「世の中、うちの会社、変じゃないか?!」の疑念・違和感を大事にしよう! |
今年初めのブログです。読者の皆様、本年もよろしくお願いいたします。 まずは、昨年暮れに読んだ、一見まったく別のトピックの2つの記事から感じたことをつづってみます。
*************************************************************** 1.「サラリーマンの進化が日本を強く」(日経新聞・11月19日朝刊「私見卓見」(小林暢子氏)より) まずはコラム記事からの抜粋です。 ——————————————————————————————————— ・・・リーマン危機から10年。米国経済は力強さを取り戻したものの、投資家偏重の結果、富の偏在が進んだ。 ・・・大半の取り残された人々の怨嗟(えんさ)がいまの政治混乱の原動力となった。 ・・・新しい成長分野に資金と才能が偏り、巨大デジタル企業が育った半面、製造業など古い産業の力は衰えた。日本の場合は1社に勤め続ける「サラリーマン」がまだ尊敬される働き方だ。多くは中間所得層に属する。 ・・・日本の産業界がサラリーマンを主軸とする安定を維持しつつ、組織の強さを取り戻す道はないか。私は組織と個人の間にもっと建設的な緊張感があってもよいと思う。働き手は組織への帰属を当たり前ととらえず、組織も従業員の滅私奉公をあてにしない。妥協となれ合いが支配する夫婦生活のように、お互いへの期待が減れば、手に手を取り合った成長は望めない。互いにもたれあわない緊張感から成長は生まれる。 ・・・米国の現状は資本主義のひとつの終着点を示す。しかし、解は一つではない。日本は勤勉なサラリーマンという資産に磨きをかけることで、組織の強さを取り戻せるのではないか。会社とサラリーマンが、日本型組織の在り方を再定義するところに根本的な処方箋があるように思う。 ——————————————————————————————————— 最近の米国などの状況を見聞きするにつけ、私も同じような問題意識を持っていたので、強く共感しました。 いわゆる「Winner takes all(勝者による総取り)」や「突出した起業家への極端な礼讃」の陰で、その他大勢の人達が取り残され、自信を失っていく状況は、どう考えても健全ではないと思います。 実は私も以前は、若干の違和感を覚えつつも「まあ世の中、Winner takes all や 起業家礼讃の方向で進んでいくしかないんだろうな。自分もその流れの中で、ジタバタしながら何とか生き残っていくしかないし、できれば勝ち残る側になりたいものだ…」と思っていました。 しかし、数年前に米国クリントン政権時の労務長官だったロバートライシュ・ハーバード大学教授の著作を読んだのをきっかけに、自分の中の違和感を見つめ直し、むしろ社会全体が、「Winner takes allや突出した起業家への極端な礼讃」のもたらす「富の偏在や中間層の消滅」に正面から取り組んで行く必要があるのではないか、と考えるようになりました。 それ以来、「不確実性のもとでの衆知の意思決定」というディシジョンマネジメントの本質のうち、「衆知」という部分、つまり「志と前向きな自立精神を持つ人達がチームとして衆知を練り上げていく」という部分を、より大切に考えるようになりました。(この考えをブログ記事にも書いてきましたし、昨年4月から7回にわたって、JMAマネジメント誌への連載記事を寄稿してきました。) 何も、いきなりGAFA(グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(
そのためには、当然先のブログに書いた、衆知雲散のメカニズム レベル1:「弱い個」病 レベル2:「衆知破壊」病 レベル3:「意味不明」病 レベル4:「噛み合わない」病 を克服し、 衆知錬成の4ステップ ステップ1:「独力・力強化」⇒まず個を磨こう! ステップ2:「衆知活性化」⇒人として、ちゃんとしよう! ステップ3:「衆知実体化」⇒明確に、具体的に語ろう! ステップ4:「衆知構造化」⇒紡ぎ合わせて、有機的集合脳を目指そう! に持っていくことが必要であり、そこにディシジョンマネジメントを活用して頂きたいと願っています。 *************************************************************** 2.「熱狂顧客がなぜ冷める 縮小市場で飽きられない12の戦術」(日経ビジネス2018年11月19日号特集記事より) この特集記事の中に、いくつもの企業の、顧客を継続的につかみ続けるための工夫が紹介されており、その中で印象に残ったアウトドア用品の「モンベル」とアパレルブランド「ファクトリエ」に関する記述を抜粋してみます。 ——————————————————————————————————— ・・・ファンを基盤にする経営がモンベルの強みだ。モンベルクラブは、年会費1500円を支払う顧客を87万人抱える。毎年の会員継続率は8割を超え、商品の売り上げに占める会員の比率は半分を上回るという。多くのファンに支えられ、「会員100万人への道筋は見えてきた」。辰野会長はこう胸を張る。 ・・・ファンと仲間になりやすいのは、モンベルの社員自身がもともと同社のファンだからだ。「創業から43年たつが、正社員の求人広告を打ったことは一度もない」(辰野会長)。17年度の売上高は750億円、従業員数は970人に達するが、同社とその製品にほれ込むファンばかりを採用してきた。
「革命の同志」。自社の顧客をライフスタイルアクセント(熊本市)の山田敏夫CEO(最高経営責任者)はこう呼ぶ。同社が手掛けるアパレルブランド「ファクトリエ」の商品は、ファストファッションなどと比べると価格が高い。カジュアルシャツは1万4000円、コットンパンツは1万2000円と、「ユニクロ」の3倍以上の価格帯になる。 それでもファクトリエは熱狂的なファンに支持されている。しょうゆもミートソースもはじく1万2000円の白いコットンパンツのように、配送が3カ月待ちになる商品もあるほどだ。 なぜなのか。ファクトリエの「物語」に共感するファンが多いからだ。扱う商品は100%国産のみ。衣料品の国内生産比率が2.4%にまで低下する時代にあって、あきらめずに踏ん張る国産メーカーの商品だけをそろえる。「スマホ時代にポケベルを売るようなものだ」と揶揄されながらも、日本各地を訪ね歩き、取引先を開拓してきた。 ・・・無理な顧客拡大を狙わず、価値観に共感してくれる顧客とだけ、密な関係を築く。そんな戦略は経営にプラスの影響を与える。ファクトリエでは上位2割の顧客が、売上高の半分を占めている。「送料無料」「返品自由」「即日発送」といった小売りがいたずらに身を削るサービスとも無縁で、収益は着実に拡大しているという。 ——————————————————————————————————— 最近よく耳にする「ファン・ベース・マーケティング」とか、かつて私の友人の一人が提唱し、私が以前のブログで言及した「ソウルメイト・マーケティング」(ソウルメイト=志や気持ち・魂の通じ合う同士)と軌を一にするものだと思います。 ここで私の心に響いたのは、多くの企業が常に売上成長、利益率向上をまずかかげ、それを実現する為に何をどうするかを考えがちなのに対し、モンベルやファクトリエは、自分達の企業が拠って立つミッション・ビジョン、つまり、そもそも何の為に自分達は社会に誕生し存続し続けるのか、といった、ある種哲学的価値観をベースに、即ち、自分達の「好き×得意×喜ばれる(⇒顧客をはじめとするステークホルダーに)」を中心に経営がなされているのではないか、ということです。(この2社の実情を詳しく知る機会がないので、あくまで私の想像ですが。) 様々な企業を見ていると、成長・利益を最重視する株主の圧力からなのか、はたまた経営者の我欲からなのか、常に成長、大規模化を金料玉条とし、それにしばられて社員が生き生きと働けない、無理な規模拡大追求のあまり、好きでも得意でもない分野に手を出し、結果として、逆に自社の製品やサービスを気に入ってくれ、また価値観に共鳴してくれる顧客に見放されるという事象が起きているのではないかと感じます。 「成長を追求する、利益拡大をはかる」ことは、人間や組織にとって極めて自然な欲求であり、そのこと自体は否定するものではありません。しかし、あくまでそれは、自社の提供する製品・サービスとそれらに伴う価値観を喜んでくれる顧客やステークホルダーがあってこそ、そして社員が生きがいをもって働くからこそ、事業や企業として成立するのであって、決してその逆ではないと思うのです。 そして、もし自分が属する事業部・企業があまりに成長・利益至上主義になっていると感じたら、「これって変じゃないか?!」と声を上げたり、何らかの行動に移す勇気を持つべきではないかと感じます。 ***************************************************************
以上、一見全く別の2つのトピックを取り上げました。この2つは偶然にもほぼ同時期に私の心に響いた記事で、その「心に響いた点」を抽出すると、このブログのタイトル【「世の中、うちの会社、変じゃないの?!」の疑念・違和感を大事にしよう!】ということになります。 1.の記事で思い当たった違和感は:Winner takes allとか突出した起業家礼讃って、それがどんどん進んでいくと、世の中一般の人が幸せに生きられる社会が壊されて行くんじゃないの?!、ということですし、 2.の記事で思い当たった違和感は:常に成長指向、利益拡大の脅迫観念に追い立てられてたら、大半の社員にとって、生きてて・働いてて楽しくないんじゃないの?! というものです。 様々な企業で、本質的には志と前向き自立精神をもっていながら、日々鬱々としているミドルの人達と話をしていると、「自分達が生の実感として感じている疑念・違和感をもっと大事にしてほしい、自分の魂の叫びに耳をかたむけてほしい、そして少しづつでも声を上げたりチームとして行動に移してほしい。」と感じることが多くあります。 あらためて、こうした方々への私からの年頭のメッセージとして、「自分達の感じる違和感・疑念を大事にして、いい意味で徒党を組んで、疑念・違和感の打開に向けて、少しづつでも言葉や行動に移して行って頂きたい。そこに私も少しでもお役にたちたいと強く思っています!」ということをお伝えしたいと思います。 以上、前にブログに書いた「遺言戦略」と通底するものですが、二つの記事に刺激されて、少し別の視点から書いてみました。 |
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