【未来の可能性を最大化する】ディシジョンマインド社は研修やセミナーを通してみなさんの経営戦略に必要な意思決定力の向上を支援する会社です

AIと人間の役割分担や関係性については、ここ数年、折にふれて、読んだり、考えたり、状況観察してきているのですが、その一環の雑感を綴ってみます。まず、最近目についた幾つかの新聞・雑誌記事からの抜き書きをしてみます。


———————————————————-

1.「未来に試される人間の思考力」（2019年6月19日　日本経済新聞より）

…「人工知能（AI）は過去から学ぶのは得意だが、新しい問題が起きたときには人間の思考力が試される」。スポーツに数学やプログラミングなどを融合させた授業を考案するSTEAM（スティーム）スポーツラボラトリー（東京・千代田）、山羽教文代表取締役の言葉だ。

…AIは過去に蓄積されたデータをもとに、人間の学びをものすごく効率良く手助けしてくれる。

…だが、過去から見る未来が常に正しいわけではない。AIだけではたどり着けない「簡単に答えの出ないこと」に頭を悩ませ、試行錯誤し続けるのが、AIと付き合う人間の姿なのだろう。

…教育心理学者のウン・メンレック氏（63）は「学習が身につかないのは、その子供の学ぶ力が不足している可能性がある」と指摘する。

…受講者のレベルに合わせて学ぶ力そのものを鍛える …

2.「AI時代の生き残り術」（2019年6月17日　日本経済新聞より）

…人工知能（AI）が仕事を奪うことへの懸念が広がっている。数学者の新井紀子・国立情報学研究所教授に対策を聞いた。

…「進化したAIが人類を支配するシンギュラリティー（技術特異点）のようなことは起きません。しかし、定型的な頭脳労働の一部がデジタル化されて、機械に置きかわるのは間違いない。

…読解力が不足しているとミスが出やすい。すると多忙になりすべてが後手に回ってしまう。

…知識量を求める前に、新聞のひとつの記事を一字一句読む。どういう意味かを考えながら、じっくり文字を追う。

…自分の頭で考えることが大事です。効率が悪いと思っても、腑に落ちるまで読み込む。1年続ければきっとすばらしいことになる。そうした努力を続ければ、それほどAIを恐れる必要はないはずです。

…技術進歩に対応した最新の手法や奇抜なアイデアが求められる、と思われがちだ。だが、そうではないという。乱世ほど地道なやり方しか通用しないと指摘する。世の中が安定しているときは、いろんな条件も動かない。その中では、変わった方法でもうまくやっていける。だが、乱世には前提となる様々なしくみが崩れてしまう。普遍性のある、どこでも通用するものしか生き残れない …


3.「誤解だらけのAI万能論」（日経ビジネス　2019年6月3日号より）

…伊神満（米エール大学経済学部准教授）は「AIについては色々な人が色々なことを言っている。だが楽観論も悲観論も、ただ各人が個人的に言いたいことを言っているだけのように見える」とバッサリ。「そんなことより、冷静な人たちが交わしている『それなりに確かさをもって言えそうなこと』に耳を傾け、吟味しよう」としている。

———————————————————-

以上の記事から私が 読みとった ことを列記してみます。

〇AIは、過去からの学びを極めて効率的に人間に役立つ形で提供してくれる。

〇しかし、過去の延長で語りがたいことについては、少なくとも現在のAIは何も教えてくれず、そこは人間が考え、意思決定し行動するしかないし、逆にそこにこそ人間の存在価値がある。

〇そこでは、読解力・論理力をベースとした基礎・基本、地道なやり方、自分の頭で考える力が大事になる。

〇その意味で、学ぶ力そのものを鍛えることが必要になる。

〇今後もAIについては楽観論、悲観論が次々に出てくると思われるが、一喜一憂することなく、都度冷静に見極めていく必要がある。

以上、至極まっとうで当たり前に聞こえることばかりですが、実際そういうことなんだろうだと思います。

加えて私が思うのは、人間がやっていて「飽きの来ること」、やること自体に「ワクワクしないこと」はAIに置き換えられて行くだろうし、置き換えられていくのが社会の進歩、と考えてよいのではないかということです。

そもそも文明の進歩とはそういうもの—必要とされやらなければならないことではあるが、やっていて肉体的・精神的に苦痛なことや、興味が持てないこと、やりがいを感じられないことからの解放—、なのだと思います。

飽きの来る／ワクワクしない思考はAIに、そしてそこに物理的行動が伴えば、AIと連動したロボットに置き換えていくということになります。

昔「パーマン」という漫画があって、そこに小学生の主人公が頼る「コピー」という、本人そっくりの、今考えれば「AIつきロボット」あるいは「アンドロイド」のようなものが登場していました。

主人公は、勉強や家の手伝いなど、自分が興味を持てないこと、面白いと思えないことは、全て「コピー」に丸投げしてやってもらうのです。時々は逆らうものの、「コピー」は概ね主人公の言いつけに従順に従っていました。根が怠惰な私は、漫画を読みながら、自分もコピーが欲しいな、と思ったものでした。

現在の状況をポジティブにとらえれば、今言われているAI（やロボット）に仕事を奪われるのではないか、という議論は、そういう意味では無意味というか逆で、現代の「コピー」であるAI（＆ロボット）に、人間が興味を持てない諸々のことをどんどんやってもらって、楽ができることは、大いに歓迎すべきことではないかと思のです。

とりわけ、今のAIが得意なのは「超高速繰り返し作業」で、人間なら飽きが来てやりたくないことを、絶対に飽きずにサボらずに猛スピードでやってくれるのです。そうした仕事や作業は、本来、本音で言えば人間はやりたくもないし、またやれないことなのですから、なおのことです。

では人間は何をするか？

自分が興味ややりがいを持って取り組み、やっていても飽きない、ワクワクする思考や作業をやればいいのです。興味のある書籍や文献を読解し、思考し行動すること自体にやりがいや興味を持てることに取り組み、その過程や成果をコミュニケートすることが楽しく知的刺激を受ける相手と交流することです。つまり、前のブログで書いた、自分のこだわる「Distinction」にまつわることに集中すればよいのです。

ただし、ここに「メシが食えるか」問題が出てきます。現在は「飽きの来ること」でも、それをやらないとメシが食えないからその仕事をやっている、ということも多いのですが、そういう仕事はAIが取って変わってこなすようになるので、仕事がなくなって、今までの延長だけではメシが食えなくなるわけです。

ではどうするか？　

今の仕事の中で、あるいはその周辺で自分が興味を持てること、Distinction／こだわりを感じられることに、仕事のフォーカスを少しづつ移したり、集中して行ったりすれば良いのだと思います。もちろん「メシが食えるか」問題がほとんどないラッキーな人の場合は、直ちに全く新しいワクワクすることに挑戦するのも良いと思います。

AI／ロボットへの置き換えも、別に半年や一年で一挙に起こるわけではないですから、今から徐々にそういう思考や行動を起こしていけば良いのです。

第一、大半の人がAIに仕事を奪われて、未来の社会は、ごく一部の活躍・富裕層と、大多数の無用・貧困層に二極化するなどと言われますが、そうなったら、活躍・富裕層や彼らが運営する企業は、どうやってお金を儲けるのでしょうか？彼らが提供する製品やサービスの購入にお金を払える相手がいなくなれば、儲けようがないではないでしょうか？。。。もっとも、だからこそ、GAFAなどはベーシックインカムの導入を指向しているのかもしれません。しかし大多数の人間が無用層となって、ただGAFAにお金を払うためだけに生きている存在になる未来になるほど、人間が馬鹿だとは思えませんし、そうならないことを願っています。

このロジック自体は、極めて大ざっぱで抜けの多い議論かと思います。しかし、大半の人がAI（とそれと連動するロボット）に現在の仕事が奪われるようなことになるとしても、それには少なくとも5年や10年はかかるのではないかと思います。

この移行期間の間に、自分が興味が持てることに仕事のフォーカスを移す。あるいは集中していく。並行して、興味の持てない作業をこなすのにAIやロボットを活用していく。ということをやっていけば良いのだと思います。

以上、AIと人間の役割・関係について、少し楽観サイドに寄り過ぎたきらいはありますが、2019年7月時点での雑感を綴ってみました。今後もこのテーマについては観察・思索を続けて行きたいと思っています。