今回の「若者自立塾」を題材として【5】 では、検討ステップ③から考えていきます。 ③分析・評価と結果の共有化: ②の「フレーミングと選択肢の設定」のディシジョンボード・ミーティング(DBM2)でディシジョンボードから受けた指示に沿って、プロジェクトチームは作業を進めます。具体的には、DBM2での指摘を受けて、フレーム(課題のとらえ方)と選択肢についての修正を行った上で、レベルアップされた複数の選択肢を、これまた修正された複数の価値判断尺度に照らして測定・評価を進めます。 その際、②の作業の中で明らかにされた様々な重要不確実要因に関する知見を収集し、それに基づいて、振れ幅を持った不確実性のアセスメント(。。。Base/High/Lowという3つの代表シナリオでの)を行い、それらを反映させた分析・測定・評価を行うようにします。 価値判断尺度についていえば、その中にはお金で測定できるものもあれば、そうでないものもありますし、定量評価できるものもあれば、定性評価のみ、という項目もあると思います。 こうした不確実性も踏まえた評価・分析結果を「トレードオフ表」にまとめて、ディシジョンボード・ミーティング(DBM3)で、ディシジョンボード・メンバーに提示するわけです。 「トレードオフ表」というのは、横軸に選択肢を並べ、縦軸に価値判断尺度を並べ、各選択肢の各価値判断尺度に照らした評価・分析結果を、定量的ないし定性的に書き記した表です。 全ての価値判断尺度に照らしてベスト、という選択肢が見出されれば、迷うことなくその案を採択すればよいのですが、そうなることは稀有です。たいていの場合、どの価値判断尺度を重視するかによって、最適な選択肢が変わってくる、すなわち「あちら立てれば、こちた立たず」関係が出てくる、ということから、「トレードオフ表」と呼んでいるわけです。 さてDBM3では、プロジェクトチームから提示された、「トレードオフ表」を含むここまでの評価・分析結果を受けて、それに対する質疑応答を行って、ディシジョンボードとしての理解を深めます。その上で、この場で結論が出せるならば、結論出し⇒意思決定⇒実行の指示、という流れとなります。 ただ、このブログの説明では、このDBM3で、さらに追加の選択肢の検討の指示や、不確実要因についての情報の質の強化の指示、といったことがなされると想定し、もう一回、④の「意思決定と実行の指示」のためのDBM4が開催される、という想定で、次の④についての説明をしていきいます。 ④意思決定と実行の指示: DBM3でのディシジョンボードからの指示に従って行った追加検討結果を、プロジェクトチームからディシジョンボードに提示し、そこで「最終結論出し⇒意思決定⇒実行の指示」がなされる、というのがDBM4です。 その際、最後は価値判断尺度間のトレードオフ判断に悩みつつ、「うーん」と唸って決めることになります。まさにここで、「哲学的な意味での価値観」が問われるわけで、そこに政治家・政党が「日本をどんな国にしたいか」というビジョンや価値観を発揮・発信して行ってもらえば良いのだと思います。 もちろん、ここでのディシジョンボード・メンバーは、あくまで当該事業・・・「若者自立塾」の場合でいえば、前回での想定のように多少フレームが広がったとしても、「ニートの若者の自立サポート事業」・・・に限った「個別事業ディシジョンボード」の範囲での結論です。 つまり、このフレームの中では「この選択肢で行きましょう!」となっても、たとえば「ニートの若者の自立支援にこれだけのお金を使うよりは、ニートでなく職に就けないでいる若者の就職支援事業の方にもっとお金を使う方が良いのではないのか?」といった、いわゆる「事業ポートフォリオ」的な経営資源配分の優先順位付け、という判断が、この後の、より上位の、多分閣僚レベルのディシジョンボード、つまり「事業ポートフォリオ・ディシジョンボード」の意思決定として行われる可能性は十分あると思います。 さはさりながら、企業の場合でも同じなのですが、事業ポートフォリオの経営資源配分の優先順位付けの意思決定をHigh Qualityで行うには、まずは、個別事業に関する意思決定とそのための検討の質が高いことが必須なのです。 以上、①から④まで、4つのステップの中身について考えてきましたが、企業の場合も同様ですが、ディシジョンボード・ミーティング(DBM)を必ず4回やる必要はもちろんありません。また全部公開でショー的にやらずとも、そもそも、省庁側のもともとの検討内容自体を、上記のプロセスの考え方や、次回以降、たたき台として紹介する様々なディシジョンマネジメント(DM)のツール・コンセプトを活用することで、大幅なレベルアップを図る、という形で活用してもらってもよいと思います。 なお、もちろん言うまでもないことですが、ここまでの考えや次回以降述べること全てについて、これらはあくまでも政治や省庁の仕事にはまったく素人の、基本的に企業の戦略策定・意思決定サポートのプロである私からの、参考意見・アイデアとして、心ある方々に活用していってもらえれば幸甚、というスタンスで書いていること、という前提で見ていただきたいと思います。 さて、次回のブログでは、いよいよ、①の建設的な「事業構想と論点洗い出し」のディシジョンボードミーティング(DBM1)を経て、プロジェクトチームが作った、②の「フレーミングと選択肢の設定」のDBM2の冒頭で説明する「検討たたき台資料(のトライアル版)」を提示したいと思います。
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