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「経営感覚を持った、匠と志とホスピタリティ」人材のマザー工場（継続的輩出基地）。。。｢日本の目指すべき方向｣についての仮説的着想

カテゴリー: エッセイ・論説 2010 年 5 月 16 日 コメント(0)

最近、｢日本の目指すべき方向｣といったことについて、いろいろな人が発言・発信しているように感じます。元来私は、ここまで発展している国において今さら、誰であろうと、大上段に振りかぶって｢日本の目指すべき方向｣などと言うことには、｢それぞれの人間が、それぞれ好きなように好きなことを目指せば良いんだから、日本全体の目指すべき方向なんて、放っといてくれ！　何さまのつもりだ！｣のスタンスです。

しかし、ここ1～2週間、いろいろな人達の発言を見聞きしていて、私にも仮説レベルの着想が湧いてきたので、私としては全く｢らしくない｣ながら、ちょっとここに書いてみようかと思います。まず着想のトリガーになった、いくつかの発言をランダムに列挙してみます。（面倒なので、出典などは省きます。）

○｢・・・働く時間を楽しめる日本人にしか、最先端のモノ作りはできない・・・そして他国で日本人の特質を持つ例外的な存在が、トップ研究者たち・・・｣　（大阪大学　石黒教授）

○｢・・・日本ではモノが作れない環境になってしまっています。高い法人税率をはじめ、労働基準法も厳しくなり・・・私の母校（現・職業能力開発総合大学校）までいらないと言っています。20億円程度の赤字が出ているようですが、『そこの卒業生4人が設立した会社が何百億円もの税金を納めていますよ』と言いたいですね。あの学校は技能者を養成しています。一般の大学では担えない役割があります・・・日本は農耕民族です・・・苦しい時は収入は減るが、その代わり社員をクビにしない永久雇用の原則が日本企業の強みだったのです・・・永久雇用だから仕事に集中でき、休日出勤や徹夜も厭わず仕事に全力投球できました・・・｣　（日本電産　永守社長）

○｢・・・課題を自分で何とかしようと、若いうちから考えさせられた人材が多い企業は、潜在的な成長力が高い・・・失敗も含めて過程を見守らなければいけません。そして、十分に努力をしたうえでの失敗ならば、その経験は必ず生きてきます・・・利益は大切ですが、利益を上げるための過程を認識することが大切です・・・生産のグローバル化のために国内工場は、技術だけにとどまってはいられない。これからは世界で活躍できる若手社員を育てる『人材のマザー工場』への変質を求められている・・・｣　（神戸製鋼所　重河副社長、佐藤社長）

○｢・・・でっかい仕事に挑もう　時間を忘れて取り組め・・・｣　（デンソー　深谷会長）

○｢・・・坂本龍馬が大変な人気を呼んでいます・・・志を持って夢を追いかける。そうした生き方に共感する人が多いからではないでしょうか・・・｣　（大和ハウス工業　樋口会長）

○｢・・・農業に『経営感覚』を取り入れるべき・・・｣　（2003年設立の、農産物の生産、販売などを行う　ナチュラルアート　創業者　鈴木氏）

 

かなり強引ですが、以上から私が得た、仮説的着想を述べてみます。

 

①「匠を育て、匠を尊ぶ社会」を目指してはどうか：　格好良く言えば「匠」、砕けて言えば「打ち込み、こだわりぬく職人」という感じです。別に「モノづくり」に限定する必要はないと思います。米国に10年以上住んでみて、またいくつかの国を訪れてみて、サービス産業（たとえば、飲食店や銀行など）の現場の普通の人達のサービスレベルの高さにおいても、日本のレベルは群を抜いて高いように思うからです。

そして、モノ作りでもサービスでも、提供するモノやサービスの質の高さを追及するとき、必ずしも「その方が儲かるから」という損得勘定がベースにあるのではなく、「ともかく、こだわって、そうしたい。そうしないと気がすまない」という気質があるように思います。そして、このことを堂々と「自分たちの美質だ」と胸を張って言えるような社会風土の確立を目指せばよいのではないかと思うのです。

 

②「匠 が競争優位を持つような産業やビジネスモデルが、生きていきやすい社会・経済制度」を目指してはどうか：　クビになることの心配をせずに、匠や職人的技磨きや、そのスキルの発揮に没頭できるよう、長期雇用も含めて、そうした仕組み・基盤を大切にする企業にとって有利な社会・経済制度があっても良いように思います。ただし、国や自治体政府自らが、どのような産業が「匠が競争優位を持つような産業なのか」を決めたり誘導する必要はないし、またそうすべきではないと思います。。。それを最初から見越して設定できるほど賢い人は、どこにもいないと思うからです。

 

③ただし「最低限の経営感覚」は全員に身につけさせるような、広い意味での教育・学習の制度・仕組みを整えることが重要ではないか：　上の引用文にも少し出ていますが、私は、「匠」に加えて、「志」と「ホスピタリティ（博愛的親切心）」も大事だと感じています。

この3つが、日本という国を特徴づけるもの、という状況を目指すのが良いと思うのですが、そこにやはり、最低限の経営感覚が必要です。龍馬にしても、志に加えて、「日本を守るのに、今の国力でむやみに外国と戦っても勝ち目はない。だからこそ、友好裡に彼らから優れたものを導入すべき」という極めて現実的な経営感覚にもとづく判断をしているわけです。これなくしては、「匠と志とホスピタリティ」が、単なる「オタクとドンキホーテとお人好し」　になってしまうからです。

 

 

ということで、きわめて雑駁な論の立て方ですが、今日はいつもの私らしくないながらあえて、「日本が目指すべき方向性」の仮説レベルの着想として、「経営感覚を持った、匠と志とホスピタリティ」人材のマザー工場（継続的輩出基地）を提唱したいと思います。皆さんからのコメント・フィードバックなどを楽しみにしています。

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