【未来の可能性を最大化する】ディシジョンマインド社は研修やセミナーを通してみなさんの経営戦略に必要な意思決定力の向上を支援する会社です

先日、大学時代の恩師（K先生としておきます）の「お別れの会」に出席しました。

専攻していた化学工学の、4年の時の卒業論文の指導でお世話になった先生で、今年の7月に95歳でご逝去されたのですが、大学退任後も様々な要職を務められ、生涯現役のエンジニアとして活躍された方でした。
私は大学卒業後は、応用科学系の同窓会か何かで一度か二度お目にかかっただけなので、お別れの会では末席に連なっただけなのですが、先生と交流の深かった方々からのお別れの言葉を聞いているうちに、実はK先生のいくつかの言葉に随分自分が影響を受けていたことに気づきました。

申し訳ないことに、自分が影響を受けたK先生の言葉を、普段は気づかずに過ごしていました。

ここでいくつか紹介してみたいと思います。

①実務・実学を重視
K先生は生涯現役のエンジニアとして過ごされた訳ですが、 諸先輩によると、 「エンジニアリングは実学であるべき。理論は常に現実の役に立ってこそ意味がある」とずっと言っておられたとのことで、私も先生と接する中でそのことが脳に深く刻みこまれ、何事に取り組むに際にも、それが自分の発想の起点になってきたのだと感じました。

いま仕事の対象としている企業の経営や戦略的マネジメントにしても、いわゆる経営理論の多くに対して、「理屈めいたことをフニャフニャとこねくりまわして、さも立派げに経営理論などと称しているけど、一体どう具体的に役に立てればいいか、実務として使えないじゃないか！？」と感じるのは、K先生の言葉が脳の深層に刻み付けられ、それが既に自らの発想になってしまっているからではないかと感じた次第です。

その意味で、今提唱しているディシジョンマネジメントのベースになっているスタンフォード大学のハワード教授の実践的意思決定理論に強く魅かれたのも、K先生の実務・実学重視という言葉に影響を受けているのだと改めて思っています。

考えてみると、ハワード教授が工学系の出身で、かつ主として活動していたのが工学系の大学院というのも、必然的な符合なのかもしれません。

②「オーケストラのつくり出すハーモニー」という発想
私が卒業した大学では、教養課程の2年から専門課程の3年に進む際、「進学振り分け」というのがありました。2年の秋に、各専門課程の学科から学科主任の先生たちが来て学生にそれぞれの学科の説明会をして下さり、その上で学生は希望する学科を決めるという仕組みです。

私の時の進学振り分けの際、化学工学科の説明に来て下さったのがK先生で、その時に先生がおっしゃった言葉が印象に残っています。

「ケミカルエンジニア（化学工学のエンジニア）は、電気、機械などをはじめとする様々な分野のエンジニアをチームとしてまとめ、1つの結束した活動としてまとめ上げリードしていく、言ってみればオーケストラの指揮者が各楽器の奏者を導き、美しいハーモニー（協和音）を作り出していくような役割だ」という言葉です。

ここ数年、ディシジョンマネジメントの衆知錬成の検討プロセスを「Wisdom orchestrating Workshop（＝WoW：知恵を紡ぎ合わせるワークショップ）」プロセスと呼んでいるのですが、WoWの命名をするとき、なぜか強くオーケストレイティングという言葉を使いたいと思いました。その理由が、K先生のお別れ会の時、「腑に落ちた」という感慨を持ちました。


③海外・世界を見るべき、行くべし
授業や研究指導の傍ら、K先生は学生に様々な示唆に富む言葉をかけて下さったのですが、その中の1つに「君たち、できるだけ早いうちに海外に行ってみなさい」というのがありました。

もちろん、できれば 仕事 や 留学 で長期間滞在し暮らしてみるのが良いのですが、たとえ数日間の旅行であっても、普段と大きく異なる環境に身を置くことで、様々な刺激を受けるので、それ自体が楽しくまた新たな気づきに繋がるから、とおっしゃるのです。

そして、こうした知的刺激は、若く感受性が豊かな時代にこそ効果的ということで、K先生ご自身の若いころの、興味深いご経験や失敗エピソードなどを気さくに楽しげに語ってくださいました。

K先生の勧めに背中を押され、私は修士1年から2年の間の春休みに、約1年間のアルバイトで貯めた資金で、3週間の学生生協主催のヨーロッパ旅行に出たのですが、様々な刺激を受け、失敗談も含めて、今でもとても良い思い出になっています。

K先生からのお話がなければ、その後のスタンフォード大学への留学や、その時出会ったハワード教授が設立した会社での仕事もなかったかもしれません。そしてそれらが今現在のディシジョンマネジメントに基づくエデュサルティング(=Education+Consulting)活動に繋がっていることを考えると、普段はあまり気づいていなかったのですが、私のその後の人生に、K先生の言葉が随分大きな、しかも良い方向での影響を与えてくださったのだと改めて感謝した次第です。

以上、K先生からの言葉が私の人生に影響を与ぼした3つのトピックを紹介しましたが、このことに私は普段気づかず／明確に認識しておらず、K先生のお別れの会に出席して初めて気づかされたわけです。それらの言葉が、もはや自分自身の思考・発想として「内在化」していたがゆえに、逆に普段気付かなくなっていたのだと思います。

少し話が飛躍するかもしれませんが、そこから敷衍して考えると、普段気づかないうちに様々な人達からかけられる言葉の数々に、一人一人の人生は大きく影響を受けており、私の場合も、K先生のみならず様々な人達から良い影響を受けている（中には反面教師的なものもあり、残念なことにそちらの方が意識の表面に出てくることが多いのですが）ということです。改めて、そうした人たちに感謝の気持ちを持たねばと思った次第です。

出来れば私も、これからエデュサルティングをはじめ、色々な人達との出会いの中で、その方々の人生に良い影響を与えられる言葉や記憶を残せるようになりたいものだと、前向きな、かつ襟を正す気持ちになりました。