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時には｢こんな私に誰がした！｣も有効。。。理不尽に対する、正当なる｢心の声｣に耳を傾けるために

カテゴリー: エッセイ・論説 2010 年 12 月 18 日 コメント(0)

意思決定の近接分野として、時々、行動経済学とか心理学関連の本で面白そうなのが書評などにあると読んでみるのですが、最近読んだ泉谷閑二さんという精神医学の先生の本に面白い考え方が述べられていたので、ちょっと紹介してみます。。。「『普通がいい』という病」というタイトルの本で、以下、あくまで私なりの解釈での要約です。：

①人間の精神・肉体の仕組みを、「頭（＝理性の場）」と、「心（=感情・欲求・感覚の場）=身体（からだ）」と理解し、must/should的な発想をする｢頭｣が、一心同体である｢心=身体｣をコントロールするようになっている。そして｢心｣の方は「頭」とは違ってwant/like的な発想をする。

②頭と心の間には開閉するフタがあって、本来、頭は心の声に耳を傾けつつ頭の論理に従って身体に指令を下すが、時にフタを閉めてしまって心の声に耳を傾けないと、心は頭の支配に対して反逆を始め、その反逆も通じなくなると、一心同体である｢身体｣が動かなくなる。。。こうした理解をすると、うつ病などの様々な症状が極めて有効に説明できるし、それに基づく治療が（この先生の経験では）実際に役立っている。

③こうした症状は、とくに、いわゆる意志力が強く規範意識の強い人、つまり頭のshould/mustのコントロール力でフタを強く閉めっぱなしにする人に現れやすく、このフタを適度に開閉するできるようにすることが大事。

④そのためには、まず長いことフタをされて｢心｣の中に閉じ込められている自然な感情を解放することが重要。

⑤その際、表出してくる感情は、喜怒哀楽のうち、（この先生の臨床経験では）まずは｢怒｣、次いで｢哀｣、そして｢喜｣、｢楽｣という順番。｢怒｣や｢哀｣が出てこないと、心は順調には働かず、従って、｢喜｣や｢楽｣に至るためには、まずは、通常ネガティブと分類される｢怒｣や｢哀｣を解放させることが必要。

⑥ただし、この｢怒｣や｢哀｣の解放・表出を無秩序にやると、社会生活・社会規範上の問題を起こすので、そのあたりをうまくできるようにする必要がある。

⑦人間の成熟とは、そして泉谷先生の患者の治療過程では、a.生まれたばかりの頃の無垢な｢心｣が、b.次第にshould/mustの｢頭｣によっていったんがんじがらめになり窒息寸前になった状態から、c.本来の自分にいったん純化した上で、さらにd.社会生活や規範に適応できるように一種の｢アダプター｣を身にまとうようになる、つまりrebornする（脱皮し生まれ変わる）。

。。。私は日ごろの研修の中で｢ビジネス・ロジカル人生相談｣のグループワークをファシリテートする際、｢自分にとっての嬉しさ、Net Pleasure Valueを考える際、『こうあらねばならない』というような発想ではなく、自分が本当に何が・どういう状況が嬉しいのか、自分の本音がどこにあるのか、是非、心の声に耳を傾けるようにしてください！｣と言っていました。この本を読んでみて、私のいつも言っていることが泉谷先生の考えに相通じるものがあると、意を強くしました。

さてここで、私がいつも受講生の方々に言っている、｢困難な状況に直面した時、ともすると『こんな私に誰がした！』と思いがちだが、それでは未来への明るい展望は開けてこないので、是非とも”It’s up to me/us!”精神で立ち向かってください。」という文言が頭に浮かんできました。

どういうことかというと、泉谷理論に沿って考えれば、「こんな私に誰がした！」と思わなければやってられない、という状況では、無理やり”It’s up to me/us!”精神で、とやっても効果は無く、まずは、「こんな私に誰がした！」という｢怒｣や｢哀｣を解放して「心」にいったん力を取り戻させて、しかる後にふつふつと出てきやすくなった｢喜｣や｢楽｣の感情を味方にして、”It’s up to me/us!”精神で問題解決に力強く取り組んで行く、というアプローチが大事ではないかということです。

これも私がいつも”It’s up to me/us!”精神とワンセットで言っている、”Have fun!”精神も、こういう形で泉谷理論とつなげて考えると良いのではないかと思った次第です。

とくに会社の中では、「社会の非常識」が「会社の常識」になっていたり、ありえない数値目標を上から押し付けられても文句を言わず従わなければならない・逆らってはならない、という理不尽なこともあり、その状況の中で「この会社の中で生きて行く以上、会社の掟に従わねばならない」と強制する「頭」の命令に、「心」が極めて健全に悲鳴を上げる、という状況も実はそれほど珍しくないわけです。

この場合には、まずは「こんな私に誰がした。こんなのやってらんないよ、ふざけんな！」という、「心」の素直な「怒」や「哀」を、一人で愚痴ってみたり身近な信頼のおける相手に吐露したりして、まずはガス抜きをすることが有効です。。。ちなみに、当然のことながら「信頼できる相手」というのは重要で、下手な相手に対してこれをやってしまうと、組織に対する反逆者・不従順者とみなされる恐れがあるからです。

私自身はは、これまでこうしたガス抜きが必要と感じた時には、極めて安易な方法として、酒を飲む、そして「こんなのやってられるか」感を解放し、そして翌朝には少し元気を取り戻して、”It’s up to me!”とやっていたのですが、今までは自分が弱いから必要となる逃げの方策と位置付けており、研修でもその文脈で語っていました。

しかし泉谷理論を読んで、このやり方が大いに正当化された感じがし、これからはもう少しポジティブにこれを語って行こうかな、と思い始めました。。。ちなみにガス抜き方法は人それぞれで、「アルコール法」は私にたまたま合った方法にすぎません。また酒の度を過ごしてしまうと、ガス抜き効果より、あらぬことを口走ったり、翌朝二日酔いになるなど、副作用の方が大きくなるので要注意です、念のため！

。。。ということで、長くなってしまいましたが、泉谷理論を踏まえて、

【困難な状況において】。。。。。【Not:  「こんな私に誰がした」　 ⇒　 But: ”It’s up to me/us!”】

をバージョンアップして、これからは、

【困難な状況において】。。。。。【Not　Only:  「こんな私に誰がした」　 ⇒　 But Also: ”It’s up to me/us!”】

で行こうかな、と思い始めました。

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