先日の(2009年12月5日および9日の)ブログエントリーで取り上げた「事業仕訳」を発想起点として、「建設的事業仕訳ワークショップ」というのを提案したいと思います。先日のブログの内容を要約すると。。。 民主党が行った「事業仕訳」が本来めざした(であろう)、「論拠を明確にし、公開の論議に耐えられる提案を作り、それを実際に公開のもとで議論する」という精神を生かしつつ、「品評会」でも「つるしあげ」でも、「相手を言い負かすだけのディベイト」でも、ましてや企業の中でよくみられる「茶飲み話的座談会」でもなく、より「衆知と衆善の建設的ワークショップ(協働作業の場)」にもっていく努力をしてもらいたい。その際、まさに「衆知と衆善の建設的ワークショップ精神」で作られたディシジョンマネジメントのアプローチ、とりわけビジョンステートメント、フォースフィールドダイアグラム、ディシジョンヒエラルキー、複数の価値判断基準のリストアップ等々が、大いに役立つはず。 。。。といった主旨でしたが、今回提案するのは、この発想を、そっくり、企業の中の各事業や各研究開発テーマに適用してみよう、というもので、「建設的事業仕訳ワークショップ」あるいは「建設的テーマ仕訳ワークショップ」と名付けてみました。 国や自治体の事業と同じく、いやずっとそれ以上に、企業の中の事業やR&Dテーマは、激しい事業環境変化にさらされています。従って常に、これまでのやり方や計画の延長線上で、事業やR&Dテーマをこのまま進めて行って良いのかを検証し、必要に応じて軌道修正、場合によっては中断や撤退も含めて意思決定していく必要があります。そうしなければ、持続可能(Sustainable)な経営は実現できないからです。 そして、持続可能(Sustainable)な経営の実現には、「①継続的な事業/テーマの見直し」に加え、「②それを担う組織・人材の育成・保持」が必要となります。「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」は、この①と②を同時に実現しようというものです。 具体的には、まずトップや経営企画/事業企画/R&D企画メンバーが中心となって、「これまでのやり方や計画の延長線上で進めて行ったのではまずいのではないか」という事業やR&Dテーマをピックアップします。かなりの数に上るはずです。 次に俎上に載せられることになった各事業/R&Dテーマについて、製造・販売・技術といった部門横断的チームを構成して、現行延長/大幅拡大/大幅縮小/撤退といった観点から、思い切った見直しを行います。このとき、先の「②(継続的な事業/テーマの見直しを)担う組織・人材の育成・保持」の観点から、部門横断的チームの組成にあたっては、当該事業/テーマの当事者だけでなく、それとは関係のない仕事に携わっている人たちを、「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」スキル修得の観点からアサインします。場合によっては、こうした作業やチーム組成を、次世代経営者育成プログラムの一環として行うのも、一つの有効なアプローチだと思います。 また、当事者以外のメンバーを入れることは、スキル修得の観点に加え、もう一つ積極的な意味があります。それは、当事者だけだと、ついつい対象事業やテーマのいわゆる業界常識にとらわれがちなのを、部外者による新鮮な視点で突き崩し、より創造的な発想を吹き込むことが狙えるからです。 かなりの数の事業/テーマの見直しになるはずですので、「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」には、それなりの手間と時間・エネルギーが必要となりますが、多くの企業で行っている「中期事業計画策定・見直し」作業の大半を、この「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」で置き換えることで、十分捻出可能、むしろトータル作業量は削減可能と考えられ、一方、得られる果実はずっと大きいはずです。 「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」で想定している作業は、通常のディシジョンマネジメントを活用したディシジョンラボの流れを踏襲することになりますが、念のため記しておくと、次のようなイメージです。 「ビジョンステートメント:何を行うのか、なぜ行うのか、何ができたら成功といえるのか(今回の検討作業についてのものと、対象事業/テーマそのものについてのものの、2Versionを作成)」⇒ 「フォースフィールドダイアグラム:この事業/テーマに関する積極推進理由 vs 否定・反対理由」⇒ 「複数の価値判断尺度の明確化とリストアップ」⇒ 「ディシジョンヒエラルキー(意思決定項目の階層図):検討にあたっての与件確認事項(ポリシーレベルの意思決定項目)、今回の検討・分析対象事項(戦略レベルの意思決定項目)、まだそこまで細目の検討はしなくて良い事項(戦術レベルの意思決定項目)」⇒ 「ストラテジーテーブルによる複数の戦略テーマの設定」⇒ 「インフルエンスダイアグラムによる収益計算ロジックの作成」⇒ 「ベースケース分析による収益ドライバー分析」⇒ 「不確実要因の感度分析によるリスクドライバー分析」⇒ 「複数の価値判断尺度に照らしたトレードオフ表による、各戦略テーマの比較」⇒・・・ なお多少重複になりますが、上記の作業に関して強調しておきたいポイントを二つ: 1.激しい事業環境変化の下、すべての事業やR&Dテーマは、 常に存続の意義を問い直し続けられるべき存在であること 2.(民主党の事業仕訳とは異なり、)事業/テーマ仕訳は、決して中断・撤退や経営資源の削減を一義的目的とすべきでないこと。。。従って、必ず、選択肢の一つとして大幅拡大策を俎上に載せるべきこと さて、こうした「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」のアウトプットは、最終的には全社ないし対象事業分野、あるいは研究開発分野での経営資源配分の意思決定に反映されることになります。従って、「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」は、まさに「事業/R&Dポートフォリオマネジメント」の中核作業といってよいものだと思います。 多くの企業で、「事業/R&Dポートフォリオマネジメント」という言葉が割と気楽に、表層的に使われていますが、本来は、一つ一つの個別の事業やR&Dテーマについて、ここで提案している「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」的なものが高品質でなされていなければ、絵にかいた餅、うわべだけのものになってしまうのです。(「事業/R&Dポートフォリオマネジメント」の考え方やそこでのディシジョンマネジメントを活用した事例などについては、拙著「選択と集中の意思決定」をご参照ください。) 以上、持続可能(Sustainable)な経営の実現に向け、①継続的な事業/テーマの見直し + ②それを担う組織・人材の育成・保持、の一石二鳥を可能とする、「建設的事業/テーマ仕訳ワークショップ」の提案です。ぜひ皆さんの企業や組織でも活用を考えてみてください。ご意見、フィードバックなど、大歓迎です。 今年も残すところあと1日になり、これが今年最後のブログエントリーとなります。5月にホームページとブログを立ち上げた際、ブログに書くことがなくなったらどうしよう、という心配もしていましたが、結構次々に書きたいことが出てくるものだと感じています。 11月、12月は、仕事が立て込んで、頻度が落ちてしまいましたが、逆にそのため、手元にいくつか書きたいトピックがたまってきているので、年明けにそれらを順次アップすべく、頑張っていきたいと思いますので、楽しみに待っていてください。 リーマンショック以来の厳しい経済状況、政権交代による混乱など、大変な状況が続きますが、お互い、「自分(達)にとってavailableな選択肢の中からしか選べない/自分(達)がコントロールできないこと・影響を与えることができないことで悩んでも意味がない」という現実主義をベースとしつつ、困難な状況に、”It’s up to me/us!” & “Have fun!”精神で、前向きに取り組んで行きましょう! 良いお年をお迎えください!
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