはず」「成功しなければ努力が足りないんだ」と自虐的に悲壮感をもって考えるのでなく、熱血・パッションの中にも、より冷静な部分をもって自律的に考え判断していく、ということです。そして4つ目のポイントは「イノベーションが成功したら、そこではじめて大いに喜ぶ」ではなく、「イノベーションに取り組むプロセス自体を楽しむ」という態度が、むしろイノベーション成功の為の創造性を生むというところです。サッカーのワールドカップを見ても、最近の野球のWBCを見ても、一昔前のスポーツ選手と比べて、明らかに「軽やかに、しなやかに楽しんでいる」様子がみてとれます。(もちろんその背景には、昔の選手達と同様、あるいはそれ以上の歯をくいしばるような、しかし自発的な努力があるのでしょうが。)そうした軽やかな、しなやかな取り組み姿勢がむしろ個別のイノベーションへの取り組みでの成功確率を高めることにつながります。そしてマネジメント的には「不成功」をデフォルトとしつつも、そういう「明るく前向きな強い」組織・企業で、心意気をもった人達がめげずに次々とイノベーションに取り組んでいくことで、全体としてのイノベーションが実現されていくのだと思います。以上、「補足」にしては少し長くなりましたが、「結果想定のデフォルトは『不成功』」への納得感を高めて頂ければ幸いです。
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