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「事業仕分け」を仕分けする。。。「建設的事業ブラッシュアップ・ワークショップ」への進化を願って:「若者自立塾」を題材として【11】

カテゴリー: 勝手にディシジョンマネジメント 2010 年 3 月 26 日 コメント(0)

前回まで10回にわたって、「若者自立塾」を題材として「ディシジョンマネジメントを用いたら、もっともっと建設的ワークショップを通じて、よりHappyな状況が作り出せるのではないか」という仮説にトライしてきました。今回はこのシリーズの最終ブログ記事として、ここまでの作業を通じて私が感じたことを何点か述べてみたいと思います。

①ディシジョンマネジメントを用いることによって、より衆知を結集した建設的議論ができるのではないか、という仮説は、かなり確かなのではないか、という感触を持つことができたと思います。

②今回は、インターネット上で政府から提供されている情報だけに依拠しているので、実際にこの課題に関連する様々な知見を持つ人たちが一堂に会したワークショップを行えば、今回私が提示した「たたき台トライアル版」よりはるかに質の高いものができるはずです。

③こうした「建設的ワークショップ」での、政治家の役割は、大きく言って三つあると思いました。

□一つは、議論の的確なファシリテーションです。自分個人や自党の主張をどうこう言う前に、政治家の基本的スキルとして、様々な人達の意見・論点を、一つの共通の土俵で議論できるよう導いていく力を発揮することです。この能力は、どの党の政治家であろうと必要とされるもので、ある種、政治家になるための基本的スキルとして、選挙に立候補するためには、このスキルについての資格試験を受けるべき、とすら考えられるのではないかと感じました。

□二つ目は、議論のファシリテーションを通じて、課題のフレーミング（枠組み設定）に関する的確な方向性を見出し、それをプロジェクトチームに指示することです。このフレーミングのところには、ある程度は、政治家個人としてや 属する政党としての ミッション/ビジョンというものが反映されると思いますが、次の三つ目のものほどには、政党や政治家によって大きく変わるところではないと思います。

□三つ目は、「哲学的な意味での価値観」の提示です。複数の価値判断尺度に照らした 各々の選択肢の評価・分析結果を記載した「トレードオフ表」を見ながら「うーん」と唸って どの選択肢にするかを決める作業は、まさに政治家/政党としての哲学的価値観、つまり「日本という国をどんな国にしていきたいか、どんな人たちを大切にしたいか、どんなことを大事にしたいか」というミッション/ビジョンを問われるところですし、また逆にそれを実現したりアピールする絶好の場面でもあります。

考えようによっては、もし「自分の属する省庁の利益や私利私欲にとらわれず、常に国全体のことを考え行動する、理想の官僚たち」がそろっているとすれば、上の二つは彼らに任せてもよく、この3番目の要素についてのみ、政治家の出番がある、ということすら可能だと思います。さらに言えば、「理想の官僚たち」が持ってきたトレードオフ表で、ひょっとすると「どの価値判断基準に照らしてもこの選択肢がベスト」という案が出てきたら、政治家/政党間での意見の違いも出てこないはずですので、こうした「結論自明」な事業については、政治家が出張る必要がありません。

そして、政治家/政党が本当に議論すべきは、「結論自明」でない すなわち 政治家/政党の哲学的な意味での価値観が問われる事業についてのみとなり、国会の論戦なども、もっと効果・効率的かつ建設的になることが期待できるのではないかと思います。

以上は、一つの事業の複数の選択肢間での意思決定についての「哲学的な意味での価値観」の提示についてですが、様々な事業それぞれでのベストな選択肢間での、事業ポートフォリオの優先順位付けの意思決定となると、より深いレベルでの「哲学的な意味での価値観」が問われることになります。

たとえば前回例にあげたような、「ニート対策」という枠組みの中でのベストの選択肢と、「若手芸術家育成」事業の中でのベストな選択肢と、「里山保全」事業の中でのベストな選択肢の中から、たとえば同じ4億円の使い道として、一つしか選べない、という状況での優先順位付けの判断です。

これ自体かなりの難問ですが、超理想論で言うと、本来あるべき政党の成り立ちは、「哲学的な意味での価値観」を反映した国家観としてのミッション/ビジョンを軸に形作られるべきなのであり、したがって、この「哲学的な意味での価値観を反映した 事業の優先順位付け」にこそ、政治家/政党としての真骨頂が示されるべきではないかと思います。。。。。と、話はどんどん妄想気味に理想論的方向に行ってしまいましたが、まずは最初のステップとして個別の事業についての検討の質の向上が始まらなければ話になりませんので、この話はこれくらいにしておきます。  

 ④今回は、何回かのワークショップを、すべて公開のディシジョンボード・ミーティングを通じて行うことを想定して、私の仮説を提示してきましたが、よくよく考えると、今回のやり方の作業のかなりの部分を、そのそもの主管省庁のたたき台作りの中で実施できるのではないかと思いました。

 最初は公開でこうした作業の共有化＆ディスカッションをすること自体に意味があると思うのですが、次第にこなれてくれば—そして上の③の中で述べた「理想の官僚たち」に近くなってくれば—、かなりの部分は、そもそもの提案のたたき台作りの中に生かしていくようなプロセスを設計することで、公開のディシジョンボード・ミーティングでのディスカッションを、もっと効果的&効率化したり、回数も２回くらいに減らすことも可能なのではないかと思います。

⑤最後に、トータル予算枠について感じたことを記してみます。。。今回提示したような「個別事業についての建設的ブラッシュアップ・ワークショップ」も、さらにそれに基づく 閣僚レベルでの「事業ポートフォリオ・ワークショップ」も、ある「与えられたトータル予算枠」の中での選択肢間/事業間での優先順位付け、ということを前提として考えています。したがって結果として、③で取り上げた例でいけば、「トータル予算の問題から、今回は断腸の思いではあるが、若手芸術家育成事業は断念せざるを得ない」といったことが起こりうるわけです。

その時、政治家は、ここまで検討のレベルと透明性が高まっていれば、国民に対して、例えば次のような問いかけをすることが可能になります。： 「今のトータル予算枠の中では、（若手芸術家育成事業を含む）以下の50項目の事業は断念せざるを得ません。しかし皆さんがもし消費税2%アップしても構わないから是非やってくれ、とおっしゃるなら、われわれとしてはそうしたいのですが、如何でしょうか？」

そして国民の方も、納得感をもって、一人ひとりの判断としてその問いに答えることができ、その民意の総意をくみ上げて政治としての判断が可能になるのではないかと思います。

。。。。。一説には、「もともと予算は省庁ごとの縦割りになっていて、それを突き崩すのは ほぼ不可能なので、主管省庁の異なる事業間での優先順位付けの問題はそもそも浮上しない。したがって、幸か不幸かそうしたことに悩む場面は出現しないし、それを前提とした『トータル予算枠』についての問いかけも出てこない」という話もありますが、まあここは妄想気味に理想論をあえて書かせていただきました。

 

 

以上、多少 妄想的理想論も含めて 計11回にわたった 「若者自立塾」を題材とした 事業仕分けに関する「勝手にディシジョンマネジメント」の連載を終わることになります。通読して頂いた上での 私からのあらためてのお願いとして、ぜひ読者の皆さんのフィードバックをお待ちしています。

また、今後も面白そうなトピックがあれば、「勝手にディシジョンマネジメント」のブログを書いて行きたいと思います。読者の皆さんからの「このテーマを取り上げたら面白いんじゃない！？」のアイデアも大いに歓迎しますので、よろしくお願いします！

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