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読後独語：「貧乏人の経済学　～もういちど貧困問題を根っこから考える～」を読んで。。。抽象的な「大問題」を論ずるより、具体的な問題とその個別の答えを考える方がずっと役に立つ！

カテゴリー: エッセイ・論説, 日常雑感・プライベート 2012 年 9 月 12 日 コメント(0)

ついさっき、「貧乏人の経済学　～もういちど貧困問題を根っこから考える～」（A.V.バナジー、E.デュフロ著）という本を読み終えました。かなり小さな字でぎっしり書いてあり、内容も浅くないので、けっこう時間がかかりましたが、印象深い考え方に共鳴したので、皆さんに共有しようと思い立ちました。以下に抜粋してみます。

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・・・・・貧困に対する闘いがあまりに巨大だという気持ちを抑えて、貧困対策という課題を具体的な問題の束としてとらえ、それをきちんと見極めて理解すれば、一つづつ解決していける・・・もっとも声の大きい専門家たちの多くは、「大問題」にばかりかまけています・・・・・

・・・・・これは抽象的に解決できる議論ではありません。証拠がいります。・・・いろいろもっともらしい小話はいくらでもあるし、どんな立場でも、それを支持する話が一つは見つかるでしょう・・・単に大規模に憶測をしているだけなのです・・・・・

・・・・・でも援助の肯定論にも否定論にもまともな証拠がなければ、どうしたらいいのでしょう・・・実は、答えはちゃんとあるのです—–というか、本書すべてが一種の長ったらしい答えです—–単に・・・白黒明確な大なたではないだけなのです・・・・・

・・・・・いずれにしても、外国援助が役に立つのか、といったでかい問題に答えることが、ときに思われがちなほど重要かどうかも、実ははっきりしません・・・・・

・・・・・もっと重要な点は、援助がいいか悪いかという果てしない論争のおかげで、本当に重要な話がしばしばおざなりになってしまっていることです・・・お金がどこからくるかではなく、どこに向かうかが重要なのです。つまり、お金を出すべき適切なプロジェクトを選ぶということです—–貧しい人の食事か、高齢者の年金か、はたまた病人のためのクリニックか？—–そしてそれを運用する最高の方法を見つけることです。例えば、クリニックに職員を配置して運営するやり方は、実に多種多様なのですから・・・・・

・・・・・外国援助全般についてあれこれ考えるよりも、具体的な問題とその個別の答えを考える方がずっと役に立ちます・・・広い一般論の質問から、ずっとせまい質問に移行することで・・・・・

・・・・・こうした理屈抜きの性急さに無力感を覚えてきた人々も多いのです・・・いつの日か貧困を終わらせるために一番見込みがあるのは、個々の回答とその背景にある理解から出てくる、知識体系なのです・・・・・

・・・・・でも本書のメッセージは、貧困の罠をはるかに超えるものです。これから見るように、専門家、援助関係者、あるいは地元政策立案者のイデオロギーideology、無知ignorance、惰性inertia—三つのIが、政策の失敗や援助の低効果の原因となっています。世界をよくすることは可能です—たぶん明日には無理でも、手の届く未来には。でもそれには、ずぼらな思考ではダメです。本書を通じて、わたしたちの辛抱強い一歩ずつのアプローチこそが貧困と闘う方法として効果的なだけでなく、世界をずっとおもしろい場所にする方法なのだ、ということを納得して頂ければと思います・・・・・

・・・・・本書で何度も何度も見た通り。細部がモノを言うのです・・・・・

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この本は、貧困問題についての著作ですが、著者達も言っているように、「抽象的すぎる議論からは実体として役に立つ解決策は何も導かれない」ことは、あらゆる「大問題」に—–昨今の原発の是非をめぐるエネルギー問題やTPPなども含めて—–当てはまると思います。

また、著者の二人はインド出身とフランス出身で、現在アメリカで活躍する経済学者ですが、「抽象的すぎる議論からは実体として役に立つ解決策は何も導かれない」症候群は、日本において、より症状が重いのではないかと思います。

地べたをはうようなオペレーションをきちんと行う一方、それより少し抽象度の高い戦略課題に対しては、急に抽象度が上がりすぎた、不毛の「戦略っぽい&哲学的っぽい茶飲み話と精神論的断言」に舞い上がる傾向が強いように思います。

私が著者達の論旨に感銘を受けたのは、多分ディシジョンマネジメントの考え方と通底するからでもあると思います。

つまり、つまりこの著作における「貧困問題」に相当する、企業での、「環境戦略」とか「グローバル戦略」といった—–私の言葉でいえば「光の当て方テーマ」の—–認識にとどまらず、それをchewableな—–噛んで取り組むことのできる具体的な—–戦略課題のリスト、即ち戦略アジェンダにブレークダウンし、各個別課題ごとに切り込んでいく、

そして、ディシジョンヒエラルキーで、検討の与件条件を確認し、どのレベルの意思決定項目まで踏み込めば解決策として意味あるレベルの解が出るか—–逆に言うと、どこから先はまだ決めなくてもいいか—–の判断を行うことで、的確な抽象度レベルの検討を行う、という発想とアプローチです。。。一言でいえば的確なフレーミングを行う、ということですね！

 

以上、読後独語でした。皆さんの、課題への取り組み方や考え方の参考になれば幸いです。

 

 

 

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