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Distinction-driven の「好きx得意ｘ喜ばれる」

カテゴリー: エッセイ・論説 2019 年 6 月 3 日 コメント(0)

最近、Distinctionという言葉が気になっています。Distinctionという概念で見ると、色々なことが良く理解できるのではないか、という気がしています。

Distinctionという言葉は、辞書的に言うと区別／差別／（区別となる）特質／特徴／卓越／著名／優秀性といったところです。

アメリカに住んでいたころに、同僚との議論の中でしばしば耳にして以来、印象に残っていて、最近色々なことを見たり聞きたり考えたりするときに、しきりに思い出される言葉なのです。

意訳的にいうと、「物事を捉えるときの切り口の軸」「こだわりポイント」「何が気になるか」「どこに執着するか」といったことになると思います。

例えば、食べ物でいえば、まず「果物／肉／野菜…」といった素材についてのDistinctionや、「高い／中くらい／安い」という価格のDistinction…。

果物をさらに分けると「りんご／バナナ／いちご…」。りんごはさらに「ふじ／紅玉／ゴールデンデリシャス…」あるいは「長野県産／群馬県産／秋田県産…」etc.etc.となっていきます。

Distinctionをどういう切り口でみるか、どこまで細分化して捉えるか、そのカテゴリーの中での違いがどこまで気になるかに、 その人にとって重要なことや 、少し大げさに言うとある種の哲学的価値観 が反映されているのではないかと思うのです。

私は、人や組織が世の中に誕生し存続しつづける理由がミッション／ビジョンだと考えていますが、それをより具体化すると、「好き」×「得意」×「喜ばれる」だと思います。

そして今思っているのは、「好き」×「得意」×「喜ばれる」を決めるものは、結局はそれぞれの人や組織が何をDistinctionとして認識し、こだわるかなのだということです。

たとえば、ワインが趣味の人にとっては、ワインについてのDistinctionの切り口が多岐にわたり、カテゴリーが数多くあり、その中での一つ一つの違いや強度が、その人にとってものすごく大きな意味を持つわけです。

そういう人にとっては多分1000円レベルのワインと10000円レベル、10万円、100万円のワインの味の違いが判別できるし、その違いの大きさが、その人にとって重要なわけです。

一方、私くらいだと、500円レベルと2000円レベルの違いは判別できたとしても、それが10000円、10万円、100万円となっても違いが分からないし、気にならないわけです。だから、ワイン好きの人は10万円出しても気に入ったワインを飲みたいのでしょうし、逆に私の方は、2000～3000円くらい以上は（少なくとも自分用には）あまり出す気がしないわけです。

Distinctionが際立っていない領域は、そもそもあまり興味がない部分なので、そこに大事な時間やお金をつぎ込む気にはならないのです。

Distinctionは、生まれつきの要素が強いと思いますが、後天的に生じたり、また時によって変化したりもするように思います。

私の場合、先ほどのワインでいうと、カリフォルニアに行くまでは、あまり興味がなく、当時の日本では価格が安くないこともあって、単に「赤ワイン／白ワイン」くらいのDistinctionしかありませんでした。それがカリフォルニアに住むことになり、比較的手ごろな価格でワインが楽しめるようになったことで、赤ワインの中のカベルネソーヴィニオン／メルロー／シラー／ジンファンデルというブドウの種類のところまで、Distinctionが深まりました。（幸か不幸かそれ以上の深まりにはならなかったので、ワインに散財することはありませんが…）

さて、このDistinctionにもとづく「好き×得意×喜ばれる」の適用例として、「職業（キャリア）選択」と「企業のマーケティング」を考えてみたいと思います。

まずキャリア選択ですが、自分の気になること／こだわることのDistinctionを考えて、何が好きか（⇒好きじゃないことと好きなことの違いの切り口は何か）、何が得意か（⇒なぜか、この部分は人より上手くできる、あるいは、この部分は人に負けると悔しいと感じるか）、誰に喜ばれたいか（⇒どんな人たちに、どういう点で喜んでもらえると嬉しいか）という切り口から、どんな種類の仕事をするか、どういう分野・業界・職種で働くかを考えるのが良いのではないか、ということです。

但し、普通の人だと、自分のDistinctionに基づく（Distinction-drivenな）「好き×得意×喜ばれる」だけでは「メシが食えない」ことも多いので「メシが食える仕事のチョイスの中で、相対的にできるだけ「好き×得意×喜ばれる」を多く満たすものを選ぶことになります。ただ、当初は完全に満たすことができない仕事でも、Distinctionは、時間経過とともに環境によって変化したり、強度が変わってきたりするので、人間は何とかそこそこ楽しくやっていけるわけです。

少し脱線しますが、その点でいうと、昔から、世の中に大きな変化をもたらす科学的発見や新規事業の大半は、各時代のかなり経済的に恵まれた階層の子弟が成し遂げていることは注目すべき現象だと思います。

昔でいうと貴族階級、最近でいうと資産を多く持つ富裕層の子弟に、それまでになかった発想での取り組みや起業が多く起こっている気がします。

「Distinction-drivenの好き×得意×喜ばれる」仮説的にいえば、「メシが食えないという制約がない分、自分のDistinctionに徹底的にこだわり追求することができ、それが卓越した創造性に繋がるのではないかと思います。

その観点でいうと、将来、Basic Income や Basic Service で、人々が「食うに困る」心配をする必要のない社会になれば、人間社会はより面白くなり、より発展するのではないか、という大いなる期待も可能かと思います。

もう一つの応用例として、企業のマーケティングについて考えてみましょう。

マーケティングの基本は、消費者／顧客のニーズやウォンツをきめ細かく汲み取り、それを満たす商品なりサービスを提供することと言われています。しかしこれだけ世の中に商品やサービスがあふれてくると、逆の発想をしても良いのではないか、自分達のDistinction-drivenで突き進むのも一つのやり方として有効ではないか、という発想です。

つまり、自分達自身のDestinction-driven で「好き×得意」を定め、それに基づく商品・サービスを作り、「喜んでくれる」消費者／顧客を見つけ出せばいいじゃないか、という考え方です。

先の「Distinctionは変化しうる」ということからすれば、すぐにも喜んでくれる消費者／顧客を見つけ出すだけでなく、そうでない人たちに対し積極的にコミュニケートすることで、彼らのDistinctionを深めたり作ったりして、喜んでくれる人を増やすことも有効でしょう。

但し、この場合重要なのは、事業／企業規模を追わない、ということです。Distinction-drivenということは、ワインでいえば「酒であれば何でもいい、それを変えるつもりは毛頭ない！」という人達にまで対象消費者／顧客は広げられないわけですから。

しかし、各自・各社がDistinction-drivenで商品・サービスを提供し、各主体はむやみに規模成長を追わない社会というのは、とても面白い生き生きとした社会、ひょっとしたら（やたらに大きく儲かる事業が出てこないことによって）貧富の差も比較的小さい社会になるのではないか、と期待したりするわけです。

以上、【Distinction-drivenの「好き×得意×喜ばれる」】について、つらつらと考えてみました。

今回は、「Distinction-driven のキャリア選択」と「Distinction-driven の企業マーケティング」を例にとってみましたが、皆さんも是非、色々とDistinction-driven の〇〇を考えてみてください。面白いものを思いついたら、ぜひ私までご連絡ください！

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