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先日のブログ記事 【「きれいごと理想論」vs「Can we afford it ? 問題」vs「なんとかなるさ！世界観」】についての読者との意見交換

カテゴリー: その他 2019 年 12 月 1 日 コメント(0)

10月4日にアップしたブログ記事について、以前、DM（ディシジョンマネジメント）を活用したエデュサルティング（＝ Education + Cosulting）でお手伝いした方（Aさんとしておきます）からフィードバックを頂き、メールで意見交換をしました。

その時のやり取りを、他の読者の方々にも参考になるのではないかと考え、Aさんの許可を頂いた上で、ここにご紹介させていただきます。

［１］Aさん→籠屋へのメール：
籠屋さん、

ご無沙汰しております。新著出版おめでとうございます。是非読ませていただきます。ブログを拝見し、興味深い問題提起なのでコメントさせていただきます。

確かに、短期的な問題に対しては解決の担保が重要であり、ご指摘の通り「Can you afford it ?」など、経済的、技術的など実現の有意性を踏まえた意思決定が必要だと思います。

一方で、中期的な課題、例えば地球環境問題や政府の財政問題などに対しては、議論している人々や社会のためだけではなく、将来にその恩恵や犠牲を負う人々や社会を想定した意思決定もあります。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの国連スピーチを聞いて、将来を想うと、時には犠牲を覚悟で判断しなければいけないと感じました。社会保険制度や財政、エネルギー問題などの社会課題に対しては、そのような大局的な判断が必要なのではないでしょうか。籠屋さんはどう考えますか？

［２］籠屋→Aさんへのメール：
Aさん、

ブログ記事へのフィードバック、ありがとうございます。

頂いたコメントについて、以下に私の考えを書かせていただきます。

ここで「Can we afford it ?」と言っているのは、まず一つ目のポイントとしては、そのこと（＝きれいごとで目指す方向）の実現に向けて設定した方策・アクションを実行するだけの経営資源が十分にあるか？ということで、それだけの経営資源があって実行した上で、（短期も中長期も含めて）経済的に打撃を受けるかどうかは、別問題（⇒次の二つ目のポイント）ととらえています。

したがって、具体的実現・実行方法を考慮せず実行のための経営資源も分からないまま、つまり具体的意思決定のための選択肢を全く考慮せずに、単にきれいごとの実現目標を設定し「何とか頑張ってやっていこう！」と気勢を上げるだけで終わるような態度は無責任だととらえている、ということです。

次に、二つ目のポイントとして、例に挙げていただいた地球環境問題などの中長期的問題への取り組みも含めて、経済的打撃をどうとらえるかについては、一つ目のポイントの選択肢の実行可能性の問題とは別の、価値判断尺度（Value measures）の問題だと位置づけています。

実行可能な「Yes, we can afford !」な複数の選択肢のうちどれを選ぶかについては、複数の価値判断尺度に基づいて判断することになります。

5年間のNPV（Net Present Value）、10年間のNPV、30年間のNPV、100年間のNPV・・・といった経済的価値のみならず、「きれいごと」が指し示す具体的な価値判断尺度である、複数の時間軸での地球温暖化への影響度合い（例えばCO2排出量や地球気温・・・）など様々な価値判断基準に照らして、各選択肢を測定・評価し、最後はValue Tradeoff表で、自らの（企業だったり、国だったり、人類だったりすると思いますが）哲学的価値観に基づいて、うーんとうなって決断することになると思います。
（なお、この二つ目のポイントの考え方については、地球環境問題など中長期的課題のみならず、通常の企業での短中期的な意思決定でも、同じことだと考えています。
昨今の日本企業は短期的視点の株主からの要請を受けて、Value Tradeoffの判断において、短期的経済価値の比重を高めているように感じますが、企業の設立理念からすれば、それが全てではないことは明らかだと思います。）

この時、 「Can we afford it ?」の観点から大事なのは、きれいごと由来の価値判断尺度に重きを置いて選択肢を選ぶ際には、その選択肢の持つ経済的価値の面での打撃をきちんと認識し、それを受け入れる覚悟をもって意思決定する責任がある、ということです。

私がブログで、きれいごとを声高に叫ぶだけで 「Can we afford it ?」 を全く顧慮していない人たちを批判したのは、この人たちが、自分たち自らが経済的打撃を甘受する覚悟無しに（その打撃は、自分たちではない誰かが負ってくれる・負うべきだと、私から見ると、「有害な正義感」や無責任さをもって）、きれいごとを叫んでいるように見えるからです。

三つ目の重要なポイントとしては、各選択肢の測定・評価においては、不確実性の存在を明確にとらえる必要がある、という点です。

地球温暖化問題についていえば、例えば、①特段の施策をとらず今のままの成り行きで行く、という選択肢を選んだ場合に、地球温度はどの程度上昇するのか、それによる経済損失はどの程度になるのか、②温暖化を防ぐための政治面・制度面・技術面での思い切った施策を行う選択肢をとった場合、たとえば技術開発が成功する確率はどの程度か、成功した場合の地球温度上昇はどの程度抑えられるか、それに紐づいて経済的損失がどれくらい少なくなるか、etc.etc.といった様々な不確実な要因の影響も含めての Value Tradeoff 表を作る必要があります。

（☆筆者注：ここでいうValue Tradeoff表とは、俎上に載せた複数の選択肢を、（単数ないし複数の）意思決定主体者が重要と思う、複数の価値判断尺度に沿って測定・評価したものを一覧表の形に整理したものです。そしてこの Value Tradeoff表 を眺めつつ、意思決定主体者が自らの哲学的価値観に照らして「うーん」とうなりつつ、 Value Tradeoff判断を行い（=あちら立てればこちら立たず関係の中で、各選択肢のトータルの嬉しさを勘案して）意思決定を行うわけです。）

以上3つのポイントについて記させていただきましたが、トゥンベリさんには、ぜひ問題提起にとどまらず、具体的な複数の選択肢づくりやそれらの測定・評価、価値判断尺度のトレードオフについて、彼女自身の哲学的価値観の提示にとどまらず、地球市民の一員として、人類全体の幸福の実現を目指し、人類全体の英知を錬成した具体策の策定に向けた活動のリーダーシップの一翼を担い、積極的にかかわっていってほしいものだと強く願っています。

以上、長々となってしまいましたが、とりあえず私の今の考えを記してみました。

引き続きよろしくお願いいたします。

［３］Aさん→籠屋へのメール：
籠屋さん、

おはようございます。
丁寧なメールを有難うございました。

中長期的な課題に対しても短期同様に実行可能性に対する分析を踏まえた「覚悟」が必要ですね。
分析も覚悟もしない「きれいごと理想論」には期待できないことがわかりました。

次回またお目にかかって意見交換できるのを楽しみにしています。

以上のAさんとのやり取り、参考になりましたでしょうか？

今後も、ブログ記事への読者の方々からのフィードバックと意見交換を楽しみにしていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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