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衆議院選挙での自民党惨敗に、「戦略的マネジメント」の視点から企業が学びうること(I)

カテゴリー: 日常雑感・プライベート 2009 年 9 月 3 日 コメント(0)

衆議院選挙は、民主党圧勝＆自民党惨敗で終わりました。今回の選挙は、前回の｢郵政民営化か否か｣のようなインパクトの強い切り口がなかった分、個別課題についての各党の主張を多くの人がかなりきちっと見たのではないかと思います。それが、小泉さんのようなカリスマ的政治家がいなかったにもかかわらず、高い投票率につながったと考えると、その意味では、とてもよかったと感じています。

ちなみに私は、小泉さんの｢郵政民営化か否か｣という投げかけ方に対しては、具体論なしに、いきなり戦略構想のスローガンレベルで決断を迫るという意味で、ある種、高度なだましのテクニックのにおいを感じるのですが、ご本人の強いキャラクターと相まって、選挙戦術としては卓抜だったと思います。（なお、ここで私が「具体論」の中身として想定している、｢戦略構想の具体化作業｣や｢定量的リスクリターン分析｣については、7月20日、26日、27日、30日のブログエントリーをご参照ください。）

それに比べると、今回の民主党の｢政権交代か否か｣は、人々にそれほどの熱狂を与えなかった分、多くの人が、事前に各党のマニフェストをかなりきちんと読んだのではないかと想像しているわけです。

私も、投票に出かける直前に、あらためて、事前に集めておいた各党のマニフェストや新聞記事、またネットの政策比較サイトなどに目を通しました。また午後八時以降、各局の選挙速報番組をいろいろザッピングしながら見ました。

この一連の中で、私が、企業の戦略的マネジメントの観点から感じたことを3点ほど、このブログエントリーに書いてみたいと思います。（なお私は以下の文章で、個別の政治的イシューや立場に立ちいるつもりは一切なく、あくまで企業の戦略的マネジメントの観点から、読者の皆さんにも役立つのではないかと感じたことを書くだけですので、念のため。また政治業界について全くの素人なので、的外れのこともあるかと思いますので、その点もご容赦ください。）

 

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①「戦略の一貫性・テーマ性・主張」を持たせる：　自民党のマニフェストを読んでいてまず感じたのは、年金、地方分権、安全保障、経済成長・・・といった各項目についての施策の関連性に一貫性が見えない/見えにくい、ということでした。現政権の批判を展開する複数の野党からの、それも様々な異なる立場からの批判への対応を連ねて自分の政策にして行った結果、一貫性・整合性のないものになってしまったのではないかと想像します。

昔、ある自動車会社の人から聞いたのですが、車を買ってくれた顧客からの批判や注文に一生懸命まじめに応えて行った結果、次第に主張や特徴のない車づくりになってしまい、結局、自社の車の特徴を明確に打ち出し、それを消してしまう方向からの顧客の批判・注文には殆ど応えない対応をする競合企業の後塵を拝することになってしまったそうです。今回の自民党には、そうした気配を感じました。

 

②「すべての顧客を満足させる」ことにとらわれない：　企業が圧倒的な市場シェア#1のポジションを獲得すると、すべての顧客セグメントを満足させるために、あらゆるタイプの品揃えやサービスを提供しようとする傾向に陥りがちです。そのために次第に全体の収益性が落ちてきてしまい、逆に顧客セグメントを絞り、特色ある製品やサービスに特化した、とんがった戦略をとる企業に後れを取るはめになります。

そして、時代環境の変化でその特化した顧客セグメントが市場のメインセグメントになった時に、それまでの#1企業がメインプレイヤーのポジションから転がり落ちる、といったケースが見られます。

今回の自民党もこの「すべての顧客」症候群に陥ったことが、①の「戦略の一貫性・テーマ性・主張」の欠如につながったのではないでしょうか？

その点、小泉さんは実に戦略的だったと思います。「構造改革なくして景気回復なし」のスローガンの裏には、「構造改革がない方がHappyな人たちには、支持してもらわなくて結構！」というメッセージがあったのです。

また、「中長期的には構造改革で恩恵を受ける人たちの中にも、短期的には、かえって大変な目にあう人もいるかもしれないが、それは耐えてくれ。泣き言は言わないでほしい」、さらに深読みすれば、「すべての人達をすべての時にHappyにすることなどできないよ。その意味で、甘ったれて、政治にあまりに多くを期待する人たちは相手にしないよ」とも、通奏低音の中では言っていたように思います。

国民の大半も、それをうすうす感じつつも、小泉さんの持つ独特の明るさ、キャッチイな言葉と言い切りの歯切れ良さに、「まあ、良く考えればそういうことだよね。大きな方向としては、小泉さんの言っていることは正しそうに思えるから、当面少々のことには耐えて、泣き言いわずに自分たちで頑張って行こう！」という気になったのではないでしょうか？

企業にしても政党にしても、完全なニッチプレイヤーでない限り、あまりに露骨に「我々は、すべての顧客を満足させることは考えていません」とは宣言できないでしょうが、戦略の主体部分は、どの顧客セグメントにフォーカスし、どの顧客セグメントは捨てる、あるいは無理に取りに行かない、をはっきりさせることが重要なのです。

政党であっても、端的にいえば、小選挙区制では、すべての選挙区で、有効投票数の51%を獲得すれば小選挙区の全議席をとれるのですから、「すべての国民を満足させる政策」を打ち出す必要はないのです。（公表された実際の得票率を見てみると、もっと低い得票率で議席を獲得している議員がほとんどのようですから、なおさら「すべての顧客症候群」からの脱却は有効だと思いま。）

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「日常雑感/プライベート」カテゴリーのブログエントリーとして、短く書くつもりだったのですが、例によって長くなってきましたので、続きは(2)に書き継いで行きたいと思います。（なお、このカテゴリーのトピックとしては、話の内容が少し｢かたく｣なってしまいましたが、カテゴリー分類は一応このままにしておきます。）

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