このタイトルのブログの第3回目です。今回も、この問題意識にひっかかってきた記事からの引用と、それに対する私のコメントを(「⇒」以下に)記します。(ブログにアップするのが遅くなり、引用記事が少し古くなってしまいましたあが、継続的な強い問題意識からの追加投稿ということで、ご容赦下さい。)・日経ビジネス誌 2023年1月30日号 [繰り返される「多様性なき調和」の悲劇 五輪汚した「普通の人々」 権威への服従が醜態招く]…崇高な理念を掲げた国家的イベントを地に落としたのは権威に弱い、どこにでもいる「普通の人々」だ。不正に手を染めた疑いのある現場と、現場の不正を防げなかった組織委の理事会の双方に、権威に異を唱えられぬ悲しき人々の姿があった。…理事会の出席者によると、開会時に「本日は2時間後の午後3時から記者団へのブリーフィングがあります」などと伝えられた。ブリーフィングが始まる時刻までに閉会することを意識させられ、審議に時間をかける雰囲気はなかったという。たまに意見が出たとしても、「引き続き厳しく経費の精査に努めていただきたい」「パラリンピアンなどが意見を言える場を設定してほしい」といった無難なものばかりで、誰も議案の是非を問うことはなかったようだ。政治家や経営者、元官僚、元アスリート、文化人など多彩な背景を持つ理事が30人以上そろっていたにもかかわらず、自分の経験や知識を議案に反映しようとする者はいなかったと言っていい。…理事会の実態は、ただの追認機関だったと言える。…報告が全部済むと、理事らによる意見交換の時間となる。職務執行状況に不満があれば、ここで表明できたはずだ。だが、この頃になると、もう記者ブリーフィングまで5分ぐらいしか残っていないことも少なくなかった。ある元理事は、「意味ある意見交換はほとんどなされなかったと私は認識している」と振り返る。…理事の多くが自己主張を控え、存在感を消していた。…多くの企業にとって対岸の火事ではない。組織委の理事会のように、追認機関に成り下がっている取締役会が少なくないのが実情だ。…名ばかりの意思決定機関は、決議の作法も変えねばならないだろう。そうした会議体では、議長が「ご意義ありませんか?」と問うて決議をとることが多い。すかさず理事や取締役の一部が「異議なし!」と叫んで承認可決する。意思決定方法としては一般的であり、組織委の理事会も例外ではなかった。…このような会議体は、歌舞伎と一緒ではないだろうか。歌舞伎では役者が見えを切った時などに、観客が「成田屋!」「12代目!」などと叫ぶならわしとなっている。歌舞伎独特の様式美を崩さないためにも、掛け声は屋号や代数などに限られることが事実上決まっている。…同様に、原案に対して「異議なし!」と叫ぶことが決まっているような意思決定プロセスは、芝居に等しい。そうした体質の会議体に名を連ねる社会的地位の高そうな人々は、舞台の見栄えを良くするための役者だとの指摘は厳しすぎるだろうか。逆に役者としての立場をわきまえずに、「意義あり!」などと、筋書きにないことを口にすると、それは会議を仕切る議長への挑戦になる。…「私なら、相手がどんなに偉くても立ち向かえる」と思っているのであれば、それは幻想かもしれない。いざというときには、権威に服従してしまうのがヒトの性(さが)だからだ。…紳士服大手AOKIホールディングス(HD)の元幹部らの裁判。組織委の理事だった高橋治之被告に賄賂を支払ったとされる出版大手KADOKAWAなど5社のうち、先陣を切る形での初公判だ。贈賄罪に問われたAOKIHD元会長、青木拡憲被告の傍らに、84歳の青木氏よりずっと若い男性の姿があった。上田雄久被告、41歳。…青木氏の要望を高橋氏にたびたび伝えていたのが上田氏である。上田氏は青木氏から「100万円払っているんだから、(高橋氏に)ダメ元で何でもお願いしてみろ」などと命じられていた。上田氏は内心で「五輪という公正・中立な立場で、当社だけが有利な取り計らいを受けることは許されない」と後ろめたさを感じていたが、青木氏に対して「依頼をやめるべきだ」と進言する勇気はなかった。…「権威への服従」という構図があちらこちらで散見される。…正しくないと分かっていても権威に服従してしまう背景には、「不服従の姿勢をとれば報復を受ける」との恐怖心がありそうだ。「『会社を追われるのではないか』『業界内で問題児とみられ、再就職できずに家族を路頭に迷わすのではないか』といった恐ろしさが伴う」…東京五輪の基本コンセプトには、「多様性と調和」という項目がある。そこには次の一文が記されている。世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。現実には、多様な意見を容認せず、権威への服従による調和を目指す「多様性なき調和」が社会にはびこっていることを示す大会であった。⇒「ああ無情/ 悲惨(レ・ミゼラブル)」、「情けなさすぎる」というのが率直な感想です。「権威に服従してしまうのがヒトの性(さが)だからだ」は、確かにそうなのかもしれませんが、その指摘をしているだけで、解の方向や光を示さない記事では(内容や構成の仕方は、記事編集としてはうまいと思うものの)、読者をがっかりさせるというか無力感に落とすだけで、何の建設的意味もありません。「やっぱりヒトの性だから仕方がない」「自分はこういうはめにならないよう幸運を祈ろう」と考えてしまって、それで終わりです。私としての解の方向は、何度もブログ等で発信している、意思決定場面での「突込みファシリテーターチーム」(進化系は「突込みAIアイちゃん」)です。最初にこのコンセプトを提案したブログ記事のurlを貼っておきます。:[勇気とリスペクトと思いやりを持った「本気の突込み」で建設的なワークショップを実行すれば、大半の問題は解決できる!?!]重要な意思決定場面で発言者の発言に突込みを入れ、衆知破壊的発言(パワハラ/ モラハラ/ セクハラ等)を修正・改善させる、また意味不明発言への質問と、それを通じた発言者の思考の明晰化をサポートする「突込み」、をする為のファシリテーターチームをリアルないし(匿名化した)リモートで参加させることです。この場合、権威に服従しがちな人の性(さが)を考えて、権威者の”鈴つけ”をするファシリテーターチームは、その会議なりワークショップの権威者から事前に、「全面的に遠慮会釈・忖度のないファシリテーション」を許容する旨の確約がとれていることが前提です。できれば、「権威者」が自ら突込みファシリテーション・ワークショップを仕掛け、かつ実際に「突込み」を受けたときにきちんと言動の修正・改善・明確化を行うことが肝要です。真剣かつ社員の意欲・能力を信頼するトップであれば「突込まれ」の覚悟をもった上で、この考えに賛同するはずです。もし読者の皆さんが、「うちのトップや上層部はそんな度量はないから無理!」と思うのであれば、まずは自分がトップである会議なりワークショップで試みを開始し、やり方のノウハウを蓄積しつつ、徐々に組織の横(同僚レベル)への展開、1段上・2段上の上司を巻き込む縦の展開…とやって行けばよいと思います。このステップバイステップのアプローチより「不服従の姿勢をとれば報復を受ける」という恐怖を回避することができると思います。なお、また話が飛躍しますが、日本人が諸外国の人達よりも、この恐怖心が強いということであれば、前にも書きましたが、もしかすると日本国民全体に対しての「ベーシックインカム」の導入も有効かもしれません。ベーシックインカムの実際面の運用の難しさや、デメリットも言われていますので、気楽に導入を考えるべきではないとは思いますが、きちんと物申すことに対する恐怖心を和らげる、という点からは、解決の方向性の一つとして一考の価値があるような気がします。(別のブログ記事で紹介した米国ベンチャー企業の「$70000給与保証」のように、ベーシックインカム的なやり方を個別企業の中でトライするのも有効かもしれません。)最後、少し話がそれ気味になりましたが、ぜひ「突込みファシリテーターチーム」の導入・試行をご検討下さい!
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