明けましておめでとうございます。 一昨年来、厳しい経済状況とか過酷な企業環境とか言われ続けていて、世間も私自身も気持ちが暗くなりがちなので、新年最初のブログは、明るいトーンの話にしたいと思います。 そういった気分でいたせいか、年初に読んだ新聞や雑誌の中で、いくつか元気に取り組む上でのヒントになりそうな言葉が目につきました。。。 【・・・日本の強みは教育にある。企業も技術伝承や人材育成に手間を惜しまない。傑出した起業家が日本に絶えて久しいが、それは必ずしも人材不足を意味しない。日本の本来の競争力は“普通の人”の能力の高さにある・・・】。。。日経新聞朝刊1面「ニッポン復活の10年」 2010年1月3日付 【・・・日本流の高品質や独自性へのこだわりは時に世界市場から敬遠され「ガラパゴス現象」と皮肉られた。ただ世界と進化の波長がそろったとき、深堀の技術は一気に花開く可能性を秘めている・・・・・・「最先端に」には突き詰めた技術と工夫が要る。こなれた技術でとことん安くモノをつくるにも知恵と工夫がいる。企業にも突破型と普及型がある。それぞれが稼ぐモデルを競えばいいのだ・・・】。。。同上、1月4日付 ここから私が感じたのは、以下の3つです。 **************************************** ①「天才的技術者」や「天才的企業家」がいないことを嘆くよりも、「能力の高い普通の人のコラボレーション」に自信を持ってやっていけば良い。。。マスコミの影響もあって、ここ20年ほど、「一点突破の天才的技術者や起業家がいないのが日本の問題なので、そうした人たちを輩出する仕組みや社会を作らなければならない」という強迫観念を日本の企業人の多くがもつようになり、逆にそれが、「平均能力の高いだけで天才のいない日本企業は、規格量産型工業の時代にはうまくやれてきたが、新たな時代には勝っていけない」といった、いらざる自信喪失につながってきた気がします。また「これまでのパターンではダメ」というのが自縄自縛となって、自らの得意パターンを封じ込めることにもなったのだと思います。 もっと、「能力の高い普通の人のコラボレーション」に自信を持ってやっていけば良いのだと思います。考えてみれば、何もないところから天才的技術者も起業家も生まれるはずはなく、多くの「能力の高い普通の人達」がいる中から、ある一定の確率で天才は生まれて来るのですから。コントロールできない「天才創出」に時間とお金をかけ、生み出せないことに落胆するより、コントロールできる「普通の人達の能力の底上げ」に注力する方が(&その中から一定の確率で天才が出てくることを期待する。。。&その時、出てきた天才をつぶさないように組織の仕組みを柔軟にしておく方が)、はるかに意味あることなのです。 別の言葉でいえば、「一人の拍手喝采をあびる天才」を追い求める「英雄待望論」にうつつをぬかすのでなく、「名もなき多くのヒーロー」をつくることに注力する、ということです。アメリカでも、マイクロソフトのビル・ゲーツやアップルのスティーブ・ジョブズなど天才的起業家を輩出する土壌として、数多くの「そこそこ成功起業家」がおり、さらにその何千倍もの「失敗してもめげない起業家」がいるのですから。 平均的日本人の場合いちばん難しいのは「失敗してもめげない起業家」でしょうから、独立起業家ということにこだわらず、「起業家精神を持った企業内事業家や技術者」の能力の底上げを図ることも、十分効果的なアプローチと、肯定的にとらえればよいのだと思います。 ②「一つのキーワードやアプローチで一気にすごい状況に持っていくべし」と考えずに、自社の存在理由である「好きと得意と喜ばれる」を基軸に、一つ一つ個別具体的に地道に取り組んでいけば良い。。。二つ目の記事にあるように、企業ごとに、やることややり方は違っていていいし、違っているべきだということです。マスコミや経営評論家、また業績のいい企業の経営者が語る「これからはこれだ!」といった一つのキーワードをうのみにするのでなく、自社が何が好きか、何が得意か、どんな顧客に喜んでもらいたいかを基軸に、自社ならではの個別解を作っていけば良いのです。 また、企業全体を一つのキーワードだけで引っ張っていけるほど企業や事業は単純ではなく、さらに経営者も自社のすべての事業を細部まで把握できるほど賢いはずもないのですから、素晴らしいキーワード/スローガン一つで企業全体を牽引しよう、といった幻想・妄想にとらわれないことです。 ③マスコミの煽る「英雄待望論」や「青い鳥症候群」に惑わされず、自分で調べ・考え・実行することが重要。。。新聞や雑誌、またテレビやインターネットから得られる情報は、自社の経営や戦略を考える上で貴重なものですが、当然それは、あくまで参考・ヒントであり、うのみにすべきものではありません。ではありますが、最近特に感じるのは、マスコミが成功した企業や経営者を紹介する際、彼らを英雄視しすぎだ、ということです。 あくまで彼らは、それぞれの企業の経営における個別具体解において成果を上げているわけで、そこに何らかの他社にとっても参考になることを抽出するのはよいのですが、決してどの会社にもあてはまる一般解ではないのです。従って、彼らが考え行動したことのすべてが正しく、他社もそうすべきとか、他社はそれができていないから駄目、といったトーンで語られることは危険です。 記者や司会者が「よいしょ」の一環としてそうしたトーンになることは、その場での彼らの役割上いたし方ないのかもしれませんが、取材やインタビューを受けているご本人は、自身の発言の社会的影響力の大きさを考え、「・・・だから日本は・・・」といった十把ひとからげな発言は自戒してもらいたいものだと思います。 **************************************** ③は単なる私の感想ですが、①、②に関しては、「では、どうする?!」を述べてみたいと思います。 まず①については、「普通の人」の持続的能力底上げへの取り組みでしょう。とくに、「無邪気なドンキホーテ精神」が少なく、「KY(=空気が読めないこと)」に敏感な人が多いために、「失敗してもめげない独立起業家」の数が圧倒的に少ない現状では、企業人に、「企業内起業家」としての素養を身につけさせることだと思います。 とりわけ、マーケティング、戦略思考、財務といったビジネス・リテラシーの基礎知識学習、そして実務を通じてそれらを総合的に使いこなす機会の提供が重要です。我田引水気味かもしれませんが、後者において、私が提唱しているディシジョンマネジメントの思考体系とディシジョンラボのアプローチを活用すれば、効果はさらに高まると考えます。 一方②については、現場と経営の双方の視点を持ちうる立場のミドルを活用した、A.戦略アジェンダ(戦略課題リスト)設定と、それに引き続くB.個別戦略課題ごとの戦略策定・意思決定・実行、に着実に取り組むことだと思います。。。これらについても、私がディシジョンラボを通じて提唱し、実際に様々なクライアントでサポートしていることとつながります。 ⇒ということで、「では、どうする?!」については、読者の方々には「結局、落ちはそれか?!」と感じられたかもしれませんが、ディシジョンマネジメントをディシジョンラボを通じて世の中に提供・提唱し、それによって企業人・組織人の意思決定力向上に寄与することを自らのミッションと考え・信じている私の書くブログ、ということでご容赦ください。 最後は多少我田引水になりましたが、「今年を&今後を明るく切り開く」ためのヒントとして活用して頂ければ幸いです。 P.S. ちなみに、少し脱線しますが、「日本をこれからどうするか、日本としてどのような成長戦略を描くべきか、政治がそうしたビジョンを示さないことが問題だ」といった論調がみられますが、上の文脈でいうと、「そんなことはもともと無理」と考えるべきなのです。 「英雄待望論」を排して「能力の高い普通の人達のコラボレーション」をベースに考え、「一つのキーワードやアプローチで一気にすごい状況に持っていく」のではなく、「個別具体的に地道に取り組んでいく」のであれば、政治にそんなことを期待するのでなく、ぜいぜい日本という国の【「好き」と「得意」と「喜ばれる」】は何かについての最大公約数的なものを設定し、あとは「普通の人」の能力の底上げのための教育に力を注ぎ、その人たちの自立的行動を邪魔しないようにする(たとえば、企業の実効税率をグローバル競争を阻害しないレベルまで引き下げるetc)ことくらいを、政治や政府の役割と考えるのが妥当なところではないでしょうか。
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