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ここのところ、トヨタのリコール問題の報道がずいぶんされていますね。トヨタには日本の製造業のトップ企業として頑張ってもらいたいと願いますし、この問題スペシフィックに何か言うべき情報は持ち合わせていないのですが、今回の一連の報道を見聞きして、そこから連想して感じたこと—「企業・組織の尊大化」について、一般論として少し書いてみたいと思います。

まず二つほど、「企業・組織の尊大化—何さま症候群」を感じる伏線となったケースを紹介してみます。

 

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①先日、政府や自治体を主要顧客に持つ製品の営業をしている方とお話ししていたら、「相手はお客さんだから、何を言われても、どんなに理不尽なことや失礼なことを言われても、面と向かっては反論できずニコニコしてはいるが、心の中では、はらわたが煮えくりかえることがしょっちゅうある。自分の子供は、決してああいう、人として許せない役人にだけはさせたくない」とおっしゃっていました。

②これはある産業連鎖の（自動車とか電機とかいった意味での）、2次サプライヤー（いわゆるsecond-tierと言われる業界です）の会社の役員の方（A氏）からお聞きした話です：｢今を時めく｣といった感じの状況にあった、大手メーカーK社の1次サプライヤーに呼ばれ、「お宅の製品をうち経由でK社に納入する話があるので、K社さんとのミーティングに出てほしい」と言われたのだそうです。もちろんそれで話が進んでいったのですが、K社の部長さんとのミーティングにたどりつくまでに4～5回ものミーティングが必要だったそうです。

まず1次サプライヤーの担当者・課長さんとのミーティング、次に部長さんを交えたミーティング。ここまでで、K社の方々とのミーティングに粗相のないよう、1次サプライヤーとの打ち合わせがすんで、ようやく次がK 社とのミーティングになるわけですが、まずはK社のご担当者様と1次サプライヤーの人たちと合同でのミーティング。それから課長様を交えたミーティング、と行って、ようやくK社の部長様とのミーティングが実現したのだそうです。

まさに何段階もの「大名行列」の乗りのミーティングが行われたわけですが、ようやく会ったK社の部長さんからは「私と会うまで、ずいぶんお手間を取らせてしまっているのでしょうね。御手数をおかけして申し訳ありません」とねぎらわれたそうです。

ねぎらうくらいですから、K社の部長さんは個人的には人柄のよい方なのでしょうが、企業組織としては、もはや産業連鎖の頂点にある会社として、「尊大化—何さま症候群」に陥っていると言えるのではないでしょうか？

A氏がもう一つトピックを話してくれたのですが、K社とは別の大手企業J社から発注の話が来た際、要求スペックに見合わない超低価格を提示されたので、「これではうちに儲けが出ないので、お断りします」と返事をしたら、「天下のJ社の仕事を、いらないの？」と驚かれたそうです。

いずれの場合も、A氏の会社はオンリーワンの技術と製品力に絶対の自信をもった会社なので、こうした話を笑い話として話せる気持ちの余裕を持てるのでしょうが、日本のいろいろな業界で、こうした現象で泣かされている納入企業は多いのだろうと思いました。

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私自身の経験でも、今から10年ほど前ですが、当時やはり「今を時めく」といった勢いの、最先端ブランドイメージを誇ったメーカーの課長レベルの人たちと話をしていて、「なんて偉そうな物言いをする連中なんだろう」と思った記憶があります。

その企業や組織が、業績絶好調だったり、構造的に絶対的な力を持っていると、どうしても組織成員や企業行動に、こうした「何さま症候群」が蔓延してくるのでしょうが、中長期的にみると、良いことは皆無でしょう。

まず、絶対的な力をもっている企業に対して下手に出ざるをえない納入企業の人たちの間には、納入先企業の製品やサービスを「買ってやりたくない」という心理が働きます。さらに、こうした「奢り」は顧客や消費者にも知らず知らずのうちに察知されて行きます。最終的には、それらが不満・怨嗟のマグマとなって、長期的にはその企業のブランドイメージや業績に悪影響をもたらす可能性が大きくなります。

政府や自治体といった組織の場合は、こうした「リベンジ」は効きにくいのですが、なにかあると一斉に「官僚バッシング」の世論が盛り上がる背景には、こうしたメカニズムが働いているのだと思います。

このような話やメカニズムは、何も日本に特有の現象ではなく、一時IT業界で圧倒的な力を誇ったマイクロソフトに対し、シリコンバレー系のIT企業群の激しい「マイクロソフト嫌い」の感情や動きは有名です。また個人的に聞いた話では、私の友人がロンドンで仕事をしているのですが、取引先のお役所的体質の会社とのやり取りで、先のA氏の話によく似た思いをすることが、しょっちゅうあるそうです。

 

以上、「企業・組織の尊大化—何さま症候群の戒め」について雑感を述べてきましたが、個人個人として、常に胸に手を当てて、自戒し続けることが大事だと思います。また企業や組織のマネジメント層は、自組織の個々の成員のみならず、組織の動きとして、こうした思考・行動パターンに陥らないよう、モニタリングシステムやインセンティブシステム、教育体系、そして何より自らの言動を、常時見直し続けることの重要性を認識し、実際の行動に反映させていく必要があると思います。

私自身は、「尊大化」や「何さま症候群」に陥る懸念を持つ 必要すらない存在だと思っているのですが、最近ある 極く親しい友人と上のような話をしていたら、これまでの付き合いの中で、私にも、ちょっとそういうことを感じた瞬間があった、と指摘され、えらく反省した次第です。ということで、このブログ記事の最後のメッセージは、読者の皆さんも、上記の①や②を他山の石として、自戒しつづけましょう！　ということです。