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数字の読み・設定とその役割・使い方について。。。【「マーケットシェア〇〇％とる」の意味は？】の追加論考(1)

カテゴリー: エッセイ・論説 2009 年 8 月 24 日 コメント(0)

先に2回にわたって（8月6日、9日）、「エッセイ/論説」のカテゴリーで、《「マーケットシェア〇〇％とる」の意味は？。。。不確実性への取り組み方》と題したブログエントリーを書きました。その時の主旨は、【戦略構想づくりフェーズでのドライビングフォースとしての「べき・たい数字」】と【戦略構想の具体化作業&定量的リスクリターン分析のフェーズでの、「インテリジェントえいやーの正直ベースの数字の読み」】をきっちりと峻別し、それぞれうまく使い分け活用して行くべし、ということでした。

これに関して、最近日経ビジネスの｢終わらない話｣というコーナーに、吉野家ホールディングスの安部修仁社長が書いた「攻めで生じる“落とし穴”」という興味深い記事を見つけたので、ここでご紹介し僭越ながら勝手に解説を試みてみたいと思います。以下、少し長くなりますが、まず抜粋引用してみます。

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①・・・・・今年度、吉野家は100店を超える出店計画を打ち出している。昨年度でも出店が81店舗で、年間3ケタは初めてのことになる。

②・・・・・ただし、物件情報が増え、投資額が安くなったからといって、バンバン出店すると“落とし穴”にはまる。決して忘れてはならないのは、｢質が高まった｣出店を実現するという点だ。・・・・・当たり前の話のように思われるかもしれないが、数を追及すると、ここがおろそかになってしまう。人は｢行け｣と言われると、どんどん行ってしまう。当初は｢売れる店｣を作るはずだったのに、いつしか｢売れる｣が抜けて、｢店｣だけになってしまう。

③・・・・・本来であれば売り上げを伸ばすのが目的で、そのための手段として出店を増やすはず。それなのに、出店が目的になるわけだ。すると失敗店ばかり増えかねない。

④・・・・・ここで悩ましいのは、安全性を優先するスタンスは必ずしも正しいとは言えないこと。・・・・・100%の成功を求めると、20～30店舗作れるかどうかだろう。100店舗中、15店舗ぐらいの撤退を覚悟する二律背反的な側面がある。規模の拡大は、リスクの拡大につながりかねない。

⑤今の局面では、不利なものはできるだけ小さくしながら、有利なものを大きく活用しなければならない。まさにマネジメントの巧拙が問われている。

（上記の①～⑤は、私-籠屋が、このあとの引用・解説のために、振ったものです。

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まさに、悩みつつも困難なチャレンジに取り組んでいる「腕まくりの経営実務家」の言葉だと思いますが、ここにあえて私の感想と解説を記してみたいと思います。

一言でいえば、私が先のブログエントリーでお話した、a.【戦略構想づくりフェーズでのドライビングフォースとしての「べき・たい数字」】とb.【戦略構想の具体化作業&定量的リスクリターン分析のフェースでの「インテリジェントえいやーの正直ベースの数字の読み」】という考えを適用すると、安部さんのような状況に置かれた経営実務家にとって、問題への取り組みと部下の人達とのコミュニケーションが、より分かりやすく、効果・効率的になるのではないかと思います。

まず、①で語っている｢100店舗」という数字は、a.の【戦略構想づくりフェーズでのドライビングフォースとしての「べき・たい数字」】と認識すべきものだと思います。そして、この｢べき・たい=願望目標数字｣と、b.の【戦略構想の具体化作業&定量的リスクリターン分析のフェースでの「インテリジェントえいやーの正直ベースの数字の読み」】を、しっかりと分けて考えることが重要です。

また、④に関連して言えば、戦略構想の具体化作業の中で、｢物件選びの審査基準設定をどのあたりに置くか｣に関する選択肢を複数設定する必要があります。（私自身はこの業界には素人なので具体的審査基準の設定の仕方はわかりませんが、その設定基準により、結果的に何％くらいの撤退を覚悟することになるかが読める、というタイプのものになるはずです。）

その審査基準の選択肢を、仮にA、B、Cと三つ設定したとして、それぞれの審査基準における、結果的に撤退せざるを得ない店舗の割合が何％程度になるかを、b.の｢正直ベースのインテリジェントえいやー」で読み、それを使った収益計算をすることになります。（ちなみに、関係者だけだと、どうしても｢正直ベースのインテリジェントえいやー」の読みが、自分たちの「願望目標数値」の方向にバイアスがかかってしまう、という場合は、読みを行う際のファシリテーター（司会進行役・質問役）を、中立の立場の人、たとえば、この戦略構想には直接携わっていない企画部門のスタッフや外部の信頼できるコンサルタントに依頼するのも、一つの方法でしょう。）

このあたりをきちんと認識すれば、②や④への取り組みが、よりわかりやすくなるはずです。さらに④についていえば、この「正直ベースのインテリジェントえいやー」を、ベースケースだけでなくハイケース、ローケースの読みも行い、その影響度を感度分析して（トルネードチャート分析）、選択肢ごとに比較すれば、どの選択肢がどの程度のリスクをはらんでいるかを「見える化」することができ、リーズナブルな範囲でのリスクテーキングをした上でのリターン追及が可能になるはずです。かつそれが、トップのみならず部下も含めたマネジメントチームとして、納得性と論理性、そして建設的コンセンサスのもとに行えるのです。

このあたり、つまりa.とb.の峻別と相互関係の理解、がすべての枢要な関係者間で共通認識としてできていれば、②の後半や③のような勘違いも防げるはずです。

その結果、⑤のチャレンジに対し、「一人の天才による英断—それが時に蛮断や暴走になりがちな」に頼り切るのではなく、「マネジメントチームによる結集された叡智」で取り組むことが可能になるのです。

 

少し長くなってきましたので、(2)として、次回に書き継いで行きたいと思います。

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