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本当に【官僚たちはいまだに「由らしむべし知らしむべからず」】なのか？

カテゴリー: エッセイ・論説 2011 年 2 月 13 日 コメント(0)

少し前の日経ビジネスに、田原総一郎さんの「日本復活へ選択肢示せ」というインタビューコラムが載っていました。日本を破綻の淵から救うためには、政府が増税の明確な根拠を示すべきで、たとえば「年金支給額を、生活するのに十分な金額、例えば月額20万円にするには、消費税額を何％上乗せする必要があるのか、18万円なら何％か、・・・」といったデータをきっちり示して国民に選択させるべし、という主旨の主張で、これ自体はまっとうな主張だと思いました。

それに対する記者からの「役所は（データを）出しますか？」という質問に対して、次のような話を紹介していました。曰く：【長妻昭・前厚生労働相が言っていました。試算を出せと言っても、厚労省の役人は絶対に出さなかったそうです。官僚たちはいまだに「由らしむべし知らしむべからず」なのです。】

これを読んだ時、私の頭には二つの可能性が浮かびました。①やはり悪名高い中央官庁の役人は、これほどまでにひどいのか？！　OR　②長妻さんが「厚労省の役人は悪で、自分は正義の味方として乗り込んで行って、やっつけてやる」式のアプローチをあまりに露骨にとったがゆえに強い反発を受けサボタージュで仕返しをされたのでは？！

多分、事実は①と②が混ざったものではないかと推測します。官僚に限らず、民間組織においても、部下から信頼されない上司には、正確な情報が上がってこないことはいくらでもありますし、自分たちを信頼していない上司からの命令には、少なからずサボタージュ（多くの場合、うまくカモフラージュするのは当然ですが）することも珍しくないわけで、こうした性悪な部分が表面に現れず、性善な部分が表出するように組織をマネージするのが、組織の長の役割であり、鼎の軽重を問われる部分なのです。

その点では、（多分にお気の毒な面はあるものの）やはり長妻さんの組織マネージ力不足は「残念」と言われても仕方がないのだろうと思います。私の昨年4月からの大阪府のスタッフの人たちとのコラボレーション作業や雑談を通じての感想から言っても、相手が官僚であっても、基本的に性賢・性善の人達で（もちろん100%性賢・性善の人はいないのであって、どこの民間企業にも見られる程度の性愚・性悪の部分はあるものの）、互いにそれを前提として本音で議論すれば信頼感は醸成できるのではないかと思います。

当然、私のようなアドバイザーの立場と、長妻さんのようにいきなり上司・権力者で行った場合では、信頼感醸成の難しさのレベルが格段に違うのは間違いありません。

しかし、私が見聞きしたいくつかのM&A事例では、M&Aで突然外部から来たトップが被買収サイドの企業の人たちとの間で信頼感醸成ができるかどうか、ひいてはそのM&Aがうまくいくか否かは、まずは買収側企業から来たトップその人の「能力＋信頼感醸成に向けた本音の議論＋それらを行うプロセスにおける人間味のある態度」に大きく左右されていましたから、今回の件についての私の観察・コメントは、そう間違っていないのではないかと思います。

ということで今回の私の主張は、「相手を悪と決め付けることからは何も生まれない。信頼感醸成のための努力・態度により、互いの性賢・性善が表に出てくるようにすることが重要」ということです。

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