【未来の可能性を最大化する】ディシジョンマインド社は研修やセミナーを通してみなさんの経営戦略に必要な意思決定力の向上を支援する会社です

「自動怒りマシーン」体制を打破し、社員が創造力を発揮しながら、衆知錬成ができる経営を目指そう！（1）

カテゴリー: エッセイ・論説 2018 年 5 月 1 日 コメント(0)

先日、あるビジネス誌に「社員（アナタ）の賞味期限－増える『歳だけ重ね人材』」というタイトルの記事が載っていました。
AIの登場で、社員（特にホワイトカラー）の仕事の多くが、これから急速にAIに取って変わられる、という文脈の記事でした。


私の独断的解釈が入っているかもしれませんが、主旨は以下の通りです。

*******************************************
・現在の（ホワイトカラー）社員の仕事は大きく「マックジョブ」と「クリエイティブジョブ」の2つに分けられる

マックジョブ：仕事内容をマニュアル化出来るような定型的な業務
語源は、業務のマニュアル化の徹底で、極めて効率的かつ定型的なオペレーションを成し遂げ、それにより、かつて高成長と高利益を成し遂げた、ファーストフード業界のマクドナルド社に由来

クリエイティブジョブ：非定型な創造性の高い仕事
⇒最近読んだ「AI vs 教科書が読めない子供たち」（新井紀子・著：AIが東大入試を目指す、という「東ロボ君」プロジェクトを主導した方です）の内容に即して解釈すれば、クリエイティブジョブとは、AIが不得意とする「文脈を理解し、人間ならではのフレーム再設定や過去の事例にない物事を生み出す仕事」と言って良いでしょう。
ちなみに同著によれば、（少なくとも現在のディープラーニングなどの）AIは、文章の内容や文脈は理解せず、与えられたフレームの中で、膨大なデータ（ビッグデータ）から「統計的に当たりそうな答え」を導き出すだけのことです。

・現在の社員の大半は、マックジョブが得意な人材(＝マックジョブ型人材)で、クリエイティブジョブが得意な人材(＝クリエイティブジョブ型人材)は極めて少ない

・そして、マックジョブ型人材をクリエイティブジョブ型人材に再教育・転換するのは極めて難しい

・少なからぬ数の、先進的企業（記事の中でいくつか紹介されています）の経営者は、既にこのことに気づいており、この状況に対処する為、生え抜き社員を差し置いて、経営の枢要なポジションに外部人材を積極的に登用し始めている

・この社会トレンドにおいて、記事が提唱する、大半の「マックジョブ型人材」への処方箋は2つ

①クリエイティブジョブ型人材が不得意とする、組織や他人の管理の仕事、つまり社交性を生かして、一言で言うと「ゴマすりの能力」を生かして、ひたすら出世階級を駆け登り、早急に、現場を統括する「上位管理者ポジション」にたどりついてしまうこと

②ニッチなスキルを生かした、誇りある「高級マック」を目指すこと

⇒経営側からすると、ニッチな業務はデータも少ないので、AI化がペイしない領域。ここでのマックジョブなら、誇りを持った「高級マック」として生き残れるはず、とのことです。
*******************************************


まことに不穏当かつ不適切な論調だと思いませんか!?


まず、人を「マックジョブ型人材」と「クリエイティブジョブ型人材」に分けてしまって、「マックジョブ型人材」の「クリエイティブジョブ型人材」への転換・再教育は、ほぼ無理と決めつけているのが許せません。

通常の人は、マックジョブでもクリエイティブジョブでも、両方に対応できる能力を持っています。。。現にこの記事が載った号の別の記事では、ごく普通の人達が衆知を結集して新たな取り組みに挑戦し、成果を上げている事例が複数紹介されていました。

にもかかわらず、経営層がマックジョブ的な仕事の仕方をさせているから、社員はクリエイティブな部分を押し殺して、あるいは発揮できずに、マックジョブ型人材に甘んじているだけなのです。

その原因は、上層部の仕事内容や組織運営の仕方が、「自動怒りマシーン」化していることであり、それによって大半の社員は、非定型・クリエイティブな仕事に取り組む時間的・精神的余裕が持てなくなっていることにあります。

「自動怒りマシーン」というのは私の造語ですが、次のような仕組み・状況を指します。

• まず経営層は、株主を満足させる様々な業績指標についての数値目標を設定。。。その時、数値目標だけだと格好がつかないので、時代受けする美しいスローガンとともに提示します。


• それを管理部門が、各部門に対する数値目標として、ブレークダウン


• 割り振られた各部門は、必死に数値目標達成に奮闘努力
  ⇒ギリギリと締め上げられている中では、今までのやり方(＝マックジョブ)の延長の中で、ガンバリズムに集中
  ⇒非定型的なクリエイティブなことに取り組む余裕なし！


• 四半期毎に、目標数値を管理部門がチェックし、経営層は、達成されていれば褒め(=インセンティブ：ボーナス増、昇進、賞賛の声掛け・儀式等)、達成されていなければ怒り(＝ペナルティ：ボーナス減、減給、降格、人としての尊厳を傷つける叱責の言葉等)


• しかし、各部門に対して役に立つ助言やサポートは、ほとんど行わない


• こういう経営の実態を「自動怒りマシーン」と呼んでいます。
  
  この仕組みの中で、記事が勧めている「上位管理者を目指せ」というのは、出来るだけ上手く立ち回って、他人を蹴落とし、「自動怒りマシーン」体制の中での「怒り役」にたどりついて、甘い汁を扱えるポジションを推奨していることに他なりません。
  
  
  あまりにも志が低い発想と言わざるを得ません。
  
  
  私に言わせれば、そもそも「自動怒りマシーン」人材こそ、AIに取って変わられるべき存在なのです。もっとも、自動怒りマシーン人材の発言程度なら、AIなどと言わず、ごくごく簡単なソフトウェアで置き換え可能でしょう！
  
  「少なからぬ先進的企業の経営者が、クリエイティブジョブ型人材獲得のために外部人材を登用」というのは、結局、自動怒りマシーンの仕組みを変える努力をせず、自分は簡単なAI／ソフトでも置き換え可能なレベルの仕事しかしていないのに、上位管理者に登り詰めているのをいいことに、大半の社員を見捨てて、近視眼的株主やアナリストを喜ばせようと、「外部人材＝クリエイティブジョブ型人材」という幻想に陥って、こうした行動に走っているのだと思います。
  
  
  このような企業や経営者を、なぜ「先進的」と言って持ち上げたがるのか、全く理解に苦しみます。（実際、ここで事例として取り上げられた企業や経営者は、自分たちの活動や言動が、こうした文脈で取り上げられることに違和感を感じるのではないか、今頃困惑しているのではないか、と、勝手に推測・同情しています。）
  
  
  以上、記事に対する批判を熱くなりすぎ気味に語ってしまいましたが、「批判だけしている人間に価値はない！」という私の持論に則って、「ではどうするか」ということについての私の処方箋・考え方を、次のブログ記事でご紹介します。

コメント