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「社会的選択理論」に触発された、新たな選挙制度の just an idea。。。【ゲーム理論で考える政治・経済　『民意』の絶対視にも問題】という日経新聞 経済教室の記事を読んで

カテゴリー: エッセイ・論説 2012 年 8 月 20 日 コメント(0)

8月16日の日経新聞 経済教室に、慶応義塾大学准教授の坂井豊貴さんという方の【ゲーム理論で考える政治・経済　『民意』の絶対視にも問題】という記事が載っていました。ここで紹介された「政策競争と多数決」についての社会的選択理論の考察を興味深く読み、そこから触発されて、普段私がぼんやり問題意識をもっていた、今の選挙の仕組みの改革アイデアについて考えてみました。

まずは以下に、私が興味深く思った記事の論点を抜粋してみます。

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①・・・・・中位とは、「どちらの端から票の和を数えても半数に達する」点のことだ・・・・・一つのテーマが争点となるとき、二大政党が政策競争をする多数決選挙は、民意をうまくとらえる制度として働く。そしてこうした状況下で、両党とも中位政策を掲げることを「中位投票者定理」という・・・・・

選挙に勝つことを重視する政党には、政策を中位方向に動かすインセンティブ（誘因）が強く働くことを示している。二大政党の政策が似てくるのはこのためである・・・・・民意をとらえるという基準からみるならば、両政党が中位に近い政策を選択するのは決して悪いことではない・・・・・

 

②・・・・・民意をうまくとらえるということは、有権者が正しい情報を持たない場合や、持っていてもひどく利己的な場合には、当然ながら不適切な選択がなされてしまうことを意味する。例えば歳出削減だけで財政再建が可能という意見がいかに不正確でも、これを情報として信じる有権者が一定数いる場合、そちらの方向へ中位政策は動く。ひどく利己的というのは、将来世代へ過度の支出を要求することや、自分の世代は逃げ切れるから問題を先送りしようということが該当する。実際、選挙権を持たない若年者や将来世代は、現在の有権者からの利他的配慮を通じてしか政治に影響を与えることはできない・・・・・

政治家、特に衆議院議員は失業の恐れが強い職業である。聞こえのよいスローガンを唱える者が人気を集める中で、嫌われる正論を掲げることのハードルは極めて高い。中位投票者定理は、中位政策が仮におかしなものであってさえも、そこに政策を寄せていかなければ選挙に勝てないことを鮮明な形で表している・・・・・

 

③・・・・・一方、争点が多数のときは分析が難しく、中位投票者定理についても、そのままでは成り立たないことが知られている。ここではオストロゴルスキーのパラドックス（逆説）について紹介する・・・・・このパラドックスは政党を選択する間接選挙が論理的に内包する一つの難点を明らかにしており、争点が多数の場合にはテーマごとに直接選挙をした方がよい可能性を示している。

例えば財政、外交、原発の３つのテーマが争点になっている選挙を考える。有権者は5人いて、政党は２つ存在している。有権者1は財政では政党A、外交では政党A、原発では政党Bの政策を支持するものとする（表参照）。有権者1は財政と外交と原発を等しく重要なテーマだと考えており、トータルでは政党Aを支持する。同様に他の有権者の個別テーマと政党の支持の状況については表の通りとする。

ここで政党について多数決をとれば、Aが3票を得て勝利する。一方、テーマごとに多数決をとれば、財政も外交も原発もBが3票を得て勝利することになる。間接選挙と直接選挙では結果が大きく異なるわけである。

 

④社会的選択理論ではオストロゴルスキーによるもののみならず、意思集計に関わる様々なパラドックスが発見されている。意思集計方法の性能に理論的限界がある以上、民意の概念は常に確かなものではない。そしてまた、民意が確たるものであってさえ、それに左右されるべきでない正義判断の領域は存在する。有権者が個々の利害関心のみならず、社会における共通の必要とは何かを考えることが重要だ・・・・・

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③の表自体はここに示すことができませんが、概ね主旨はお分かり頂けたと思います。大変刺激的な論考ですよね。

この知的刺激を受けて、新たな選挙の仕組みについて、just an ideaですが（一部妄想的に）考えてみました。

 

〇③のような状況を避けるため、直接選挙の要素をもっと増やしてはどうでしょうか？！。。。今の各政党の政策を見ていて、これとこれはA党の主張が良いんだけど、これについてはA党の主張はいただけないな。むしろそっちについてはB党の方がいいと思う、ということがかなりあるからです。

〇そもそも間接選挙は、直接選挙では多人数の意見を集約することが物理的に不可能、ということからの必然だと思いますので、これだけ情報技術が発達してきている今日では、見直すべきなのではないかと思います。

〇ただし、直接選挙に当たっては、的確なフレーミングと、十分な幅を持って実行可能な複数の選択肢の設定が必要になります。どういうことかというと、例えば。。。

〇関連ある争点については、個別に直接投票すると、整合性の取れない選択が結果としてなされる恐れが大きいので、ストラテジーテーブル的な発想で、複数争点でのオプションのつなぎ合わせで、整合性ある複数の選択肢を設定する必要があります。。。整合性の取れない選択とは、たとえば、増税はせずに、福祉関連予算をどんどん増やす、といった財政的に破綻をきたす選択のことです。

〇今の例のようにならぬよう、整合性ある複数の選択肢を設定するには、当然、健全な良識をもった人たちがそれに携わることが必要です。そうしないと、財政的に成立しえないオプションのつなぎ合わせの選択肢が設定される危険性があるからです。

〇ひょっとすると、将来の国会議員は、こうした健全な判断力と良識を持って、国民に直接選挙に値するフレーミングと選択肢の提示をする人たち、になるのではないかと思います。

〇この将来の国会議員の役割イメージは、知的作業の質・量・幅を格段にレベルアップした選挙管理委員会のイメージに近いような気がします。

〇もし、こういうイメージの国会議員/選挙管理委員会が的確なフレームと選択肢を用意し、それに対して国民が直接選挙をするようになれば、政治のコストもずっと小さくなり、かつ国としての意思決定の質とスピードも大いにアップグレードされるのではないかと思います。

 

。。。私の知識ではこの程度のアイデアしか考えられませんが、社会的選択理論の学者や心ある政治家などが、こうしたことについての大胆かつ実行可能な提言を、是非ともしてもらいたいものだと、切に願う次第です。

 

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