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最近薦められて、浅田次郎の｢蒼穹の昴（そうきゅうのすばる）｣、｢中原の虹（ちゅうげんのにじ）｣を読んでいます。中国の清末を描いた、ほぼ連続ものとして読める本で、司馬遼太郎の歴史小説的な格調高さはありませんが、とても面白く興味深く読み進んでいます。今、｢中原の虹｣の２巻目を読み終えたところなので、読中独語なのですが、筋の流れとはあまり関係なく、印象に残った言葉を2～3、軽いブログ記事として紹介してみたいと思います。

① ｢・・・悪い奴は、世の中の病だと思うんだ。だからそいつらをやっつける軍人になるのも病気をやっつけるお医者になるのも、同じなんだと思ったの・・・｣

⇒本のストーリー展開とは多分関係ない、私の感じたこと：　たしかにそう！　軍人（or警察）が悪人を根絶やしにできないのと同じく、医者が病気を根絶することはできない。また、悪人も病気も、人間の本性に根差したことなので、そもそも人間存在がある限り、なくなることは、ほぼ原理的にありえない。しかしだからといって悪人と病気を少なくすることをあきらめるべきではない。永遠に終わることがない努力であることを認識しつつも、努力を永遠に続けることが尊い。

 

②｢・・・一国の将来を担う若者たちの面倒を見ることは・・・矜（ほこり）であり強いられたものではなくこれが天職だと思えた。むろん向き不向きという意味での天職ではなく、天から賜ったおのれの使命である・・・｣

⇒これを語る登場人物が言っているように、こういう｢天職｣の自覚を持てる人は幸せなんだと思います。私自身は（少し口はばったいですが）、｢意思決定思考にもとづく衆知の結集による、人々の『幸せ度(Net Pleasure Value)』向上への貢献」が自分の天職だと思っています。

 

③「・・・何ひとつとして虚飾がなかった・・・嘘は決してつかない・・・そして苦労話は口にせず、楽しい記憶ばかりを語った。考えてみれば、日本人の・・・会話のほとんだは愚痴なのだった。さほどつらくないことでも、つらいことと脚色して互いの連帯を深めるのが、日本の・・・習慣だった・・・」

⇒たしかに、日本人の連帯の深め方として、「こんな私に誰がした」の不幸感・被害者意識の共有、というのはありますね。日本人の私としては、第一歩としてはこれも悪くないとも思うのですが、一度それが済んだら、やはりポジティブにものごとをとらえた方が良いですね。

この間テレビで、ニーチェの「ツァラトゥストゥラ」の解説番組をやっていて、その中で、「ルサンチマン（憎しみ・恨み・妬み・卑下）とニヒリズム（虚無主義）を克服し、『永遠回帰』の思想により『超人』を目指す」というのがありましたが、③の言葉は、それと軌を一にするものだと思いました。

ちなみに、『永遠回帰』の思想というのは、おのれの人生を、不幸なことをも含めて、永遠に寸分たがわず繰り返し生きていくことを、喜びを持って覚悟し生き切るという、人生をポジティブに全面肯定する考え方で、それによってルサンチマンやニヒリズムを乗り越えて、新たな高いレベルの人間存在である『超人』を目指そう、というものです。。。番組の解説の受け売りですが。

つらいこと・悲しいこと・残念なことを、全て受け止めたうえでポジティブに生きていく・・・簡単なことではありませんが、是非ともそれを目指したいですね。