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今年の4月初めに、娘に会いがてらロンドンに1週間ほど行ってきました。その時娘から聞いた話がきっかけで考えたことを書いてみます。私の娘はアメリカの大学を卒業後日本に 戻り、日本の会社で4年ほど働いた後、今年の1月からロンドンの会社に転職したのですが、娘が言うには、これまで働いていた日本の会社に比べて、部下が上司に驚くほど率 直に、というかずいぶん遠慮なくものを言うカルチャーなのだそうです。

たとえばディスカッションで上司が提案したアイデアに対し、部下がずけずけと「それはナンセンス」的な発言をする、とのことです。それに対し上司は怒ったり意見を押し 付けたりせず、反対理由を聞いて納得すればそれで終わり、あとに感情的しこりは全く残らない、ということです。かといって部下が上司をバカにしている訳では全くなく、 お互いに実力を認めあい尊敬しあっている様子がよくわかるらしいのです。

私の娘はアメリカで8才から22才までを過ごしているため、私から見るとあまり「日本人的」でない部分も多いのですが、その娘でも今の職場での「遠慮しないコミュニケーシ ョン」のスタイルをそのまま取るには「自分は日本人的すぎる」のだそうです。

娘の観点がどの程度当たっているかは別としてこれを聞いて考えさせられたのは、私も含め、日本の会社や日本での人と人との付き合い方における「遠慮」です。反省をこめ て言えば、私自身は「尊敬はするが遠慮はしない」には、なかなかなっていない気がします。むしろ遠慮のために率直に自分の思いを伝えられず、結局それがフラストレーションの原因 になっていることが多いと思います。

さらにその気持ちの底を見ると、相手や自分への尊敬が足りないのではないかとも思います。どういうことかというと、「これをストレートに言うと相手を傷つけてしまう かも」という慮（おもんぱか）りの背景には、「このことで傷つく程度の人物」とみなす、相手の人物レベルへの低い評価がある可能性があるのです。また「これを言うと『 お前ごときにそんなことを言われる筋合いはない』と言い返されるのではないか」の心理には、「自分はこの相手から尊敬される価値のある人物ではないのではないか」という自分への評 価の低さが隠れている気がするのです。

結局、「相手と自分を尊敬しないことによる遠慮」が生じているのではないかと思ったわけです。できれば、相手と自分へのこうした「尊敬のない心理・態度」を払拭し、「 尊敬はしても遠慮はしない」コミュニケーションを心がけたいものです。

ちょっと小耳にはさんだことから、少し飛躍しすぎかもしれませんが、今後は「『遠慮はするが尊敬はしない』から『十分尊敬（/信頼/尊重）をするがゆえに遠慮はしない』へ」を心が けつつ対人コミュニケーションに取り組んでいこうと思った次第です。