少し前の新聞のコラム記事に、大垣共立銀行の土屋嶢頭取の書いた、次のような文章が載っていました。曰く: **************************************** 頭の固い「銀行員」ではなく、顧客本位で動く「サービス業の従事者」として仕事に取り組んでほしい—–こんな思いを込め、行員たちの意識改革を促す人事・研修制度を導入している・・・・・ 頭取が若手の行員と直接に討議する“模擬役員会”の「ボード・オブ・ジュニア・オフィサーズ(BJO)も10年以上前から続けている。20、30歳代の10人程度を公募で選び、1年間、同じメンバーで毎月1回、議論する。最初に年間のテーマを与え、1年間かけて仕上げていく。地域活性化の新しいプロジェクトなどがここで生まれた。 メンバーには本物の常務会を傍聴させ、経営の幹部は何を考え、どんなプロセスを経て意思決定しているのかを見せている。上から指示された通りに動く行員ばかりでは激動の金融界で生き残っていけない。経営陣の考え方を理解した上で、自分なりの考えを持ち、主体的に動く行員が育ってきたと実感している。 **************************************** 似たような事例を前に見たことがある気もしますが、やはり立派ですね! (僭越ながら)私的には何が素晴らしいと思ったかというと、とくに以下の2点です。 1.「自分なりの考えを持ち、主体的に動く行員が育ってきた」 2.「メンバーには本物の常務会を傍聴させ、経営の幹部は何を考え、どんなプロセスを経て意思決定しているのかを見せている」 【1.「自分なりの考えを持ち、主体的に動く行員が育ってきた」】 についていうと、いかに優れたリーダーであろうと、現場の隅々に四六時中張り付いて指導できるわけはないので、こうした「顧客本位の発想で、主体的に考え、行動する」組織成員が多ければ多いほど優れた組織体になる、ということですね。 ディシジョンマネジメント的に言うと、「顧客へのValue Proposition(価値訴求ポイント)」発想と「It’s up to me/us!」精神の涵養、ということになります。 【2.「メンバーには本物の常務会を傍聴させ、経営の幹部は何を考え、どんなプロセスを経て意思決定しているのかを見せている」】 については、これを実行するには常務会での質疑応答そのものが、かなりレベルの高いものであることが前提だと思います。経営陣といっても生身の人間ですから、時には迷ったり、また部下に見せたくない弱さなどが出ることもあろうかと思うのですが、それをあえて見せるだけの自信があるのでしょう。間違っても、前にブログで書いた「サラリーマンネオ・シンドローム」的な恥ずかしい状況ではない、ということです。 逆に言うと、今は「サラリーマンネオ・シンドローム」的な状況が ままある企業で、あえて若手幹部候補生に常務会や役員会を傍聴させることで、もっともっと「締まった・緊張感ある」建設的ディスカッションができるようになるのではないかと思いました。 できれば、一通りの会議が終わった後、若手の人たちに「◇◇の時の質問や判断は素晴らしいと感じたのですが、常日頃どんなことを勉強したり経験したり、またどんな発想の仕方をしていると、ああいう発言ができるようになるのでしょうか?」といった質問をさせて、経営陣の発想や判断基準をより深く学ばせると良いと思います。 さらに言えば、「何故あの時〇〇という発言をしたんですか? 私だったら☆☆という発想や判断になると思うのですが。。。」といった、建設的懐疑心にもとづく質問やコメント・助言をさせると、若手にとってのみならず、経営陣にとっても、サラリーマンネオ・シンドロームに陥らないために極めて有効だと思います。 そして、こうした活動を継続して行けば、「一方的主張と難癖付け」や「完成品品評会とExperienced Commentator(経験にもとづいて賢げなコメントはするが、意思決定者としての判断はしない、という症候群)」といった症状が克服でき、「立場の異なる協働作業者によるワークショップ」という良き企業風土が形成されていくのだと思います。 以上、やはりディシジョンマネジメントの考え方につながってしまいましたが、読者の皆さんの企業・組織でも、早速少しづつでも取り組まれることをお勧めしたいと思います。
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