【未来の可能性を最大化する】ディシジョンマインド社は研修やセミナーを通してみなさんの経営戦略に必要な意思決定力の向上を支援する会社です

「無趣味のすすめ」の読後独語の続きです。

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○【品格と美学について・・・・・品格や美学があれば仕事が成功するというわけでもないし、法やモラルの順守は美学や品格とは何の関係もない。昨今のメディアはどうして品格や美学など曖昧な概念が好きなのだろうか。・・・・・仕事に美学や品格を持ち込む人は、よほどの特権を持っているか、よほどのバカか、どちらかだ。問題は品格や美学などではなく、Money以外の価値を社会および個人が具体的に発見できるかどうかだと思う・・・・・】。。。品格とか美学などと言っている暇があったら、それぞれの人の価値判断基準に基づいて、Net Pleasure Value を最大化すべく、きちんと仕事のDecision とExecution に取り組んでいくべし、ということですね。

○【リーダーの役割・・・・・わたしはリーダーの「資質」などどうでもいいと思う。・・・・・リーダーは、「どこに問題があるのか」「何をすればいいのか」わかっている人でなければならない。・・・・・相変わらずリーダーの資質が話題になることが多いのは、近代化という大きな共通のゴールがあった時代の名残だろう。何をすればいいかが社会全体で共有されていたから、単に資質を語るのが好まれていたのだ。・・・・・どう変えるのか、そのために何をするのか、優先順位はどうなっているのか、そういった具体的なことを言わないリーダーは信頼できない。】。。。資質について語るよりも、戦略アジェンダ（重要戦略課題のリスト）を作り、各課題への取り組み方を検討し、優先順位を考慮した資源配分と実行に取り組めるかどうかだけが問われるのだ、ということです。資質について論じている暇があったら、さっさとこうした作業に実際に取り組むべし、ですね。

○【部下は「掌握」すべきものなのか・・・・・部下をどう叱ればいいのかわからない上司が増えているらしい。だが、わたしはそのテーマ自体に違和感を持ち、・・・・・いっしょに仕事をする上で、どうして「叱る」という行為が必要になるのか、わからなかったからだ。仕事のやり方がわからないのなら「叱ったりしないで」教えればいいし、やり方がわかっているのにやらないのなら、代えるか、または辞めてもらえばいい、・・・・・どうやって部下を一人前に育てるか、そんなことを真剣に悩んでいる上司がいることも信じられない。やるべき価値のある仕事を共にやっていれば何か特別なことをしなくても、つまりことさらに何かを教えなくても、人間は自然に成長する。問題は、部下との接し方などではない。取り組んでいる仕事が本当にやるべき価値があるのか、そのことを確認して、その価値を共有することの方がはるかに重要である。】。。。だいたい小学校の先生と生徒でもないのに、社会人同士で、たとえ経験・スキルの差があったにしろ、一方の人が他の人を「叱る」、という「上から目線」（。。。ちょっとはやり言葉を使ってみました）の感覚が、私にもわかりません。「叱る」という言葉は、子供が社会的ルールを破ったことに対して大人が叱る、というような文脈で使うべき言葉であり、社会人同士でもし本当に社会的ルールを破るような行為があれば、それは「叱る」以前に「No Deal」関係になってしまう性質のものだと思います。

○【決断する力・・・・・ビジネスに必要な決断力をどうすれば養うことができるのか、という精神論的な設問には意味がない。最優先事項を把握していれば、何を捨てて何を選ぶかはすぐにわかる。】。。。確かにこんな抽象的な精神論をやっている暇があったら、実際に目の前の課題に関しての選択肢を考え選び取る作業をやっていけばよいのです。そしてその作業・経験の中から決断力なるものが培われていくのです。ただし「最優先事項を把握していれば」というのが、実はそんなに簡単ではないわけで、そこに対してはディシジョンマネジメントは大いに役立てると思っています。

○【ワークライフバランス・・・・・ワークつまり仕事と、ライフすなわち生活を分けて考えるというのが、わからない。・・・・・仕事というのは、生活の一部であって、かつ生活全体をを経済的に支え、充足感によってその人の精神を支える、というようなものではないだろうか。・・・・・「仕事と生活のバランス」どころか、仕事がなくなり、生活が破壊されるのではないかという不安が日本中に広がりつつある。ワークライフバランスなどと口にする前に、自分にとって、より人間らしい生活、より良い生活とは具体的にどういうものか、必死で考えるほうが先決ではないだろうか。】。。。私も前から、「ワークライフバランス」なんて言ってる人たちはずいぶん心理的・経済的に余裕があるんだな、という少々皮肉めいた感覚を持っていました。ワーク＆ライフに一生懸命取り組む中で、自分自身（⇒その中には家族やまわりの人達の幸せを嬉しいと思う自分も含めて）のNet Pleasure Value を最大化する時間の使い方をしていくだけのことで、事あらためてワークライフバランスをどうしようなどという問いのたて方自体が無意味に思えるのです。

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以上の個々の論点に共感すると同時に、これらに共通して指摘されている問題提起は、「世の多くの人は上っ面の問題のとらえ方や議論が好きで、したがって、こういう問題のとらえ方が世間受けするが、そんなことの議論にうつつをぬかす暇があるなら、やるべきことに地味に着実に力強く取り組むべし」ということです。まさに私が常々感じているからそう思ったのかもしれませんが、これが事の本質だと思います。

ディシジョンマネジメント的にいえば、「課題のフレーミングが間違っている」ということになります。要は、「意味のない設問をめぐって、上っ面の議論をだらだらと茶飲み話的に行う」ことの愚です。その茶飲み話を、いかにも深遠な哲学的議論を行っていると錯覚し、心地よくそれに酔っている、ということになります。「もういいかげんに、茶飲み話にうつつを抜かすのはやめて、実務のことにちゃんと取り組みましょうよ！」ということです。最近はやっている「茶飲み話」の例を語りだすと長くなるので、今回はここまでにしますが、読者の方で「フレーミングの間違った、従って表層的茶飲み話」に心当たりのある方があれば、ぜひフィードバックを下さい。次はそのテーマについての、「まっとうなフレーミング」について、このブログで取り上げられればと願っています。

P.S. 1　ちなみに村上龍という作家には、これまであまり興味がなく、またテレビでの話し方などから受ける「戦闘的」雰囲気から、「できれば平和に」主義の私とは、思考的に通じるところはなさそうに思っていました。それだけに、今回「無趣味のすすめ」を読んだことは、意外にも、この作家と私の思考・発想に、どこかで底流に相通じるところがあるんだな、という新たな発見にもなりました。

P.S.2　今、「無趣味のすすめ」の、アマゾンに載っている、読者からの書評を読んで驚きました。書評のリストの最初の方に載っているのは、どれもかなり否定的なものです。「よくわかってもいないことを偉そうに書きやがって」という論調でした。確かにそういう面もあるかもしれませんが、私は「何か新たな知識を学ぶ」という目的で読む本以外は、自分が普段何となく感じたり考えていることに、はっきりとした概念や言葉を与えてくれたり、それを補強する情報を得たり、逆に普段考えていることの弱点指摘や反証になる叙述・情報をピックアップして、自説を明確化・修正することが基本的な目的になっているように思うので、あまり気になりませんでした。第一、自分の意見と違うことについての反発をあれだけ熱心に書く情熱に、そして書いている自分に酔っているんじゃないかと推定される心理に、妙に感心してしまいました。。。と書きましたが、今後のこのブログの中での「読後独語」がそんな感じにならないよう、自戒を持っていきたいとも思いました。