前回のブログで、リスクマネジメントに関する二つの視点として、「クライシスマネジメントとガバナンス」と「投資家視点でのファイナンスアプローチ」を説明しましたが、今回は、私がもっとも大事だと思う三つ目の視点としての、「事業家(=ビジネス・リーダー)視点での戦略的取り組み」について書いて行きたいと思います。 「事業家視点」というのは、前回の最後で説明した「投資家視点」のまさに正反対の次の3つの視点です。: ❶個別事業の中身そのものとその成功に強い興味を持っている。。。金銭的リターンは必要だし大きくするための取り組みは大いにするが、金銭的リターンそのものを目的とは考えない ❷個別事業の個別の(多くの)不確実要因の中身について知る立場にあり、それらについてもっと良く知ろうとする意欲を持っている ❸対象事業・企業のより大きな成功に向けて、具体的選択肢を考え出す立場にあり、それに対して強い意欲を持っている そして、この「事業家視点のリスクマネジメント」に取り組む時の強力なサポート手段がディシジョンマネジメントです。即ち、対象事業の成功に強い意欲を持ち、そのための【複数の選択肢を衆知を集めて必死に案出し、多くの個別具体的不確実要因のもとでのそれらの選択肢のリスクリターンを見極めたうえで意思決定を行い、チームとして実行に取り組む】ための思考体系やプロセスを提供するのです。 多角化した企業のトップマネジメントをみると、自身が長く担当した事業については事業家視点をもつものの、それ以外の事業については同じだけの知識と興味と意欲を持つことはハナから無理とあきらめてしまって、とたんに投資家視点のファイナンスアプローチになる傾向が見られます。 例をあげると、多くの日本企業は、高度成長期の高収益に浮かれての「いけいけどんどん」が行きすぎて突然バブル崩壊に至った時、一挙に事業リストラをするために、投資家アプローチを使いました。。。それぞれの事業について、事業家アプローチで個別具体的な検討をしていては時間的に間に合わないということから、当時は必要悪として致し方なかったと思いますし、それなりの有効性はありました。 しかし、そうした緊急対応時期が終わったら、きちんと事業家視点での取り組みに戻すことが必要なのです。さもないと、個別事業の性格の違いを顧慮せず、全社・全事業 一律の財務指標を無理やりあてはめて資源配分や意思決定を行うことになり、結局、十分な投資ができなくてチャンスを失う事業が出てくることにもなりかねないのです。 基本は、どんなに多角化しても、一つの企業体の中では、事業家視点での判断が大事だといういことです。。。またトップは、「自分はコーポレート側の人間として、『投資家の立場』から、社内各カンパニーにリターン増大をせっついたり、リスクの発生を責め立てるのが役目」などという、官僚ならぬ民僚的スタッフの跋扈を許してはならないのです。。。「投資家」なら、会社の外にはプロがいっぱいいて、どの会社に投資しようかと鵜の目鷹の目で活動しているのですから、社内の人間は誰であっても、個別事業への強い興味と意欲を愛情を持つべきなのです。 また長くなってしまいましたが、今回は2回にわたって、リスクマネジメントの三つの視点:「クライシスマネジメントとガバナンス」、「投資家視点でのファイナンスアプローチ」、「事業家視点での腕まくりの戦略的取り組み」について論じました。そして読者の皆さんには、是非この3番目の「事業家視点での腕まくりの戦略的取り組み」を行い、そこでディシジョンマネジメントを大いに活用して頂きたいと願っています。
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